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[MOM4243]旭川実MF萩野琉衣(2年)_プレミア初勝利を飾ったチームの中で高めるのは「いつでもそこにいる」ことの価値

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旭川実高が誇る中盤のダイナモ、MF萩野琉衣(2年=SSSジュニアユース出身)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[4.1 プレミアリーグEAST第1節 横浜FMユース 0-2 旭川実高 小机]

 メチャメチャ目立つわけではないかもしれない。いわゆる数字を残すタイプでもなさそうだ。だが、危険だと味方が思った時には、いつでもそこにいる。ここにいてほしいと味方が願った時には、いつでもそこにいる。だから、指揮官も勝利の立役者を尋ねられ、真っ先にその名前を挙げたのだ。

「これからも相手の方が格上で、厳しい試合が続くと思うんですけど、チームの11人全員で戦えば、相手の方がレベルが上でも勝ちが転がってくると思うので、そういうところはしつこく戦いながら、お互いに声を掛け合って、一体感を持った試合をしていきたいです」。

 11年ぶりに帰ってきたプレミアリーグで念願の初勝利を挙げた、旭川実高(北海道)が誇る中盤のダイナモ。MF萩野琉衣(2年=SSSジュニアユース出身)の献身的なプレーは、チームの中央に太い軸を通している。

 試合開始直後から守勢に回った。プレミアリーグEASTの開幕戦。横浜F・マリノスユースとのアウェイゲームに挑んだ旭川実は、相手の丁寧なポゼッションとサイドアタッカーの突破力を受け、いきなり自陣に押し込まれ続ける展開を強いられる。

「とにかく失点しないことと、相手が前に圧を掛けてきた分、長いボール1本でカウンターができたらチャンスになるので、そこは意識していました」と口にした萩野も、ドイスボランチを組む相方のMF澁谷陽(2年)とともに、まずはセカンドボールの回収に腐心しつつ、時には最終ラインまで帰ってトリコロールのアタックを跳ね返す。

 チームは狙い通りにカウンターから先制したものの、ハーフタイムには富居徹雄監督からも修正が入る。「『前半は1-0で勝っているけど、自分たちのやりたいことは表現できていない』と監督に言われて、『このままじゃダメだな』と思いましたし、『やるべきことをもう少しみんなで表現しよう』と思って後半に向かいました」。萩野も改めて自身の役割を頭に叩き込み、後半のピッチへ向かう。

「相手のやることが決まっていたのに、自分たちの出足が遅かったことで、前半は自分たちが後手に回ってプレーをしていたので、後半は相手より先に動き出すことや、予測で上回ることを意識していました」。そう語った14番が考える自身のプレースタイルは「セカンドボールの回収と、守備の読みと予測が売り」。普段からチェルシーのエンゴロ・カンテの動画を見て膨らませているイメージを、そのままピッチに反映させる。

 1点を追いかける横浜FMユースがさらに攻勢を強める中で、懸命に芝生の上を駆け回っていた萩野は、後半21分にFW三上僚太(3年)と交代でベンチに下がる。「ジャンプしたら攣っちゃいました(笑)。もうちょっと走れたと思うんですけどね」とは本人。直後にチームは追加点を奪い、終わってみれば2-0で堂々の勝利を引き寄せる。

「過去に実業は1度プレミアに行っていたんですけど、その時は勝っていなかったと思うので、自分たちはまだ1試合しかやっていないですけど、この試合だけを見れば実業の歴史を変えられたのかなと思います」。66分間のプレミアデビューを経験した萩野は、これからもきっと忘れることのない1つの大きな成果を得ることに成功した。

「結構ボールを持たれて、1試合を通して苦しかったんですけど、チームで決めたことをみんなでやれたので、こういう結果になって良かったです」と笑顔を見せた16歳は、試合の中でとりわけ「頭を切らさない」ことを意識していたという。

 ボランチというポジション柄、攻撃の時には守備、守備の時には攻撃を常に意識する必要がある。特に強豪の居並ぶプレミアの舞台では、必ずしも自分たちの積み重ねてきたようなスタイルを打ち出せるわけではない。それゆえに相手に一瞬の隙をも与えず、逆に相手が見せた一瞬の隙を突くような、戦況を見極める“目”は何より重要。だからこそ、「頭を切らさず」に思考をフル回転させ続けながら、チームにとって必要なことを過不足なく把握し、こなすことを、自身に課しているというわけだ。

 2年生で体感する世代最高峰のリーグは、間違いなく大きなものをもたらしてくれる。それはこの日の1試合からも十分に窺い知れた。ゆえに今シーズンの目標は、明確過ぎるほど明確だ。「しっかりチームをプレミアに残して、自分の代でもプレミアで戦いたいなと思っています」。

 チームに欠かせない縁の下の力持ちタイプ。萩野が「いつでもそこにいる」ことの価値は、おそらくこのプレミアで戦うシーズンが進めば進むほど、より高まっていくはずだ。

(取材・文 土屋雅史)

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