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開幕戦で学んだ“プレミアの基準”に取り組み、表現。前橋育英がゴール前の攻守でも旭川実を上回り、今季初白星!

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前半31分、前橋育英高はMF斎藤陽太のゴールをベンチ外メンバーと一緒になって喜ぶ

[4.9 高円宮杯プレミアリーグEAST第2節 前橋育英高 3-0 旭川実高 前橋育英高高崎G]

 高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2023 EASTは9日、第2節2日目を行い、前橋育英高(群馬)が3-0で旭川実高(北海道)に快勝。今季初白星を飾った。

 前橋育英は開幕戦で前回王者の川崎F U-18(神奈川)と対戦。プレシーズンから川崎F U-18戦を見据えて3バックに取り組んできたが、後半の3失点で敗れた。そこから一週間後に迎えた第2節。山田耕介監督が「(開幕前から)決めていました」と説明したように、前橋育英はホーム初戦を4バックでスタートした。

 サイド攻撃からゴール前のシーンを作り出した前橋育英に対し、旭川実も8分にMF清水彪雅(2年)の落としからMF鵜城温大(3年)がダイビングヘッド。だが、前橋育英はU-17日本代表GK雨野颯真主将(3年)がバウンドした難しい一撃をはじき出す。

 互いにゴール前の攻防を増やす中、前橋育英がその部分で差をつける。前半13分、右中間でセカンドボールを拾ったMF山崎勇誠(3年)が前方のスペースへパス。ここに走り込んだMF斎藤陽太(3年)がクロスを上げると、ファーで詰めていたMF黒沢佑晟(2年)が左足で先制点を叩き出した。

 この日、前橋育英はFW佐藤耕太(2年)が最前線の競り合いで主導権。山田監督も「あの子がタメられるんで」と評するFWはチームが多用していたグラウンダーの縦パス、また浮き球のボールを再三収めて起点になり続けた。加えて、コンビを組む山崎がタイミングよくボールを引き出し、絶妙なターンで幾度も前を向いて攻撃を加速させる。

 そして、31分、MF石井陽(2年)のスルーパスから、PA内左でターンした佐藤が左足シュート。こぼれ球を斎藤陽が押し込み、2-0とした。前橋育英らしいグラウンダーのビルドアップ、コンビネーションにチャレンジし、風下の前半に2点をリード。また、各選手の切り替えが速く、球際で身体を張る石井やMF篠崎遥斗(3年)がセカンドボールを回収していた。

 雨野は「(開幕戦は)前半はやれていた部分もあったんですけれども、後半、相手の方が運動量があったり、技術が落ちなかったりとかしたので、より高い強度で練習するようになったというか、フロンターレとの試合で基準が分かったと思います」と説明する。昨年の前橋育英は攻守ともに力があり、先発メンバー以外にも充実したタレント。プレミアリーグEASTでフルタイム出場した雨野や序盤戦先発だったCB山田佳(2年)、篠崎を除くと、現2、3年生はプレミアリーグの出場チャンスをほとんど掴めなかった。だが、開幕戦で“高校年代最高峰のリーグ戦”の基準を知った選手たち。細かなミスや守備で慌ててしまうなどまだまだではあるものの、より意識高く取り組んできた一週間の成果を旭川実相手に表現していた。

 開幕戦で横浜FMユース(神奈川)を2-0で下してインパクト十分のプレミア初白星を飾った旭川実は、この日も前橋育英と渡り合っていた。序盤からFW和嶋陽佳(3年)が前線でボールを収めるなど押し返し、クロスやロングスローでゴール前のシーンを創出。前半36分には、左SH柴田龍牙(3年)がDF2人の間を抜け出して強烈な右足シュートを放つ。だが、これはGK雨野に止められ、42分にFW和嶋陽佳(3年)が抜け出しから放ったシュートもDFにブロックされてしまう。富居徹雄監督が「ゲーム勘とゴール前の不安定さ」を指摘したように、開幕戦で横浜FMユースを上回ったゴール前の攻防でこの日は差をつけられる展開になった。

 前橋育英は後半、中盤で利いていた篠崎や山田のミドルパスも交えて攻撃。石井のロングシュートや左SB斉藤希明(3年)のクロスなどから追加点を狙う。そして20分、左の斉藤希から山崎を経由して中央へ。最後は斎藤陽がDFをわずかに外して右足シュートを右隅に決めた。

 旭川実は後半、右SB庄子羽琉主将(3年)が存在感。右サイドから再三攻め上がり、球際で賢くマイボールに変えていた。その庄子が敵陣ゴール前までボールを運び、また交代出場のMF山口寛太(3年)やMF鈴木琉生(2年)のシュートがゴールを脅かすシーンがあった。だが、決め切ることができない。前橋育英はCB熊谷康正(3年)のヘッドや右SB青木蓮人(2年)や山田のカバーリングなどで相手の反撃を阻止。追加点のチャンスを逸していたものの、5バックに移行した後もゴール前での集中力を切らさずに無失点で試合を終えた。

 ベンチ外の選手たちの声にも後押しされた前橋育英は、今季初白星と無失点勝利にホッとした表情。雨野は勝利を素直に喜んだ一方、「プレミアはこちらが先触れるという場面で相手が先に触ってきたりとか、そういうちょっとプレースピードが速いというところがあると思う。それに比べると、まだ自分たちはあと一個足を運べばというところが結構多いので、守備での寄せの速さとかそういうところは課題かなと思います。一喜一憂せずに、まだ始まったばかりですし、あと20試合あるんで1試合1試合勝ちにこだわっていきたいと思います」と語った。

 山田監督も守備面の改善やスピード感を向上させることを求め、「また、これから」。3冠を掲げるチームはこの日の初白星でリ・スタートを切った。プレミアリーグの基準を意識しながらトレーニングし、多様なシステム、戦い方、そして前橋育英らしさを存分に表現できるチームを目指していく。

(取材・文 吉田太郎)
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