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主力不在はむしろ絶好のチャンス。個々が自らの価値を競うように示した名古屋U-18が磐田U-18を下してプレミア開幕3連勝!

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名古屋グランパスU-18はDF大田湊真(5番)のヘディングで先制点!

[4.16 高円宮杯プレミアリーグWEST第3節 磐田U-18 0-2 名古屋U-18 磐田スポーツ交流の里ゆめりあ球技場]

 出てくる選手、出てくる選手、みんなが自分をアピールしようという躍動感にあふれている。初スタメンの選手。プレミアデビューの選手。いつもとは違うポジションの選手。みんなが競うようにピッチ上でエネルギーを発していくのだから、それは強いわけだ。

「試合前のミーティングで『全員がチャンスだ』ということは話していましたし、試合でも誰も恐れることなくやっていたので、本当に学年関係なく、みんながチームの代表として自覚を持ってやれていたと思います」(名古屋U-18・杉浦駿吾)。

 劣勢に耐え、強引に流れを引き寄せての2ゴールで快勝。16日、高円宮杯 JFA U-18 サッカープレミアリーグWEST第3節、ジュビロ磐田U-18(静岡)と名古屋グランパスU-18(愛知)が激突した一戦は、前半にセットプレーからDF大田湊真(3年)が先制点を挙げた名古屋U-18が、後半終盤にもFW八色真人(1年)の追加点で2-0と勝利。リーグ戦3連勝を達成している。

 最初の決定機は開始22秒。磐田U-18は左サイドをFW白石瑛也(3年)が運び、最後はルヴァンカップでトップデビューを飾ったFW舩橋京汰(3年)がフィニッシュを迎えるも、軌道はDFをかすめてゴール右へ。5分にも年代別代表経験者のMF川合徳孟(2年)のパスから舩橋が、10分には舩橋のパスからFW山本将太(2年)がそれぞれチャンスを迎えるも、先制点には至らない。

 すると、19分の主役はキャプテンマークを巻いたセンターバック。“1本目”のCKからゴール前で大田が迎えた1対1の決定的なチャンスは、磐田U-18のGK齊藤貫太(3年)のファインセーブに阻まれ、「あの角度は練習していないので、どうやって打つのかなと。ファーストタッチはメチャメチャ完璧だったのに、練習していないことは出せないんだなと実感しました」と苦笑いを浮かべたものの、直後の“2本目”をMF内田康介(3年)がニアに蹴り込むと、今度はヘディングで鮮やかにゴールネットを揺らす。「去年は頭で決めたシュートはなかったので、今シーズンで初めてセットプレーで頭から決められて素直に嬉しかったです」という大田の先制弾。押し込まれていたアウェイチームが先にスコアを動かす。

 1点を追いかける磐田U-18は、失点直後の23分にも舩橋が単騎で運んでシュートを放つも、ここは名古屋U-18のGKピサノアレクサンドレ幸冬堀尾(3年)にファインセーブで阻まれると、以降は「決め切るところを決め切れないと相手の流れになってしまう」とキャプテンのDF沼田大輝(3年)も話したように、ペースは名古屋U-18へ。42分にはFW杉浦駿吾(2年)のスルーパスから、この日は左サイドハーフに入ったMF石橋郁弥(3年)のシュートは齊藤がファインセーブで応酬するも、攻勢を強めた名古屋U-18が1点をリードして前半の45分間は終了した。

 後半も「自分たちのボールを回す時間帯と押しこむ時間帯が増えたと思います」と舩橋が口にしたように、再びリズムを取り戻したホームチームが右のDF李京樹(3年)、左のDF伊藤稜介(3年)の両サイドバックを使いながら、好機を創出。16分には川合の素晴らしいスルーパスから李が完璧なグラウンダークロスを流し込むも、舩橋のシュートはクロスバーの上へ。どうしても1点が奪えない。

 逆に名古屋U-18は「押し込まれる時間が続いたんですけど、全員が耐え時というのはわかっていて、声を掛け合ってできていました」とMF野田愛斗(3年)。後半からセンターバックでコンビを組んだDF佐藤俊哉(3年)とDF樋口凛人(3年)に加え、今季初スタメンで左サイドバックに入ったDF岡本大和(3年)も、右サイドバックのDF伊澤翔登(2年)もシビアな局面では身体を張り、エリアへの侵入を許さず。こちらは後半からボランチにスライドしたMF西森悠斗(2年)も慣れないポジションで奮闘し、FW那須奏輔(3年)も後半から出場したFW野中祐吾(1年)も前線からのプレスを怠らず、守備の強度を保ち続ける。

 39分。献身的な努力は報われる。相手のビルドアップが乱れたところを、果敢に取り切った八色が那須とのワンツーで左サイドを抜け出すと、GKとの1対1も冷静に制し、右スミのゴールネットへボールを送り届けて追加点をゲット。最終盤はプレミアデビューのピッチに送り込まれたDF青木正宗(2年)とMF池間叶(2年)もきっちりゲームクローズに貢献し、2点のリードを保ったまま、タイムアップのホイッスルを聞く。

「今自分たちがやれることを状況によってやり続けて、プレッシャーを掛け続けて、相手に出たミスをものにしていましたし、押し込まれましたけど、そこで受け身になることなく、自分たちから役割を決めて、それをまっとうしようとする声が中から良く出ていたので、そういう意味では良い成長の機会だったなと思います」とは古賀聡監督。出場機会を得た選手たちが自身の役割を過不足なく務め切り、決定機を確実にモノにした名古屋U-18が、開幕からの連勝を3まで伸ばす結果となった。

 この日の名古屋U-18はFW貴田遼河(3年)、MF鈴木陽人(3年)、DF長田涼平(3年)と開幕2連勝の主役を担ったセンターラインの3人が不在の中で迎えた一戦だった。

「今日は『あの3人がいないから負けたというのは嫌だ』というのは試合前のミーティングでも出ていました」(野田)「攻撃陣ではあの2人がいなくて、試合に負けて、『あの2人がいないとダメだ』と言われるのは絶対に嫌でしたし、どんどんゴールに行ってやろうと思っていました」(杉浦)。この2人の言葉がおそらくは選手たちの総意。だからこそ、思うようなゲーム展開にならなくても、苦しい時間が続いても、チームは勝利という最大の目標に対して、それぞれがやるべきことに向き合っていたように見えた。

 印象的だったのは、磐田U-18を率いる藤田義明監督の言葉だ。「僕がこの試合で思った名古屋との差は、1人1人の熱量です。守るところだったり、身体を張るところ、ベンチワークを含めて、凄く声が出ていたなと。まだまだそういうところが自分たちには足りなかったのかなと思います」。

 佐藤、岡本、西森の初スタメン組も、樋口、青木、池間のプレミアデビュー組もピッチ上で大きな熱量を発し、同じくプレミアデビューの八色はゴールまで記録。「みんなが『自分が出てやる』という想いが強くて、3つのポジションが空いた所も、『彼らが帰ってきても渡さないようにやろう』ということを言っていて、1,2年生も頼もしかったなと思います」とは大田。その中で白星を手にしたことも、これからのチームにとって大きな収穫であることは言うまでもない。

 本来はボランチながら、この日はセンターバック起用となった佐藤について、古賀監督がこんなことを教えてくれた。「彼も弱いところや苦手にしていたところと向き合えることを前向きに捉えていて、今日も言っていたんですけど、『以前の自分だったら今日もフォワードと1対1になって振り切られて、やられていたはずだけど、何とか粘ってやらせなかったので、自分の守れる範囲が少しずつ広がってきて、成長を感じています』と。それがまたボランチに戻った時に生きてくるのかなと思いますし、自分の中でやるべきことが消化できているので、それでまた成長すると。意欲が高い選手です」。

 主力の不在で、よりモチベーションを高めた選手たちが、自分たちの価値を示しながら力強く奪い取った勝ち点3。今年の名古屋U-18は、まだまだ強くなりそうだ。



(取材・文 土屋雅史) 
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