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後半一変。雨中の激闘制した青森山田がプレミアEAST首位浮上

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青森山田高が後半の3ゴールで逆転勝ち

[5.7 高円宮杯プレミアリーグEAST大宮U18 1-3 青森山田高 大宮アルディージャ練習場]

 高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2023 EASTは7日、第5節を行い、大宮アルディージャU18(埼玉)対青森山田高(青森)は青森山田が3-1で逆転勝ちした。

 強い風雨の中で開催された一戦は前半、風上のホーム・大宮U18が気持ちの込もった戦いを見せる。対青森山田ということもあり、一際エネルギッシュな動きを見せていたU-18日本代表候補CB市原吏音主将(3年)は、「前半は全員が良く喋っていたし、戦っていた」。ロングボールの応酬となる中、相手を押し込み、ロングスロー、そして前半4-0だったCKからゴールを目指した。

 青森山田は積極的に前へ出て処理していたGK鈴木将永(3年)やCB山本虎主将(3年)がその攻撃を跳ね返していたが、前半は我慢の時間帯が増加。勢いのある攻守を見せていた大宮U18が18分に幸運な形で先制点を奪う。こぼれ球に左サイド後方で反応した右SB浅井一彦(3年)がゴール方向へロングボールを蹴り込む。強風に乗ったボールが青森山田GKのミスを誘発。頭上を越えてゴールネットに吸い込まれた。

 大宮U18は守備でも市原、真壁拓海(3年)の両CBが強度や際の強さを発揮。全体的にルーズボールへの反応も速い。青森山田はなかなか押し返すことができず、強みの両SHまでボールが届かない。仕掛けに持ち込むシーンが少なく、セットプレーを獲得できなかった。

 逆に大宮U18はMF菊浪涼生(2年)のインターセプトからFW石川颯(3年)がシュートを放つなど2点目のチャンスを作り出す。前半、大宮U18はシュート数も7-0と凌駕。一方、1点ビハインドで折り返した青森山田は選手間から「冷静にやろう」という声が上がっていたが、その姿勢を正木昌宣監督から厳しく指摘された。

 前節のFC東京U-18戦などこれまでも悪天候下の試合はあったというが、それに比べると情熱、タフさ、推進力が明らかに不足。「冷静にじゃなくて情熱的にやれよ!」「山田のやるべきことをやれ!」「やらないならばユニフォームを脱げ!」という厳しい檄が選手たちの目を覚ました。

 風上に立った青森山田は後半、試合内容を一変させる。9分、右SB小林拓斗(3年)の左ロングスローをCB小泉佳絃(3年)、交代出場FW津島巧(3年)がいずれも頭で繋ぐと、最後は山本が今季初ゴールとなるヘディングシュートを決める。

 大宮もMF種田陽(3年)のドリブル、展開などサイドを大きく使った攻撃からフィニッシュシーンを作り返す。だが、山本が「本当に全員が気持ち入って、後半はめちゃくちゃ良い試合ができたと思います」と語り、芝田も「本当は喝を入れられる前から自分たちでやれたらいいですけど、そこで変われるというのも実力だと思う」いう青森山田が相手を飲み込む。

 左SB菅澤凱(3年)や芝田、山本、小泉をはじめ、各選手が気持ちの込もったプレーを連発する。そして、津島が前線で泥臭く競り続け、芝田のシュート、ラストパスから相手ゴールを強襲。大宮U18も左SB大西海瑠(2年)がシュートブロックし、市原がルーズボールに頭から飛び込んでクリアするなど踏ん張っていたが、青森山田が終盤の連続ゴールで突き放した。

 37分、青森山田は右CKの流れから右サイドの芝田がライナー性のクロスボール。これをFW米谷壮史(3年)が頭でゴール左隅へ流し込んだ。青森山田はその2分後、交代出場MF後藤礼智(3年)が左クロス。ファーサイドのMF川原良介(3年)が大宮U18の隙を突く形で3点目をもぎ取った。

 大宮は今季初白星に届かず。森田浩史監督は「今、なかなか結果が出ていない中で難しさはあるんですけれども、ちょっとずちょっとずつ積み上がっているところはあると思うので、これを継続しながらやっていくしかないと思っています」。難しいコンディションの中、主力選手を中心に気迫が伝わるようなプレーをしていた選手が多かったことは確か。課題となっている攻撃面、またセットプレーの守備、それを与えたプレーも含めて検証し、改善していく。

 青森山田は3発逆転勝ちで4勝目を挙げ、首位浮上。正木監督は好スタートを切っているチームについて、「選手たちがピッチ内でもどんどん積極的に会話をして、過去そういうチームがありましたけれど、今年はお互いで意見を吸収でしあうというか、人の意見をしっかり聞けるし発信できる」と説明する。例年以上にグループで戦おうとする姿勢が結果に結びつているようだ。

 山本は「練習から全員が常に上を求めていますし、現状に満足しないで、勝っている時こそもっともっとと全員が向上心を持ってやれていると思います」と説明。向上心の強さ、この日のように聞く耳を持てるところ、指摘されて変われるところ、また複数のリーダーを中心に意見を出し合えるところはMF松木玖生(現FC東京)ら2年前の3冠世代に重なる部分がある。

「(2年前や昨年から学び、)常に自分たちがやらないといけないと思っていますし、やっぱり正木さんも言っていますけれども、1年間継続しないと結果はついて来ないと思うので、常にみんなもっともっとという向上心を持ってやっていると思います」と山本。この日の勝利にも満足感はない。課題に目を向け、また力を積み上げて次節に臨む。
 
(取材・文 吉田太郎)
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