背負ったプレッシャーはさらなる成長への「通過儀礼」。横浜FMユースの新10番、MF望月耕平が手を掛ける世界への扉
[5.27 高円宮杯プレミアリーグEAST第8節 横浜FMユース 3-1 流通経済大柏高 横浜国立大学フットボール場]
どちらかと言えば、責任もプレッシャーも背負い込むタイプだ。けれど、双肩にのしかかるそれは、背負える資格を持ったものにしか背負えないものだとも言える。もちろんこの10番が、その資格を十分に有していることに疑いの余地はない。
「『ちょっと気負っているんじゃないか』とも周囲から言われるんですけど、自分もチームに対する責任は感じていますし、自分がやらないといけないなという部分もあるので、それでも緊張せずに、気負わずにやっていけたら、今後も良いプレーが出るんじゃないかなと思います」。
トリコロールが育んできたしなやかな才能。横浜F・マリノスユース(神奈川)のナンバー10を託されたマルチアタッカー。MF望月耕平(2年=横浜F・マリノスジュニアユース追浜出身)が向き合っている責任感やプレッシャーは、さらなる飛躍に必要な“通過儀礼”だ。
とにかく何でもできる。ボランチでも気の利くプレーを披露するし、最前線も器用にこなす。この日の流通経済大柏高戦のように1.5列目に位置すれば、ピッチのあらゆるところに顔を出し、チームの攻守を円滑に繋いでいく。
「多少ボールロストがあった感じもするんですけど、間で受けて、そのまま簡単にワンタッチで落としたりしながら、良い感じでチームと繋がれたというか、それで試合の流れを作れたのかなと思います」。時には最終ライン近くまで下りてポイントを作り、そこからビルドアップがスムーズに進んでいくことも、一度や二度ではなかった。
ただ、チームは3-1と良い形で勝利を収めたものの、自身の“結果”に思うところがなかったわけではない。「いつも点が足りていないんですよね。自分の得点がゼロというのは不甲斐ないですけど、チーム全体として点は獲れているので、そこはプラスかなと思います」。ここまでのリーグ戦では7試合に出場して、いまだノーゴール。確かにその能力を考えれば、少し物足りない数字かもしれない。
チームを率いる大熊裕司監督は、今季の望月をこう捉えている。「『頑張りたい』とか『やらなきゃ』という責任感が逆に力みになっているので、ちょっとかわいそうだなと思っているんです。ああいう背番号を背負わせて、『オマエがやらなきゃいけない』と意図的にプレッシャーも掛けてはいるんですけど、常に1個2個プレーが余計なんですよね。だから、もうちょっとプレーがシンプルになった時に、良さがもうちょっと違うところで発揮されるんだけれども、そこのバランスがまだ自分の中で整理できていなくて、『やらなきゃいけないと思っています』ばかりなので(笑)、もうちょっと力を抜いてあげたいなというところと、でも、このプレッシャーに打ち勝たないと上には行けないので、もっとやってほしいなという想いはあります」。
指揮官が慮っていることは、本人ももちろん自覚している。「最初の方はちょっと気負っていましたね。そこから少しずつバランスは取れていますけど、つい走り過ぎてしまうというか、無駄にボールを受けに落ちちゃったりして、ゴール前でその力が使えなかったりする部分もあって、自分が全部ボールを触らなきゃという意識が強いので、そこも自分でちゃんとコントロールできないといけないと思います」。
加えて、10番という背番号に対しても、もちろん想いがないはずがない。「去年は40番で、先輩が自分を立ててくれるというか、どんどんサポートしてくれる立ち位置でしたけど、今年は自分がやらなきゃいけない部分が増えている中で、10番は要というか、チームで一番目立たないといけない番号で、やっぱり去年の(松村)晃助くんのイメージもあって、『晃助くんより劣った10番』という立ち位置でやりたくないので、そこは意識しています」。それもいろいろなことを抱え、消化し、乗り越えていくという、さらなる成長のサイクルに入っているということなのだろう。
基本的にニコニコした笑顔が印象的な16歳は、この日も試合前に“ある映像”を見てきたという。「自分は点を獲って、みんなでワーッてなるのが好きなんですけど、プレミアリーグって点が入ったら、観客も一緒にみんなで喜ぶじゃないですか。自分もあそこでやりた過ぎるんですよね。今日も試合前にその映像を見て気分を上げてきたんです」。
ピッチとスタンドが近いからこそ、選手と観客が同じ目線で喜び合えるのがイングリッシュプレミアリーグの1つの醍醐味。「将来的にはF・マリノスから海外に必ず行きたいと思っているので、あそこでみんなで喜ぶことは本当に夢なんです」。そう言って笑った表情は、やはりまだまだ高校生のそれだ。
今年は6月にU17アジアカップ、そこを勝ち抜けば11月にはU-17ワールドカップと、年代別代表の大きな舞台が控えている。自らの思い描く夢に近付くためにも、通っておかなくてはいけないステージに向けて、その意欲を十分にたぎらせている。
「とにかくアジアカップのメンバーに選ばれたいです。選ばれて、U-17の代表でも自分が中心になってやっていけるような立ち位置でやりたいとは思っていますし、そこを勝ち抜いたらU-17のワールドカップのメンバーにも選ばれて、世界で優勝できればいいかなと思います」。
きっと抱えているものが大きければ大きいほど、それを乗り越えた時に実感する成長の度合いも、より大きくなっているはずだ。トリコロールが育んできたしなやかな才能。望月が羽ばたいていく先に広がっている世界の景色は、果たしてどこまで。
(取材・文 土屋雅史)
▼関連リンク
●高円宮杯プレミアリーグ2023特集
どちらかと言えば、責任もプレッシャーも背負い込むタイプだ。けれど、双肩にのしかかるそれは、背負える資格を持ったものにしか背負えないものだとも言える。もちろんこの10番が、その資格を十分に有していることに疑いの余地はない。
「『ちょっと気負っているんじゃないか』とも周囲から言われるんですけど、自分もチームに対する責任は感じていますし、自分がやらないといけないなという部分もあるので、それでも緊張せずに、気負わずにやっていけたら、今後も良いプレーが出るんじゃないかなと思います」。
トリコロールが育んできたしなやかな才能。横浜F・マリノスユース(神奈川)のナンバー10を託されたマルチアタッカー。MF望月耕平(2年=横浜F・マリノスジュニアユース追浜出身)が向き合っている責任感やプレッシャーは、さらなる飛躍に必要な“通過儀礼”だ。
とにかく何でもできる。ボランチでも気の利くプレーを披露するし、最前線も器用にこなす。この日の流通経済大柏高戦のように1.5列目に位置すれば、ピッチのあらゆるところに顔を出し、チームの攻守を円滑に繋いでいく。
「多少ボールロストがあった感じもするんですけど、間で受けて、そのまま簡単にワンタッチで落としたりしながら、良い感じでチームと繋がれたというか、それで試合の流れを作れたのかなと思います」。時には最終ライン近くまで下りてポイントを作り、そこからビルドアップがスムーズに進んでいくことも、一度や二度ではなかった。
ただ、チームは3-1と良い形で勝利を収めたものの、自身の“結果”に思うところがなかったわけではない。「いつも点が足りていないんですよね。自分の得点がゼロというのは不甲斐ないですけど、チーム全体として点は獲れているので、そこはプラスかなと思います」。ここまでのリーグ戦では7試合に出場して、いまだノーゴール。確かにその能力を考えれば、少し物足りない数字かもしれない。
チームを率いる大熊裕司監督は、今季の望月をこう捉えている。「『頑張りたい』とか『やらなきゃ』という責任感が逆に力みになっているので、ちょっとかわいそうだなと思っているんです。ああいう背番号を背負わせて、『オマエがやらなきゃいけない』と意図的にプレッシャーも掛けてはいるんですけど、常に1個2個プレーが余計なんですよね。だから、もうちょっとプレーがシンプルになった時に、良さがもうちょっと違うところで発揮されるんだけれども、そこのバランスがまだ自分の中で整理できていなくて、『やらなきゃいけないと思っています』ばかりなので(笑)、もうちょっと力を抜いてあげたいなというところと、でも、このプレッシャーに打ち勝たないと上には行けないので、もっとやってほしいなという想いはあります」。
指揮官が慮っていることは、本人ももちろん自覚している。「最初の方はちょっと気負っていましたね。そこから少しずつバランスは取れていますけど、つい走り過ぎてしまうというか、無駄にボールを受けに落ちちゃったりして、ゴール前でその力が使えなかったりする部分もあって、自分が全部ボールを触らなきゃという意識が強いので、そこも自分でちゃんとコントロールできないといけないと思います」。
加えて、10番という背番号に対しても、もちろん想いがないはずがない。「去年は40番で、先輩が自分を立ててくれるというか、どんどんサポートしてくれる立ち位置でしたけど、今年は自分がやらなきゃいけない部分が増えている中で、10番は要というか、チームで一番目立たないといけない番号で、やっぱり去年の(松村)晃助くんのイメージもあって、『晃助くんより劣った10番』という立ち位置でやりたくないので、そこは意識しています」。それもいろいろなことを抱え、消化し、乗り越えていくという、さらなる成長のサイクルに入っているということなのだろう。
基本的にニコニコした笑顔が印象的な16歳は、この日も試合前に“ある映像”を見てきたという。「自分は点を獲って、みんなでワーッてなるのが好きなんですけど、プレミアリーグって点が入ったら、観客も一緒にみんなで喜ぶじゃないですか。自分もあそこでやりた過ぎるんですよね。今日も試合前にその映像を見て気分を上げてきたんです」。
ピッチとスタンドが近いからこそ、選手と観客が同じ目線で喜び合えるのがイングリッシュプレミアリーグの1つの醍醐味。「将来的にはF・マリノスから海外に必ず行きたいと思っているので、あそこでみんなで喜ぶことは本当に夢なんです」。そう言って笑った表情は、やはりまだまだ高校生のそれだ。
今年は6月にU17アジアカップ、そこを勝ち抜けば11月にはU-17ワールドカップと、年代別代表の大きな舞台が控えている。自らの思い描く夢に近付くためにも、通っておかなくてはいけないステージに向けて、その意欲を十分にたぎらせている。
「とにかくアジアカップのメンバーに選ばれたいです。選ばれて、U-17の代表でも自分が中心になってやっていけるような立ち位置でやりたいとは思っていますし、そこを勝ち抜いたらU-17のワールドカップのメンバーにも選ばれて、世界で優勝できればいいかなと思います」。
きっと抱えているものが大きければ大きいほど、それを乗り越えた時に実感する成長の度合いも、より大きくなっているはずだ。トリコロールが育んできたしなやかな才能。望月が羽ばたいていく先に広がっている世界の景色は、果たしてどこまで。
(取材・文 土屋雅史)
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