中学3年でのプレミアデビューにも「これに満足しないで、次はどんどん前に絡んで点を獲りたい」。柏レイソルU-18MF長南開史が記した「15歳のスタートライン」
[6.22 プレミアリーグEAST第9節 横浜FCユース 1-4 柏U-18 保土ヶ谷]
15歳だからとか、中学生だからとか、そんなことはまったく気にしていない。ここはあくまでもスタートライン。試合に出たら誰よりも活躍したいし、誰よりもチームの勝利に貢献したい。それが自分にはできると信じているから、このピッチに立っているのだ。
「やっとスタートラインに立ったなという感じです。でも、もっともっと上を目指していますし、このチームの主力になることを目指しているので、これに満足しないで、今日も点を獲りたかったですけど、あまり前に絡めなかったので、次はどんどん前に絡んで、点を獲りたいです」。
中学3年生で飾ったプレミアリーグデビューは、あくまでもこれから紡いでいくストーリーのファーストステップ。柏レイソルU-18(千葉)に現れた15歳の新星。MF長南開史(中学3年=柏レイソルU-15)はこの日に味わった悔しさを糧に、大きな可能性に彩られた未来へと突き進む。
横浜FCユース(神奈川)とアウェイで対峙したプレミアリーグEAST第9節。柏U-18は先制を許したものの、MF沼端隼人(2年)とMF黒沢偲道(3年)のゴールで前半のうちに逆転すると、後半に入ってFW吉原楓人(3年)とFWワッド・モハメッド・サディキ(3年)も得点を重ね、後半15分までに4-1とリードを広げる。
18分。ピッチサイドに30番の姿が現れる。両チームのメンバーの中で唯一の2009年生まれ。メンバーリストの前所属チームに『柏レイソルU-12』と記されている中学3年生の長南は、同点弾を沈めた沼端との交代で、プレミアリーグデビューの舞台へと駆け出していく。
「彼が出ることに関しては全員が納得していると思うので、入れたからには特別扱いはしないですし、みんなと同じことを求めます」。チームを率いる藤田優人監督は、きっぱりとそう言い切る。チームにとって、この試合にとって、必要な選手だから使う。指揮官の意志にはいささかのブレもない。
実はこの試合を前にして、“U-18デビュー”は果たしていた。6月1日。日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会関東予選2回戦。勝てば全国大会出場が決まる湘南ベルマーレU-18(神奈川)との一戦。長南は後半開始から右サイドバックに入ると、いきなり鋭い突破からのクロスでFW澤井烈士(2年)のゴールを演出。以降も45分間を逞しく戦い抜き、勝利の瞬間をピッチの上で味わった。
「あのゲームは入りから点に繋がるドリブルもできて、そこで流れに乗って、結構良い感じのプレーができたと思います」。本人も手応えを得たデビュー戦のイメージを持って、U-18での2試合目に臨んでいたようだ。
ファーストプレーは上々だった。登場から2分後。ピッチ中央のギャップに潜り、MF廣岡瑛太(2年)からパスを引き出すと、巧みなターンでマーカーを剥がしながら、そのままドリブルで前進。左サイドの吉原にパスを通す。長南自身も「最初のワンプレーでターンできて、得意な運ぶドリブルができたのは良かったと思います」と振り返っている。
だが、そこから体感したプレミアリーグのレベルは、想像の遥かに上を行っていた。「プレミアの試合は全然違いました。いつも同学年でやっているより数倍のスピードで寄せてきて、『いつの間に後ろにいるんだ……』みたいな感じで、スピード感があまり掴めなかったです」。
ダイヤモンド型の中盤の右サイドへ送り込まれたが、ボールを持ったらすぐに寄せられ、じっくりと判断を下すような時間は与えてもらえない。守備で対峙する相手の選手も、強度やスピードは今まで経験してきたそれではなく、必死に食らい付いても、ボールを奪い切るところまではなかなか届かない。
「僕は彼のプレーに全然納得していないですし、彼自身も納得していないでしょう。プレミアのスピード感やパワーと展開の速さに戸惑って、いつもは見られないような息切れするシーンもありましたし、奪って出ていくとか、もっとダイナミックなプレーが出せたんじゃないかなと思います」。藤田監督が発した厳しい言葉が、逆に期待値の高さを窺わせる。
もちろんこの日の出来については、本人が一番よくわかっている。「最初からあまり流れが掴めなくて、守備もあまりハマらずに抜かれたところもありましたし、通用する部分もありましたけど、もっとやれると思っていました。今日は“40点”ぐらいです」。自己採点は100点満点の半分以下。プレミアの洗礼を浴びる格好となったが、それも試合に出場する権利を勝ち獲ったからこそ得られたもの。新たな景色を突き付けられた30分近い時間が、長南にとってもかけがえのない経験になったことは、言うまでもないだろう。
現状では中学校に通っていることと、そこからグラウンドまでの移動に時間が掛かるために、U-18の練習には少し遅れて参加することが多いとのこと。それでも吸収できるものを吸収し続けてきたことで、自身の確かな成長も実感している。「ユース(U-18)で練習することで、同学年の練習に戻った時に、そっちに合わせるんじゃなくて、より高いレベルを意識することで、自分の基準が上がったなと思います」。経験値に“プレミア”も加わったここからは、今まで以上に基準を高い位置へと置くことになるはずだ。
藤田監督が語った言葉も印象深い。「こういう試合も彼にとっては必要な時間だと思います。負けん気も強いですし、今日足りなかったところに対して取り組むんじゃないですかね。ここにも普通に実力で出ているわけで、ちゃんと結果を出して、周囲を納得させてほしいですし、プレミアリーグを自分のステップに使うぐらいの勢いで、もっと大きくなってほしいなと思います」。
プレミアデビューを終えた長南は、改めて過ごすべき日常に想いを馳せる。「自分の特徴はハードワークとか、点に繋がるドリブルとか、そういうところだと思っています。このプレミアで試合に出たという経験を生かして、また練習から高いレベルでやっていきたいなと思っています」。
あくまでもこの日は1つの通過点に過ぎない。ここから見据える先に広がっている世界の景色は、自分次第でどんな彩りにも変えられる。15歳が凛々しく立ったスタートライン。長南開史が力強く進んでいく道のりを、多くの人が温かく、楽しみに見守っている。
(取材・文 土屋雅史)
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15歳だからとか、中学生だからとか、そんなことはまったく気にしていない。ここはあくまでもスタートライン。試合に出たら誰よりも活躍したいし、誰よりもチームの勝利に貢献したい。それが自分にはできると信じているから、このピッチに立っているのだ。
「やっとスタートラインに立ったなという感じです。でも、もっともっと上を目指していますし、このチームの主力になることを目指しているので、これに満足しないで、今日も点を獲りたかったですけど、あまり前に絡めなかったので、次はどんどん前に絡んで、点を獲りたいです」。
中学3年生で飾ったプレミアリーグデビューは、あくまでもこれから紡いでいくストーリーのファーストステップ。柏レイソルU-18(千葉)に現れた15歳の新星。MF長南開史(中学3年=柏レイソルU-15)はこの日に味わった悔しさを糧に、大きな可能性に彩られた未来へと突き進む。
横浜FCユース(神奈川)とアウェイで対峙したプレミアリーグEAST第9節。柏U-18は先制を許したものの、MF沼端隼人(2年)とMF黒沢偲道(3年)のゴールで前半のうちに逆転すると、後半に入ってFW吉原楓人(3年)とFWワッド・モハメッド・サディキ(3年)も得点を重ね、後半15分までに4-1とリードを広げる。
18分。ピッチサイドに30番の姿が現れる。両チームのメンバーの中で唯一の2009年生まれ。メンバーリストの前所属チームに『柏レイソルU-12』と記されている中学3年生の長南は、同点弾を沈めた沼端との交代で、プレミアリーグデビューの舞台へと駆け出していく。
「彼が出ることに関しては全員が納得していると思うので、入れたからには特別扱いはしないですし、みんなと同じことを求めます」。チームを率いる藤田優人監督は、きっぱりとそう言い切る。チームにとって、この試合にとって、必要な選手だから使う。指揮官の意志にはいささかのブレもない。
実はこの試合を前にして、“U-18デビュー”は果たしていた。6月1日。日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会関東予選2回戦。勝てば全国大会出場が決まる湘南ベルマーレU-18(神奈川)との一戦。長南は後半開始から右サイドバックに入ると、いきなり鋭い突破からのクロスでFW澤井烈士(2年)のゴールを演出。以降も45分間を逞しく戦い抜き、勝利の瞬間をピッチの上で味わった。
「あのゲームは入りから点に繋がるドリブルもできて、そこで流れに乗って、結構良い感じのプレーができたと思います」。本人も手応えを得たデビュー戦のイメージを持って、U-18での2試合目に臨んでいたようだ。
ファーストプレーは上々だった。登場から2分後。ピッチ中央のギャップに潜り、MF廣岡瑛太(2年)からパスを引き出すと、巧みなターンでマーカーを剥がしながら、そのままドリブルで前進。左サイドの吉原にパスを通す。長南自身も「最初のワンプレーでターンできて、得意な運ぶドリブルができたのは良かったと思います」と振り返っている。
だが、そこから体感したプレミアリーグのレベルは、想像の遥かに上を行っていた。「プレミアの試合は全然違いました。いつも同学年でやっているより数倍のスピードで寄せてきて、『いつの間に後ろにいるんだ……』みたいな感じで、スピード感があまり掴めなかったです」。
ダイヤモンド型の中盤の右サイドへ送り込まれたが、ボールを持ったらすぐに寄せられ、じっくりと判断を下すような時間は与えてもらえない。守備で対峙する相手の選手も、強度やスピードは今まで経験してきたそれではなく、必死に食らい付いても、ボールを奪い切るところまではなかなか届かない。
「僕は彼のプレーに全然納得していないですし、彼自身も納得していないでしょう。プレミアのスピード感やパワーと展開の速さに戸惑って、いつもは見られないような息切れするシーンもありましたし、奪って出ていくとか、もっとダイナミックなプレーが出せたんじゃないかなと思います」。藤田監督が発した厳しい言葉が、逆に期待値の高さを窺わせる。
もちろんこの日の出来については、本人が一番よくわかっている。「最初からあまり流れが掴めなくて、守備もあまりハマらずに抜かれたところもありましたし、通用する部分もありましたけど、もっとやれると思っていました。今日は“40点”ぐらいです」。自己採点は100点満点の半分以下。プレミアの洗礼を浴びる格好となったが、それも試合に出場する権利を勝ち獲ったからこそ得られたもの。新たな景色を突き付けられた30分近い時間が、長南にとってもかけがえのない経験になったことは、言うまでもないだろう。
現状では中学校に通っていることと、そこからグラウンドまでの移動に時間が掛かるために、U-18の練習には少し遅れて参加することが多いとのこと。それでも吸収できるものを吸収し続けてきたことで、自身の確かな成長も実感している。「ユース(U-18)で練習することで、同学年の練習に戻った時に、そっちに合わせるんじゃなくて、より高いレベルを意識することで、自分の基準が上がったなと思います」。経験値に“プレミア”も加わったここからは、今まで以上に基準を高い位置へと置くことになるはずだ。
藤田監督が語った言葉も印象深い。「こういう試合も彼にとっては必要な時間だと思います。負けん気も強いですし、今日足りなかったところに対して取り組むんじゃないですかね。ここにも普通に実力で出ているわけで、ちゃんと結果を出して、周囲を納得させてほしいですし、プレミアリーグを自分のステップに使うぐらいの勢いで、もっと大きくなってほしいなと思います」。
プレミアデビューを終えた長南は、改めて過ごすべき日常に想いを馳せる。「自分の特徴はハードワークとか、点に繋がるドリブルとか、そういうところだと思っています。このプレミアで試合に出たという経験を生かして、また練習から高いレベルでやっていきたいなと思っています」。
あくまでもこの日は1つの通過点に過ぎない。ここから見据える先に広がっている世界の景色は、自分次第でどんな彩りにも変えられる。15歳が凛々しく立ったスタートライン。長南開史が力強く進んでいく道のりを、多くの人が温かく、楽しみに見守っている。
(取材・文 土屋雅史)
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