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[MOM4258]神戸U-18MF藤本陸玖(1年)_左右両利きの1年生プレーメイカーが劇的同点アシストで存在感!

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ヴィッセル神戸U-18で定位置を掴んでいる1年生プレーメイカー、MF藤本陸玖(ヴィッセル神戸U-15出身)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[4.22 高円宮杯プレミアリーグWEST第4節 神戸U-18 2-2 鳥栖U-18 いぶきの森球技場 Cグラウンド]

 逞しく中盤を掌握する姿は、1年生のそれではない。左右両足を苦もなく鮮やかに使いこなし、攻守のバランスをピッチの中央で取りながら、最後は同点ゴールまでアシストしてしまうのだから、恐れ入る。

「今までの試合ではちょっとビルドアップのところでミスがあったり、ボールロストすることもありましたけど、今日に関してはそのミスも少なくできていたので、もっと攻撃でも堂々とプレーできるようにしていきたいです」。

 昨年末の高円宮杯U-15サッカー選手権大会で日本一を経験した注目のルーキーが集うヴィッセル神戸U-18(兵庫)の中で、早くも定位置を確保しつつある注目株。MF藤本陸玖(1年=ヴィッセル神戸U-15出身)がとにかく面白い。

「相方である藤本には、ボールを取れんかったとしても自分がカバーしてやるという気持ちで、試合前には『ガンガン行っていいぞ』と言っています。でも、上手いですし、やりやすいですよ」。神戸U-18のキャプテンを務めるMF坂本翔偉(3年)も、中盤でコンビを組む1年生をこう評している。

 昨年のWEST王者、鳥栖U-18と対峙したこの日の一戦でもスタメンに指名された藤本は、「相手は2トップだったので、自分とセンターバックの3対2のところで運び出せたら絶対にチャンスができると思っていて、そこで運び出したり、1本の背後へのパスで多くチャンスを作れたのは良かったと思います」と明確な意図を持って攻撃を組み立てる。

 一方で守備面では「1つ1つの球際とか身体の強さとか、そういった強度はまだまだ全然足りていないと思います」とは言いながら、「自分は運動量が1つの武器やと思っていますし、試合を通じて走り切る力やったり、攻守の切り替えやったり、守備の時にスペースを埋めたりとか、そういうハードワークの部分は通用すると思います」ともきっぱり。勘所を押さえたプレーで、中盤を巧みに引き締めていく。

 U-15時代はインサイドハーフを務めていたが、現在のポジションはアンカー気味の立ち位置。「自分が前に出てしまって、そこのポジションを空けてしまうと、もし相手に取られた時にポッカリ空いてピンチに繋がってしまうので、そこは周囲を見ながらバランスを取ってというのは常に意識していますけど、翔偉くんも自分が攻撃参加した時はカバーしてくれるので、そこはカバーし合いながらやっています」ともちろん自身の役割の変化も把握済みだ。

 だが、最も特筆すべきは左右両足で遜色なく蹴れるキックの精度と種類。「利き足は両足です。最初はたぶん右利きやったんですけど、小さい時から左も蹴れていましたし、どっちも同じ感じで蹴れます」という言葉は大げさでも何でもない。既に任されているプレースキックも、右からは左足で、左からは右足で、インスイングの鋭いボールを蹴り込んでいく。

 2点を追い掛ける後半22分には、左サイドからのFKを中央でバウンドさせ、ゴール右スミに弾んだボールはGKのファインセーブに掻き出されるも、「直接狙ったというか、『あそこに蹴ろう』というのはあって、誰も触らんかったら入るみたいなところは狙っていましたし、ボールも良い感じに行ったので、入ったら良かったですね」と冷静にその一連を振り返る。

 1点差で迎えた45+3分の左FK。もうほとんどラストプレーだということは、藤本も十分に承知していた。「その前の左足のCKで良いキックができていなかったですし、試合の終わりでもあって、『ここで決めないと』という感じやったので、緊張はしましたけど、練習通りに蹴れました」。正確なキックは坂本の頭に届く。劇的な同点弾を演出した15歳は、それでも「ゴールに繋がって良かったですし、嬉しかったですけど、勝ちたかったです」とのこと。もう勝敗を担う責任も負い始めているようだ。

 自分の中で理想像としてイメージしているのは元ドイツ代表のプレーメイカーだ。「トニ・クロースみたいな、落ち着いてゲームを組み立てていく感じが好きですし、正確なキックからアシストもできて、ゴールも決められるような選手になりたいです」。プレーを見れば、確かにその言葉も腑に落ちる。

 最初はスクールに通い、小学校4年生でU-12に所属してからも、ヴィッセル一筋で築いてきたキャリア。アカデミー最後のU-18というカテゴリーでも、早々に出場機会を掴み取った藤本にとって、目指すべき場所は明確過ぎるぐらい明確だ。「ヴィッセルでのトップ昇格と、トップでの活躍は狙っていきたいです」。

 背中に踊る一際大きな“46”という背番号は、ピッチ上での存在感の大きさに比例する。来月に控えた5月6日にやってくるのは、まだ16回目の誕生日。楽しみな才能が、若きクリムゾンレッドにすくすくと芽吹いている。



(取材・文 土屋雅史) 
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