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選手に火を付けた1枚の“公式記録”。柏U-18は湘南U-18との打ち合いを制して「1年前のリベンジ完遂」で全国切符!

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柏レイソルU-18は打ち合いを制して全国切符獲得!

[6.1 日本クラブユース選手権関東予選2回戦 柏U-18 4-2 湘南U-18 日立柏総合グランド]

 条件は整いすぎるほど、整っていた。1年前と同じラウンド、同じ会場、そして、同じ相手。ただ、今度は同じ結果で終わるわけにはいかない。先輩たちの想いも、自分たちの想いも、応援してくれる人たちの想いも乗せて、勝つ。絶対に、勝つ。

「『もう絶対にリベンジする!やり返す!』という気持ちでいたので、去年負けた相手にしっかりここで勝って、全国出場を決められたというのは本当に良かったと思います」(柏レイソルU-18・栗栖汰志)。

 1年前のリベンジ完遂で、夏の全国切符獲得!1日、第48回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会関東予選2回戦が開催され、柏レイソルU-18(千葉)と湘南ベルマーレU-18(神奈川)が対峙した一戦は、柏U-18が昨年度の大会では同じ2回戦で敗れた湘南U-18に4-2で競り勝って、全国大会への出場権を手繰り寄せている。


「攻守において意図的な状況判断を求めている中で、自分たちの力が見せられたんじゃないかなと思います」と平塚次郎監督も話した湘南U-18は勢いを持って立ち上がる。開始1分。DF増森正悟(3年)の左クロスから、MF山崎翔流(3年)が放ったシュートは枠の右へ外れるも、いきなりサイドバック同士が絡んでチャンスを作ると、19分にも決定機。MF安部理仁(2年)、MF篠崎清輝(3年)と繋いだボールをMF崎野悠真(2年)が枠内シュート。ここは柏のGK栗栖汰志(3年)が弾き出したものの、直後のセットプレーがスコアを動かす。

 20分。左から山崎が丁寧に蹴ったCKに、中央で合わせたFW寺下翔和(3年)のヘディングはそのままゴールへ弾み込む。「セットプレーは得点のチャンスに繋がるということで、質高くやってくれましたね」とは平塚監督。湘南U-18が1点のリードを奪った。



「みんなで集まったんですけど、『全然焦る必要はない。自分たちのペースでしっかり点を獲って勝とう』と話していました」(戸田晶斗)。ホームチームにも焦りの色は見えない。35分。MF黒沢偲道(3年)のスルーパスにFWワッド・モハメッド・サディキ(3年)が抜け出し、右から折り返したボールをMF戸田晶斗(3年)がボレーでゴールネットへ流し込む。「『自分のところに来い!』と思ってニアに走りました」という10番の同点弾。最初の45分間は1-1でハーフタイムに折り返す。


 後半に入ると、選手交代とシステム変更を施した柏U-18が一歩前に出る。6分。交代出場で右サイドバックに入ったMF長南開史(中学3年)が、駆け上がってクロス。エリア内で巧みに収めたMF澤井烈士(2年)のシュートは、ゴールネットへ滑り込む。2年生アタッカーのファインゴール。2-1。逆転。

柏U-18はFW澤井烈士のゴールで逆転!


 ただ、アウェイチームも簡単に引き下がるつもりは毛頭ない。10分。素早い切り替えから篠崎を起点にカウンターを発動させると、寺下が右へ展開。MF中村龍(1年)がワンテンポ溜めて上げたクロスがフリーの寺下へ届くと、冷静にGKを見極めたシュートがゴールネットを揺らす。「そのままズルズル行く可能性もあった中で、意図的に奪ってから速く点を獲るというイメージの中で、相手の隙を突いた良いゴールだったと思います」(平塚監督)。2-2。同点。両者譲らず。

 次の1点を目指して、双方が攻め合う。21分は柏U-18。ワッドとのワンツーで左サイドを抜け出し、エリア内へ潜ったDF藤谷温大(3年)のシュートは、果敢に飛び出した湘南U-18のGK島田悠生(2年)がビッグセーブ。26分は湘南U-18。崎野の右FKから、途中出場のMF杉浦誠黎(2年)が狙ったシュートは栗栖がファインセーブ。29分は柏U-18。長南の横パスを黒沢はダイレクトではたき、投入されたばかりのMF加茂結斗(1年)が枠へ収めたフィニッシュはここも島田がファインセーブ。続くシビアな攻防。上がっていく会場のボルテージ。

 32分の主役は「『自分が点を獲ってチームを勝たせたい。全国に導きたい』という想いがあったので、『点を獲ろう』ということはずっと考えていました」と笑ったナンバー11。GKの栗栖が蹴り込んだボールが左サイドへ抜けると、FW吉原楓人(3年)はドリブル開始。カットインではなく縦突破を選択しながら、強引にエリア内へ突入して左足で打ち切ったシュートは、ゴールに吸い込まれる。ピッチにできた大きな歓喜の輪。3-2。柏U-18が再びアドバンテージを強奪する。

 試合を決めたのは1年生アタッカーだった。37分。右サイドを力強くワッドが運び出し、そのままエリアの中へ侵入。湘南守備陣も懸命に対応したが、こぼれ球にいち早く反応した加茂が左足を振り抜き、ボールをゴールへと送り届ける。ファイナルスコアは4-2。「最後はベルマーレの選手も足が攣っていたと思うんですけど、自分たちは走れるので、追い付かれた時も自分たちの時間が来ることを考えた中で、3点目を獲り返すというところにベクトルを向けられていたので、それが勝利に繋がったのかなと思います」(栗栖)。柏U-18が激闘をモノにして、2年ぶりの全国大会出場を引き寄せる結果となった。

柏U-18は1年生MF加茂結斗がチーム4点目をゲット!


「去年と同じ場所で、同じ相手で、何か運命的なものがあって、そんな因縁はお互いの選手が感じながらやっていたように思います」と湘南U-18の平塚監督が話したように、この日のシチュエーションは1年前とまったく同じだった。ラウンドはクラブユース選手権関東予選2回戦。会場は日立台。カードは柏U-18対湘南U-18。その時は1点を守り切って、ウノゼロで勝利した湘南U-18の全国出場が決定。柏U-18はその次の試合で栃木SC U-18にPK戦で屈し、予選敗退を余儀なくされた。

 柏U-18の藤田監督は今回の試合に臨むに当たり、試合前のミーティングで“あるもの”を用意していたという。「今日は今までで一番短いミーティングでした。メンバーを発表して、その後に去年の試合の“公式記録”を見せて、『何が言いたいかわかると思うから、行け』で終わりです」。

「今日のミーティングで去年のベルマーレ戦の公式記録を見せてもらった時に、藤田さんが『去年の試合を忘れたことはない』と。それは選手たちもそうですから」と栗栖が話せば、戸田も「去年の試合を自分はベンチで見ていて、1年越しで自分たちがベルマーレと対戦できるとわかった時に、『絶対に勝って全国に行きたい』ということはみんなで話していた中で、藤田さんが試合前のミーティングでも『去年のベルマーレとの試合はオレも今でも忘れていないから。絶対に今日勝って全国を決めよう』と言ってくれたんです」と言及している。

「誰かのために戦うことで自分の実力以上のものが出てくるというか、それは親が応援してくれる姿を見ることもそうですけど、やっぱり去年の子たちの想いも背負ってほしかったので、“公式記録”を見せた時に、みんなの目の色がガラッと変わったと思いますし、スイッチが入ったと感じたので、少なからず効果はあったかなと思います」(藤田監督)。指揮官が用意した1枚の“公式記録”がもたらす効果は、てきめんだったようだ。

 2年前のクラブユース選手権。柏U-18はベスト4まで勝ち上がったものの、雷雨の影響もあって横浜F・マリノスユースとの準決勝は前半で中止に。抽選の結果、ファイナル進出を阻まれるという悔しい経験を味わっている。この日の会場には当時キャプテンを務めていた西村龍留(東洋大)も応援に駆け付け、試合後には“後輩たち”の全国出場を笑顔で祝福していた。

「あの時は現地にいなかったですけど、動画のライブで見ていて、キャプテンの西村くんが泣いている姿を見て、心に来るものがありましたし、自分が力になれなかったのも凄く悔しかったことを覚えています。だから、今日西村くんに『おめでとう』と言ってもらって嬉しかったですし、今年はもうアカデミー最後の自分たちの年なので、2年前の分もしっかり戦って、先輩たちの想いもしっかり背負って、日本一を目指していきたいと思っています」。栗栖は力強く、きっぱりと、そう言い切った。

 太陽王子に引き継がれてきた、日本一という宿願へのチャレンジ。秋野央樹(V・ファーレン長崎)、小林祐介(ジェフユナイテッド千葉)、中川寛斗(大分トリニータ)らを擁したチームが勝ち獲って以来となる、12年ぶりの戴冠へ。柏U-18がまずはそのための第一関門を、逆転勝利で逞しく潜り抜けた。

試合前にはチーム全員で円陣を組む。柏U-18は総力戦で全国切符!


(取材・文 土屋雅史)
土屋雅史
Text by 土屋雅史

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