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実践学園が関東高校大会Bグループ優勝。原点回帰の勝利を自信と学びに

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後半33分、実践学園高の選手たちがFW小嵐理翔の決勝点を喜ぶ

[5.29 関東高校大会Bグループ決勝 実践学園高 1-0 日大藤沢高 AGFフィールド]

 29日、第66回関東高校サッカー大会(東京)Bグループ決勝が行われ、実践学園高(東京)が1-0で日大藤沢高(神奈川)に勝利。各都県2位チームによるBグループで優勝、関東大会3位という成績を残した。

 ともに3連戦の3試合目。主力選手中心ではあったものの、インターハイ予選を控えていることもあって怪我を抱えている選手は大事を取り、新戦力にチャンスを与えるようなメンバー構成だった。

 実践学園は前半、チャレンジしているビルドアップを日大藤沢に封じられる展開に。ボールを保持する時間は増やしていたものの、スイッチのパスをカットされてショートカウンターを食らうシーンが続いた。
 
 前半、より多くのチャンスを作っていたのは日大藤沢の方。15分には注目左SB尾野優日(3年)の縦突破から10番MF安場壮志朗(3年)の放ったヘッドが左ポストを叩く。日大藤沢はボールを保持する時間を増やし、縦、中へのドリブルで存在感を放つ尾野や先発起用されてターンやボールタッチの巧さを発揮していたMF岩内類(2年)もアクセントにサイド攻撃。ゴール前のシーンを作り出した。

 一方の実践学園は流れるようなパスワークを見せるシーンもあったが、相手の切り替えの速さや185cmCB柳沼俊太(3年)らDF守備陣の堅守に封じられ、なかなか前進することができない。前半のシュート数は0-6。それでも、後半は戦い方を変え、優勢に転じた。

 5分、日大藤沢MF安場のループシュートを実践学園GK宮崎幹広(3年)がファインセーブ。10分にもクロスバーを叩くシュートを打たれた実践学園だが、そのカウンターから高速FW小嵐理翔(3年)がドリブルで一気にDFを振り切り、あわやPKというビッグプレーを見せる

 ここから小嵐が止まらない存在に。裏抜けを連発する小嵐が4連続で相手の背後を取って決定的なシュートを打ち込む。また、中盤で“心臓”MF古澤友麻(3年)が好守を連発。山城翔也(3年)と鈴木嘉人(3年)の両CBの体を張った守備や相手を押し下げた小嵐らの奮闘もあり、後半10分以降は強敵にシュートを打たせなかった。

 実践学園の内田尊久監督は「前半いろいろチャレンジしたんですけれども日藤さんの切り替えも速くて、ゆっくりじゃ難しいよねという話が鈴木(佑輔コーチ)の方から全体にもあって、そこはまずは速い攻撃で原点に戻ってという話をして、良く選手も理解して狙ってくれたんじゃないかと思います」と説明する。

 今年のチームはビルドアップやサイド攻撃にチャレンジしているが、同時に実践学園の原点と言える堅守速攻にも取り組んできている。上手く行かない展開の中で原点回帰し、守備から速攻を軸とした戦いに変えたことが白星を引き寄せた。

 迎えた32分、山城の左足フィードをPAの小嵐がコントロール。この際にファウルを受け、PKを獲得した。小嵐が自ら獲得したPKを右足で決めて先制。日大藤沢の反撃を全員で封じ切り、白星で大会を終えた。

 日大藤沢の佐藤輝勝監督はビルドアップ、ボールを動かす部分や新戦力の台頭に一定の評価。その上で「(連戦の)最後のところで少し体がいうことをきかない部分が出てしまうのは仕方ないことですけれども、こういう連戦をものにするのはインターハイで必要になるので良い経験になったと思いますね」と語っていた。

 一方、強敵に競り勝った実践学園は、自信となる今大会3勝目。各都県1位によるAグループを制した修徳高とともに地元・東京勢男子の“完全優勝”にも貢献した。内田監督は関係者たちへの感謝を口にする。

「たくさんの方々が色々な準備をしてくれた中で、プレーさせて頂いているということをとにかく生徒たちには伝えて、感謝の気持ちを持って頑張らなきゃダメだということを私の方からは常々伝えさせて頂きました」。深町公一前監督時代から受け継がれてきた伝統の継承。その心の大切さを選手たちも理解している。

 決勝点を決めた小嵐も「ここに立てているのも自分たちだけのおかげじゃないし、スタンドで応援してくれる選手たちもいたり、自分、茨城出身なんですけれども親も毎試合来てくれている。そういう部分で自分は感謝とかプレーで見せることしかできないので意識しています」と語っていた。

 勝ったとは言え、課題が残ったことも確か。内田監督は「勝てたことは自信に繋がりますけれども、きょうこれだけ通用しなかったことが見えたのでそういう意味で本当の引き締まったところは一つあるんじゃないかなと思います」と語り、古澤は「こうやって3位になったことはインターハイに繋がると思うし、自分たちの自信に繋げたいと思うし、ビルドアップのところをもっと良くしていくこと。今年は堅守速攻とビルドアップにチャレンジすることが目標なので、そこは相手によって使い分けていきたい」と前を向いた。インターハイ東京都予選は準々決勝から出場し、2勝すれば全国切符獲得。満足することなく自分たちをより成長させ、次は支えてくれた人たちと全国出場を喜ぶ。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2023

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