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[MOM4270]実践学園MF鈴木陸生(3年)_新たに背負った16番はラッキーナンバー!スルーパスの得意な司令塔がゴールで発揮した存在感

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先制ゴールを挙げた実践学園高のMF鈴木陸生(3年=三菱養和SC巣鴨ジュニアユース出身、16番)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[4.29 関東高校大会東京都予選準決勝 実践学園高 1-1 PK4-2 東海大高輪台高 駒沢第2]

 ゴールを奪えそうな予感はあった。いや、むしろ奪わなくてはいけないという決意のようなものだったかもしれない。だからこそ、この大事な試合で手にした1点には、これからの大きな自信を得るという意味でも、とにかく価値がある。

「今日は『ゴールを決める』という気持ちを持った状態で入ったので、どんな形であってもシュートチャンスがあったら振ろうと思っていました。混戦の状態からのシュートだったんですけど、ゴールを決められて良かったです」。

 実践学園高が誇る陽気な司令塔。MF鈴木陸生(3年=三菱養和SC巣鴨ジュニアユース出身)は得意のスルーパスではなく、得点という明確な形でチームの関東大会出場へ貢献してみせた。

「準々決勝とその前の試合の出来は、自分の中で全然納得の行くものではなくて、何もできないまま終わったことが凄く悔しかったんです」。2回戦の駿台学園高戦と準々決勝の東久留米総合高戦。チームはそれぞれ5点と4点を挙げて快勝したものの、鈴木の中にはその流れに乗れなかったという感覚が残っていた。

 本大会への出場権を懸けた東海大高輪台高との関東大会東京都予選準決勝。実践学園は立ち上がりから攻勢に出るものの、なかなか決定的なシーンを創出するまでには至らない。だが、スコアレスのままで迎えた前半40+1分に、千載一遇のチャンスが16番の元へやってくる。

 左サイドで待っていたMF松田昊輝(3年)にボールが入ると、鈴木は冷静に状況を見極める。「松田が抜け出した時に、僕はマイナスでボールをもらおうと考えていたんですけど、松田が思うようにトラップできていなかったので、『あ、これは行ける!』と思ったんです」。

 結果的に松田のドリブルと並走するような格好で、3列目から駆け上がってゴール前へ入っていくと、混戦の中からこぼれたボールが突如として目の前に現れる。「『突っ込めたら』と思って突っ込んだら良い感じに点が入りました。ラッキーという言い方もあると思いますけどね」。いわゆる“ごっつぁんゴール”ではあるものの、スプリントしてエリア内まで入っていった鈴木の姿勢が、貴重な先制点を呼び込んだこともまた間違いない。

 だが、ゴール後にはちょっとだけ後悔があるという。「最初は『あれ?カメラはどこ?どこ?』となってしまってから行っちゃったので、ちゃんと映るには位置がもうちょっと手前でしたね。すみません(笑)」。ゴール裏でカメラを構える報道陣に近付き過ぎてしまい、思ったような写真を撮ってもらえなかったことに対しての発言だが、そこは“養和育ち”らしく、良い意味での余裕があってなかなか面白い。



 後半は残り10分強で失点を喫し、スコアを振り出しに引き戻されたものの、不思議と焦りはなかったという。「1回戦と2回戦も失点している上での展開でしたし、ある意味失点しても余裕はありました。『いったん押し込まれるのは5分ぐらいかな』と、『そこからはオレたちも攻撃できるな』とみんなが感じていたので、持ち堪えることができたと思います」。終盤での失点にも動揺は最小限。結果的にはPK戦で勝利を引き寄せ、鈴木もチームメイトと一緒に作る歓喜の渦に飛び込んだ。

 ゴールにこそ手応えはあったものの、その他のプレーにはまだまだ改善の余地があると捉えている。「攻撃面ではもうちょっと自分の特徴のスルーパスを出せるシーンを、次の決勝やTリーグでは出していけるようにしたいですし、守備の部分では後半にちょっと強度が足りない部分があったので、そこは修正していかないといけないなと思っています」。それはこの先に思い描いている、自分の理想のプレイヤー像にも直結するからだ。

「自分はスケさん(鈴木祐輔コーチ)からも言われていますけど、とにかくゲームを作ることをやっていかないといけないかなと思っていて、それにプラスして自分の苦手な守備のところを強化していかないと、自分の将来に向けても力が伸びていかないですし、そういうところを改善していければ、確実にチームも個人も良くなってくると思います」。特徴を伸ばし、課題を改善する。当たり前のように思えるが、難しいこの両極にもポジティブに取り組んでいく。

 この日の鈴木の背番号は、準々決勝まで付けていた7番ではなく16番。実はその“番号変更”にはある理由が隠されていたそうだ。

「先週まではずっと7番を付けていたんですけど、今週の月曜日に授業中にやらかしてしまって、そこでちょっと注意されたんです。自分に気の緩みが出ていたので、たぶん普通だったら試合に出られなかったんですけど、本当にコーチのおかげで試合に出られたので、背番号をもらえただけでありがたかったです。そんな感じで今日の背番号は16番になりました……」。

 大いに反省しながら新たな番号を纏った一戦で、決めてしまった貴重なゴール。少しだけ笑顔を浮かべて、鈴木はこう口にした。「でも、逆に今度からは16番にしようかなと思っています(笑)」。

 チャビやケビン・デ・ブライネ、大島僚太を参考にしているという、パスセンスに秀でたコントロールタワー。実践学園の試合では、鈴木のゴールに絡む積極的なプレーと、その背中に踊る番号には、これからも注目していく必要がありそうだ。



(取材・文 土屋雅史)

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