初のインハイで能登、石川県全体に「笑顔や勇気を」。鵬学園が神栖ワールドユースフットボールで明秀日立と好ファイト
[7.14神栖ワールドユースフットボール予選リーグ 明秀日立高 1-1 鵬学園高 神栖市矢田部サッカー場]
能登、石川県全体に「笑顔や勇気を」。鵬学園が茨城県遠征で初のインターハイに繋がる好ファイトだ。14日、「第1回神栖ワールドユースフットボール」(茨城県神栖市)で地元・茨城の明秀日立高と鵬学園高(石川)が対戦。1-1で引き分けた。
鵬学園は後半ラストプレーの失点でドロー。だが、赤地信彦監督は、「大満足です。やれるところとやれないところがはっきりした」と前向きに捉えていた。今年1月の能登半島地震の影響で未だ自分たちの練習場は使用できず、40、50分を掛けて移動してトレーニングを行う日々。今回は公式戦後にそのまま長距離移動して「第1回神栖ワールドユースフットボール」に参加し、他地域の強豪校との戦いで課題と収穫を得た。
序盤から互いに突破、奪い返しを繰り返す激しい攻防戦に。鵬学園は欠かせない存在のCB竹中健之助(3年)が賢く、的確なカバーリングを続け、先発起用されたCB刀祢杏蒔(1年)も健闘を見せる。
序盤、相手にFKから決定打を打たれたが、GK山本裕樹(3年)が好反応でストップ。逆にMF亀山日々葵(3年)のスルーパスなどから先制点を狙うと、14分にはMF猪谷悠太(3年)の強引な中央突破からMF和田陸(3年)が決定的な左足シュートを放つ。だが、明秀日立GK重松陽(3年)が距離を詰めて身体で止めた。
明秀日立はインターハイ予選決勝で敗れて全国連覇こそ逃したものの、関東高校大会で準優勝するなど今年も強力な陣容。CB菅野一葵(3年)が能力の高さを活かして守っていたほか、巧みなターンとフェイントで相手をかわすMF柴田健成(3年)や技巧派MF阿部巧実(3年)がボールを前進させる。そして、前線ではFW竹花龍生主将(3年)が怖さを見せていた。
だが、予選決勝で名門・星稜高を破ってインターハイ初出場を決めている鵬学園は、球際の攻防でファイト。「(予選後)リーグ戦でも勝ち切れない試合とかが続いて、悪い流れもあったんですけど、昨日(プリンスリーグの前期最終戦)で一回もう吹っ切れて、『もう一回、全国大会に向けて、いい雰囲気作っていこう』と」とMF竹内孝誠主将(3年)が説明したように、鵬学園は気持ちを切り替えて臨んだ一戦で好ゲームを演じた。
負傷離脱から戻ってきた竹内がひたむきにボールを回収し続け、MF能勢翼(3年)も球際の強さを発揮して攻撃に結びつける。加えて、前線でFW山田春斗(3年)が力強いポストプレーや突破力を見せていたほか、左サイドではSB水沼凛心(3年)のサポートを受けて和田が攻撃力を発揮。DFと入れ替わってクロスまで持ち込み、右サイドではチームの信頼厚いSB生駒晟司(3年)が落ち着いてマイボールの時間を増やしていく。
迎えた後半開始直後、鵬学園が先制する。竹内の回収によって連続攻撃。右サイドから猪谷がクロスを上げると、ニアの山田がそらす。最後はファーの能勢が豪快な右足ダイレクトボレーでゴールへ突き刺した。
明秀日立も直後に右サイドを抜け出した柴田の右足シュートがゴールを捉えるが、鵬学園GK山田がセーブ。逆に後半、落ち着いてボールを保持できるようになった鵬学園は相手背後を突いた攻撃から和田が1度、2度とチャンスを迎える。
だが、仕留めることができず、明秀日立も22分にショートコーナーの流れから竹花の放った左足シュートがポストをヒット。鵬学園は大きな声を掛け合いながら試合を締めようとしたが、明秀日立はラストプレーでMF滝川翔太(3年)が右から中へ運んでクロスを上げる。DF、GKの間へ落ちたボールに柴田が身体を投げ出して触り、1-1。現在、3年生30人と2年生2人によるAチームの構成でより結束した、より強いチームを目指しているという明秀日立が意地を見せた。
鵬学園は最後に課題が出たが、去年のインターハイ王者相手に自信となる戦い。彼らは震災後、チームメートと離れ離れになる日々や受け入れてくれた富山県での約2か月間の集団生活を経験したことでタフで、結束力の非常に強いチームになってきているという。赤地監督は「まずはサッカーできるのがありがたいっていう感じでみんな。それを支えてくれる方々がいたんで、感謝するために自分に甘えられないなって。あと、ずっと離れ離れになっていたから仲間の大切さを知れたし、戻って来た時の友情が強いです」と頷く。
また、竹内は「練習時間とか短かったんですけど、その分、質が高くやれましたし、(大きな被害を受けた能登や)石川県に対する思いも強かったので。今年は背負ってるものが違っていた」。地元にはまだまだ苦しい経験をしている人たちが大勢いる。その人たちや、今回の関東遠征など貴重な経験をさせてくれている人たちのためにも全国大会を戦う。
赤地監督は日章学園高(宮崎)戦から始まるインターハイへ向けて、「凄い楽しいスケジュール。本当に一戦一戦全力でやって、ずっと『能登に笑顔を』というテーマでやっているんで、それを能登だけでなく石川県全体に笑顔や勇気を与えられるプレーを。今日みたいに一生懸命ファイトしてやり続けるところを見せ続けたい。そのためには勝つしかないなと」と語った。
竹内も「笑顔を届けること」を誓った。「組み合わせ見ても強い高校と当たりますし、常にチャレンジャーで。(でも、)自分たちがやるべきことを全力でやれば勝てると思うんで、全力で立ち向かっていきたいと思います。何か月間も苦しい思いしてきたんで、その分も全部ぶつけて、もう一回、石川県に笑顔を届けられるよう頑張ります」と力を込めた。1試合1試合、挑戦者として全力でファイト。どこにも負けない気持ちの強さ、ファイトし続ける力で初のインターハイを戦い抜く。
(取材・文 吉田太郎)
能登、石川県全体に「笑顔や勇気を」。鵬学園が茨城県遠征で初のインターハイに繋がる好ファイトだ。14日、「第1回神栖ワールドユースフットボール」(茨城県神栖市)で地元・茨城の明秀日立高と鵬学園高(石川)が対戦。1-1で引き分けた。
鵬学園は後半ラストプレーの失点でドロー。だが、赤地信彦監督は、「大満足です。やれるところとやれないところがはっきりした」と前向きに捉えていた。今年1月の能登半島地震の影響で未だ自分たちの練習場は使用できず、40、50分を掛けて移動してトレーニングを行う日々。今回は公式戦後にそのまま長距離移動して「第1回神栖ワールドユースフットボール」に参加し、他地域の強豪校との戦いで課題と収穫を得た。
序盤から互いに突破、奪い返しを繰り返す激しい攻防戦に。鵬学園は欠かせない存在のCB竹中健之助(3年)が賢く、的確なカバーリングを続け、先発起用されたCB刀祢杏蒔(1年)も健闘を見せる。
鵬学園CB竹中健之助は的確な動きでチームを支えた
序盤、相手にFKから決定打を打たれたが、GK山本裕樹(3年)が好反応でストップ。逆にMF亀山日々葵(3年)のスルーパスなどから先制点を狙うと、14分にはMF猪谷悠太(3年)の強引な中央突破からMF和田陸(3年)が決定的な左足シュートを放つ。だが、明秀日立GK重松陽(3年)が距離を詰めて身体で止めた。
明秀日立はインターハイ予選決勝で敗れて全国連覇こそ逃したものの、関東高校大会で準優勝するなど今年も強力な陣容。CB菅野一葵(3年)が能力の高さを活かして守っていたほか、巧みなターンとフェイントで相手をかわすMF柴田健成(3年)や技巧派MF阿部巧実(3年)がボールを前進させる。そして、前線ではFW竹花龍生主将(3年)が怖さを見せていた。
だが、予選決勝で名門・星稜高を破ってインターハイ初出場を決めている鵬学園は、球際の攻防でファイト。「(予選後)リーグ戦でも勝ち切れない試合とかが続いて、悪い流れもあったんですけど、昨日(プリンスリーグの前期最終戦)で一回もう吹っ切れて、『もう一回、全国大会に向けて、いい雰囲気作っていこう』と」とMF竹内孝誠主将(3年)が説明したように、鵬学園は気持ちを切り替えて臨んだ一戦で好ゲームを演じた。
負傷離脱から戻ってきた竹内がひたむきにボールを回収し続け、MF能勢翼(3年)も球際の強さを発揮して攻撃に結びつける。加えて、前線でFW山田春斗(3年)が力強いポストプレーや突破力を見せていたほか、左サイドではSB水沼凛心(3年)のサポートを受けて和田が攻撃力を発揮。DFと入れ替わってクロスまで持ち込み、右サイドではチームの信頼厚いSB生駒晟司(3年)が落ち着いてマイボールの時間を増やしていく。
鵬学園FW山田春斗は前線で存在感のある動き
迎えた後半開始直後、鵬学園が先制する。竹内の回収によって連続攻撃。右サイドから猪谷がクロスを上げると、ニアの山田がそらす。最後はファーの能勢が豪快な右足ダイレクトボレーでゴールへ突き刺した。
後半開始直後、鵬学園MF能勢翼が先制ゴール
祝福に応える
明秀日立も直後に右サイドを抜け出した柴田の右足シュートがゴールを捉えるが、鵬学園GK山田がセーブ。逆に後半、落ち着いてボールを保持できるようになった鵬学園は相手背後を突いた攻撃から和田が1度、2度とチャンスを迎える。
鵬学園右SB生駒晟司は落ち着いた攻守
だが、仕留めることができず、明秀日立も22分にショートコーナーの流れから竹花の放った左足シュートがポストをヒット。鵬学園は大きな声を掛け合いながら試合を締めようとしたが、明秀日立はラストプレーでMF滝川翔太(3年)が右から中へ運んでクロスを上げる。DF、GKの間へ落ちたボールに柴田が身体を投げ出して触り、1-1。現在、3年生30人と2年生2人によるAチームの構成でより結束した、より強いチームを目指しているという明秀日立が意地を見せた。
後半22分、明秀日立MF竹花龍生主将の左足シュートがポストをヒット
後半ラストプレー、明秀日立MF柴田健成が同点ゴール
劇的ゴールで引き分けに持ち込んだ
鵬学園は最後に課題が出たが、去年のインターハイ王者相手に自信となる戦い。彼らは震災後、チームメートと離れ離れになる日々や受け入れてくれた富山県での約2か月間の集団生活を経験したことでタフで、結束力の非常に強いチームになってきているという。赤地監督は「まずはサッカーできるのがありがたいっていう感じでみんな。それを支えてくれる方々がいたんで、感謝するために自分に甘えられないなって。あと、ずっと離れ離れになっていたから仲間の大切さを知れたし、戻って来た時の友情が強いです」と頷く。
また、竹内は「練習時間とか短かったんですけど、その分、質が高くやれましたし、(大きな被害を受けた能登や)石川県に対する思いも強かったので。今年は背負ってるものが違っていた」。地元にはまだまだ苦しい経験をしている人たちが大勢いる。その人たちや、今回の関東遠征など貴重な経験をさせてくれている人たちのためにも全国大会を戦う。
赤地監督は日章学園高(宮崎)戦から始まるインターハイへ向けて、「凄い楽しいスケジュール。本当に一戦一戦全力でやって、ずっと『能登に笑顔を』というテーマでやっているんで、それを能登だけでなく石川県全体に笑顔や勇気を与えられるプレーを。今日みたいに一生懸命ファイトしてやり続けるところを見せ続けたい。そのためには勝つしかないなと」と語った。
竹内も「笑顔を届けること」を誓った。「組み合わせ見ても強い高校と当たりますし、常にチャレンジャーで。(でも、)自分たちがやるべきことを全力でやれば勝てると思うんで、全力で立ち向かっていきたいと思います。何か月間も苦しい思いしてきたんで、その分も全部ぶつけて、もう一回、石川県に笑顔を届けられるよう頑張ります」と力を込めた。1試合1試合、挑戦者として全力でファイト。どこにも負けない気持ちの強さ、ファイトし続ける力で初のインターハイを戦い抜く。
鵬学園はインターハイで能登、石川県全体に「笑顔や勇気を」届ける
(取材・文 吉田太郎)