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[MOM4762]大津GK坊野雄大(3年)_チームきっての愛されキャラの躍動!GK転向から2年弱の守護神が「最後まで我慢する」セーブで勝利に貢献!

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大津高の正守護神、GK坊野雄大(3年=PSTC FUKUOKA U-15出身)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[7.7 プレミアリーグWEST第11節 大津高 3-1 東福岡高 大津町運動公園球技場]

 まだゴールキーパーに転向して2年も経っていないが、この高校年代最高峰のステージで積み重ねた経験は、自分を間違いなく成長させてくれた。目の前には頼れるチームメイトたちが厚い壁を築いている。それでも、そこをすり抜けてきた相手には、オレが立ちはだかってやる。

「去年のプレミアを経験しているのとしていないのでは大きな差があると思いますし、やっぱりキーパーに大事なのは試合の慣れなので、そこは経験して良かったなと思います。今年はディフェンス陣が負けないと信じてやっていますし、そこを抜けられても最後に自分がいるんだという気持ちで、毎試合に臨んでいます」。

 今シーズンのプレミアリーグWESTを席巻している大津高(熊本)の正守護神。GK坊野雄大(3年=PSTC FUKUOKA U-15出身)の冷静なセービングが、苦しい試合を粘り強く勝ち切ったチームの中で、渋くも確かな輝きを放った。


「最初の良い時間帯に先制できて、良い流れで行けるかなと思ったんですけど、なかなかみんなの調子が合わなくて、その後に失点したくない時間帯で失点してしまいましたね」。

 東福岡高(福岡)と激突したプレミアの前半戦ラストゲーム。坊野がそう振り返った大津は、開始6分でMF兼松将(3年)がゴールを奪って先制したものの、徐々にサイドを崩され出すと、40分にはやはりサイドアタックから失点を許し、1-1でハーフタイムへ折り返す。

「今まではずっとうまく行っている試合が多かったんですけど、プレミアはうまく勝てる試合ばかりではないですし、そもそも厳しい戦いなので、相手のカウンターを受ける時に全然戻れていなかったところは、みんなでハーフタイムに声を掛け合って、『後半はまず守備から入ろう』と話しました」(坊野)。チームはもう一度やるべきことを徹底して、後半のピッチへと駆け出していく。

 23分。大津にピンチが訪れる。左サイドからクロスを上げられると、ファーへ潜った相手フォワードはまったくのフリーに。だが、体勢を整えた坊野は置かれている状況を見極めていた。「やっぱり最後まで動かないと、相手もどこに打とうか考えると思いますし、自分が先に動くとそこに打たれてしまうので、我慢して、『あとはボールに反応するだけだ』と思っていました」。正面に飛んできたヘディングを冷静に防ぎ切る。

 29分。今度はセットプレーから決定機を作られる。大津から見て右サイドで与えたフリーキック。ニアサイドへ蹴り込まれた軌道に、ヘディングで合わされたボールは、ペナルティエリアの中で嫌なバウンドを経てゴールに向かってきたが、これも坊野は横っ飛びで確実に弾き出す。

「あれはフリーキックから中の味方がクリアできずに逸らされて、相手も走ってきたんですけど、これも最後まで我慢して、ボールに食らい付いて弾きました。最近はボールを最後まで見て反応することを練習でも意識しているので、そこは良かったと思います」。

 試合は38分にMF嶋本悠大(3年)が、45+1分にFW岩中翔大(3年)がゴールを叩き出し、大津が3-1で勝ち切ってリーグ戦8連勝を飾ったが、同点の段階で坊野が繰り出した2つの重要なセーブが、この日の勝利の一翼を担ったことは語り落とせない。



 これで首位ターンとなったプレミアリーグの前半戦だが、坊野は最初の4試合のゴールマウスには立っていない。開幕直前に負った右足のケガの影響で、戦線離脱を余儀なくされていたからだ。「自分の中では正直焦っていました」という状況に、さらなる刺激をもたらしたのが1年後輩のGK村上葵(2年)の好パフォーマンスだ。

 アウェイでヴィッセル神戸U-18(兵庫)と戦った開幕戦。2-2の同点で迎えた試合終盤に大津はPKを献上してしまったが、これを村上は完璧なセーブでストップ。チームに勝ち点をもたらす活躍を披露する。

「ヴィッセル戦では葵がPKを止めて、チームも勝ち点1を拾ったので、それ自体は良かったですけど、自分の中では複雑な部分もありました。それもあってちょっと焦っていて、サッカーができない期間は筋トレとか、手は使えるのでキャッチングの練習はしていて、練習でも葵と張り合えるぐらいの力は、復帰したら最初から出したいなと思っていました」。焦る気持ちを抑えながら、地道に復帰への準備を整えていく。

 4節でようやくベンチに入り、5節で今季リーグ戦初出場。その試合で米子北高(鳥取)相手に完封勝利を収めると、以降はスタメンとしてチームの連勝を最後方から支えているが、本人も「アイツの分までやらなきゃという想いは強いです」と口にしたように、年下の“ライバル”と切磋琢磨する日々を過ごしている。


「坊野が後ろにいることで、自分たちも安心して高いラインをキープすることができていますし、“ここぞ”というところで止めてくれる安心感もありますね。あとはキャラ的にも愛されています(笑)」。キャプテンを務めるDF五嶋夏生(3年)はそんな言葉で守護神の存在の大きさを表現する。

 チームでの立ち位置に水を向けると、本人も笑顔を浮かべながらこう話してくれた。「自分は誰かがなんか言ったことに対して、それにダジャレを言ったり、ギャグをやったりして、それでみんながシケる、みたいな感じでやっていますね。そういうキャラがチームに1人は必要かなと思っているので(笑)」。坊野の“シケキャラ”が今年のチームに笑顔を増やしていることも、また間違いなさそうだ。

 もともと入学してきた当初はセンターバックを主戦場に置いていたが、1年時の9月に平岡和徳テクニカルアドバイザーの提案もあって、ゴールキーパーへとコンバート。そこから少しずつ頭角を現し、本格的に挑戦して1年も経っていなかった昨シーズンの夏前から、数多くの名手を生んできた“大津の守護神”の座に就いている、珍しいキャリアの持ち主でもある。

 ゴールキーパーとして臨む初めてのビッグコンペティションだった昨夏のインターハイは、市立船橋高(千葉)と対戦した初戦でPK戦の末に敗退。その悔しさが今でも自身の中に残っていることもあって、今年の夏の全国大会に懸ける想いはとにかく強い。

「去年のインターハイは自分のせいで負けたと思っているので、今年はPK戦になっても自分が止めて勝つという気持ちを、どの試合でも出していきたいですね。あとはプレミアも良い形で折り返せるので、後期も1試合目からからしっかり勝てるように、この前期の流れでやっていければなと思います」。

 独特なキャリアを辿ってきた、独特なキャラクターを合わせ持つ、大津の背番号1。この夏の主役を鮮やかにさらっていく可能性を秘めた、確かな実力と不思議な魅力を、坊野は兼ね備えている。



(取材・文 土屋雅史)

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土屋雅史
Text by 土屋雅史

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