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声で要求しあい、助け合い、巧さ表現する桐蔭学園が4-0で開幕7戦不敗に

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後半19分、桐蔭学園高FW田中佑紀が決めて3-0

[5.20 高円宮杯プリンスリーグ関東2部第7節 西武台高 0-4 桐蔭学園高 西武台高第2G]

 20日、高円宮杯 JFA U-18サッカープリンスリーグ 2023 関東2部第7節で2位・西武台高(埼玉)と4位・桐蔭学園高(神奈川)が激突。桐蔭学園が4-0で勝ち、暫定首位へ浮上した。

 西武台は開幕戦で逆転負けしたものの、そこから5戦連続無敗で3勝2分1敗。一方、開幕戦から無敗を続ける桐蔭学園は2連勝中で成績を2勝4分としていた。不敗を続ける両校の戦いは、立ち上がりから桐蔭学園がボールを保持してプッシュ。相手に休む間を与えることなくボールを動かし、クロス、シュートで終えるシーンを増やす。

 一方の西武台は、12分にCB永山泰希(3年)が負傷交代するアクシデント。それでも失点することなく試合を継続する。ボランチのMF武笠修也(3年)が的確なカバーリングで要所を封鎖。U-17日本代表候補のトレーニングパートナーを経験しているCB谷口輝(2年)が鋭いカバーリングや対人守備の強さなど存在感のある動きを見せていた。

 そして、前線やハイサイドにボールを入れて起点を作ると、FW竹内奏海(2年)が胸トラップからのシュートやDF間へ割って入る動きを見せる。前半半ばのタイミングで4バックから5バックへスイッチ。前に出て奪う姿勢が出て、両WBが攻撃参加する回数も増える。前半27分には攻め上がった右WB風間裕貴(3年)の右足シュートが左ポストをかすめた。

 桐蔭学園も前線にけが人が出ている状況だが、FW田中佑紀(3年)がポストプレーで奮闘。また、初先発のFW田村陸人(2年)が持ち味の推進力を活かして突破、抜け出しでチャンスを創出する。そして36分、司令塔のMF山本祐太郎(3年)が判断を変えて中央からPA内右へパスを差し込むと、そこから左へ動かし、MF藤田大雅(3年)がグラウンダーのラストパス。これが西武台DFのオウンゴールを誘い、桐蔭学園が先制した。

 八城修監督は「自分たちのサッカー感をしっかりしていれば難しいことではない。自分たちがしっかり判断すればチャンスはあるかなと」と振り返っていたが、相手が戦い方を変えても慌てずに攻略。一方の西武台はMF遠藤秀悟(2年)が右ハイサイドを突き、10番MF西村航(3年)がシュートへ持ち込む。またセットプレーからゴール前のシーンを作り出していたが、なかなか攻め切ることができない。後半は4バックに戻して戦ったものの、ロングボールを交えながら揺さぶりをかける桐蔭学園に次の1点を奪われてしまう。

 桐蔭学園は後半15分、田村が右サイドで縦パスに反応。対応したDFを強引に剥がしてゴール方向へ向かうと、そのまま右足シュートを決めて2-0とした。このゴールで勢いづいた桐蔭学園はMF谷琉真(3年)の左足シュートなどで畳み掛けに行く。そして、19分、左サイドから押し込み、藤田が切り替えの速い奪い返し。最後は田中が右足でゴールを破った。

 桐蔭学園は24分にもMF佐野秀斗(3年)の右足FKが相手オウンゴールを誘って4点目。桐蔭学園が精度の高い攻撃はもちろん、声でも相手との差を生み出していた印象だ。ベンチも含めて呼応するように、要求する声や指示する声。GK神保颯汰主将(3年)は、「プレーの中でもそうですし、プレーが切れた時でも一人ひとりがどういう時間帯なのか、どういうプレーが欲しいのか、抜けている人がいればそういうことを指摘する選手もたくさんいますし、それが今年のチームの強みだと思います」と胸を張る。

 桐蔭横浜大総監督として大学日本一を経験している八城修監督は、この点を重視しているという。「プレーするということは自分の判断を示すこと。要求をしないということはピッチにいないのと一緒だと言っているんで。自分がどうしたい、どうして欲しいというのを出すのがプレーだから。ピッチでプレーしていない選手がいたら勝てる訳がないと凄く言っている」。先発3試合目のCB山本蒼悟(3年)がその明るさで声の出るチームのエネルギー源に。自然体で声の意識付けがされている桐蔭学園は、終盤も好ムードを維持し続けた。

 西武台は劣勢の展開でも谷口や武笠が前向きな声がけ。交代出場のFW岡響己(3年)が迫力のある動きでチームを牽引する。だが、桐蔭学園は山本蒼、CB麻田琉斗(3年)の両CBが前線へ入って来るボールを封じ、神保が安定感の高い守備を見せる。そのまま4-0で勝利。神保は「(この後、インターハイ予選に臨むが)個人としても良い形でインハイのスタートが切れると思いますし、チームとしても良い波に乗れると思うのでこのままその勢いをインハイにぶつけて全国に出れればと思います。日本一を取れるチームをこれから(開幕まで)2週間まだあるのでここから作っていきたい」と語った。特別な個はいないかもしれない。まだまだ甘さもある。だが、選手同士で声を掛け合い、助け合う力に自信。プリンスリーグ関東1部昇格、夏冬の日本一を目指す伝統校・桐蔭学園が今回の白星で勢いをまた加速させる。

(取材・文 吉田太郎)
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