[プリンスリーグ関東1部]9戦未勝利の前期から積み上げた桐生一がセット2発とタフな守りで後期3勝目。選手権予選へ弾みの1勝
[10.12 プリンスリーグ関東1部第16節 桐生一高 2-1 鹿島学園高 太田市運動公園サッカー・ラグビー場]
桐生一がプリンス関東1部残留、選手権へ向けて弾みの1勝――。高円宮杯 JFA U-18サッカープリンスリーグ 2024 関東1部は12日、第16節1日目を行い、9位・桐生一高(群馬)と7位・鹿島学園高(茨城)が対戦。桐生一がFW高裕徳(1年)と交代出場FW佐藤能之(3年)のゴールによって2-1で勝った。
ともに選手権予選前のリーグ最終戦。ホームの桐生一は前期の2分7敗から後期はここまで2勝3敗と徐々に巻き返してきている。この日の先発はGK上杉海晴主将(3年)、DFは右から長尾弥裕(2年)、三好偉月(3年)、原田琉煌(3年)、新山稜翔(2年)の4バック、中盤は谷口諒治(3年)、小林昂立(3年)、山田康太(3年)、原島謙伍(2年)、高、最前線に吉田有我(3年)が入った。
一方の鹿島学園は後期1勝に留まっているが、Jクラブユース相手でも渡り合うなど前向きな試合内容。この日は注目DF齊藤空人(2年)が累積警告によって出場停止で、先発はGK佐藤稜亮(3年)、右から文平千陽(3年)、畠田凉聖(3年)、中川光星(2年)、清水朔玖(2年)の4バック、中盤は主将の濱口聖(3年)と西川大翔(2年)、山入端琉海(3年)、伊藤蒼空(2年)の4人で構成し、2トップを山本葵(3年)と渡部隼翔(2年)が務めた。
その鹿島学園はいずれもボールの収まる山本と渡部、山入端、伊藤が高い位置で起点に。濱口、西川も回収力を発揮して攻撃に結びつけるなど重心を上げて試合を進める。11分には、右SB文平のインターセプトから一気に速攻。山入端とのパス交換からクロスを上げ、こぼれ球を西川が狙う。16分にも右サイドからパスを正確に繋ぎ、山本の右足シュートがゴールを襲った。
対する桐生一は8分、長短のパスを繰り出す原田のロングフィードから、DFと入れ替わった吉田が左足シュート。14分にはカウンターから原島がドリブルでシュートにまで持ち込む。1年生FW高がトップ下の位置でボールを引き出し、小林の展開などを交えてサイド攻撃。そして、エースMF山田が縦突破からのクロスやシュートへ持ち込んだ。
鹿島学園のダイナミックな攻守に押し込まれ、普段通りにボールを繋げなかったことは確か。それでも、原田、三好が相手の攻撃を跳ね返し、谷口が奪い返しで健闘するなど0-0で試合を進める。すると38分、桐生一は相手ビルドアップのミスを誘い、左CKを獲得。これを長尾が右足で入れ、ニアの山田が頭で合わせる。鹿島学園GK佐藤やDF陣がゴールライン際で死守するも、こぼれ球を高が頭で先制ゴールを決めた。
中村裕幸監督が「(先発起用の理由は)点数取らなきゃ勝てない。1番点数取るには、その力がアイツにあるんで。やっぱ持ってんなと思いました」と初先発させた1年生FW高が期待に応えて桐生一がリード。鹿島学園は山本のヘッドなどで反撃するが、桐生一はゴール前に入ってきた相手にしつこくプレッシャーを掛けるなど自由を与えず、1-0で前半を折り返した。
後半、桐生一はMF篠宮宇加(3年)をボランチへ入れ、谷口をCBへ。7分には吉田を佐藤と入れ替えた。後半開始直後、セットプレー後の混戦から鹿島学園FW渡部に決定的なシュートを打たれたほか、相手の人数を掛けたサイド攻撃を受ける展開に。だが、桐生一は谷口や攻撃的な左SB新山が集中した守りを続ける。
また、高がセカンドボール回収から前進したほか、全体的にボールを保持しながらDF間を取るシーンが増加。12分には原島が左サイドを破り、クロスがファーの山田へ通るシーンもあった。だが、鹿島学園は17分に渡部、伊藤を長期離脱から復帰の10番MF松本金太朗(2年)とMF中原瀬那(1年)へ入れ替えると、ファーストプレーで松本がFKを獲得する。キッカーの清水は右中間、PAギリギリの位置からのFKで右足シュートを選択。これがニアサイドを射抜き、1-1となった。
勢いづいた鹿島学園は右の大型SB文平を活用した攻撃に加え、左SB清水もゴール前に潜り込んでくるなど厚みのある攻撃。だが、桐生一はここで踏ん張り、逆に山田の仕掛けや長尾、篠宮のミドルシュートで相手ゴールを脅かす。
ともに190cm級の畠田、中川光の両CBや注目GK佐藤ら鹿島学園ディフェンス陣の壁は厚かったものの、桐生一は再びセットプレーでゴールをこじ開けた。33分、長尾の右CKから、ファーで相手DFとの駆け引きを制した佐藤がヘディングシュート。「ちょっと(ナイター照明の)ライトであんま見えてなかったんですけど、来てるのは分かってたんで、頭出したら当たって嬉しかったです」という背番号9の一撃がゴールを破った。
桐生一は前期9試合でわずか3得点。それでも、「練習でもやってるんですけど、とにかくクロスにしっかり入っていく」(佐藤)というところから積み重ねてきたことが、得点数の増加にも繋がっているという。この日の後半は特長の一つである左サイドからの攻撃も少しずつ改善。追いつかれた後に再びゴールをこじ開けた。
DFリーダーの原田は、「(自分たちにも責任があるが、)守備してる自分たちからすると、『自分たちこんな身体張ってゴール守ってるのになんで決めないんだよ』っていう話もしたこともありました。キャプテン(GK上杉)とかもいい刺激をくれて。このままじゃ選手権も勝てないし、プリンス残留なんて言ってる場合じゃないなって思って話し合いをした中で、後期臨んで、栃木SC戦で4点取れたり、この試合も2-1で勝てたのは攻撃陣が成長してくれたおかげ」と感謝する。
この後、鹿島学園はMF木下永愛(2年)とFW中川輝琉(3年)、FW内海心太郎(1年)を投入。桐生一もFW田中翔太(3年)を加えると、DF岩崎零(3年)を送り出して3バックで守りを固める。鹿島学園は文平や右サイドへ移った山本がクロス。また、ロングボールを前線へ入れるが、桐生一は抜群の高さを示した186cmDF原田やGK上杉が立ちはだかる。そのまま2-1で勝利。中村監督は「選手権に向かう最後のゲームとしては最高。(前期の)2分7敗が3勝3敗ならば上出来ですよ」と微笑んでいた。
桐生一は2月の県新人戦決勝で宿敵・前橋育英高に2-1で勝利。だが、インターハイ予選は準々決勝で常磐高に競り負けた。シーズン前半はプリンスリーグ関東1部でも苦戦を強いられたが、得点力、粘り強い守備の成長とともに少しずつ勝ち切れるチームへ進化。残留を争う鹿島学園戦の勝利は残り3試合のリーグ戦、選手権へ向けても大きい。ただし、中村監督は「守りの時間を減らしたいチームなので」と語り、どの相手でもボールを保持する時間を長くすること、1本の決定機を決め切る力も求めていた。
目標は打倒・前橋育英、群馬制覇、そして過去最高成績の全国8強超えだ。原田は「自分たちは選手権で前橋育英に勝って、全国大会に出て、今までの桐生第一高校の歴史の中での 1番高いベスト8っていう壁を乗り越えようって思っているので、歴史を塗り替えれたらいいなって思っています」と語り、佐藤は「全国でベスト8を超えるっていう目標でやっている。(個人としては)ゴールを取るっていうのももちろんなんですけど、チームを勢いづけられるようなプレーやコーチングを見せていけたらいいと思っています」。この日、スタンドのチームメートの後押しを受けて勝利。全員で白星を喜んだ桐生一が、次は選手権予選で2013年度以来となる全国切符獲得に挑む。
(取材・文 吉田太郎)
●高円宮杯プリンスリーグ2024特集
桐生一がプリンス関東1部残留、選手権へ向けて弾みの1勝――。高円宮杯 JFA U-18サッカープリンスリーグ 2024 関東1部は12日、第16節1日目を行い、9位・桐生一高(群馬)と7位・鹿島学園高(茨城)が対戦。桐生一がFW高裕徳(1年)と交代出場FW佐藤能之(3年)のゴールによって2-1で勝った。
ともに選手権予選前のリーグ最終戦。ホームの桐生一は前期の2分7敗から後期はここまで2勝3敗と徐々に巻き返してきている。この日の先発はGK上杉海晴主将(3年)、DFは右から長尾弥裕(2年)、三好偉月(3年)、原田琉煌(3年)、新山稜翔(2年)の4バック、中盤は谷口諒治(3年)、小林昂立(3年)、山田康太(3年)、原島謙伍(2年)、高、最前線に吉田有我(3年)が入った。
一方の鹿島学園は後期1勝に留まっているが、Jクラブユース相手でも渡り合うなど前向きな試合内容。この日は注目DF齊藤空人(2年)が累積警告によって出場停止で、先発はGK佐藤稜亮(3年)、右から文平千陽(3年)、畠田凉聖(3年)、中川光星(2年)、清水朔玖(2年)の4バック、中盤は主将の濱口聖(3年)と西川大翔(2年)、山入端琉海(3年)、伊藤蒼空(2年)の4人で構成し、2トップを山本葵(3年)と渡部隼翔(2年)が務めた。
ナイター照明の下で行われた高体連対決
その鹿島学園はいずれもボールの収まる山本と渡部、山入端、伊藤が高い位置で起点に。濱口、西川も回収力を発揮して攻撃に結びつけるなど重心を上げて試合を進める。11分には、右SB文平のインターセプトから一気に速攻。山入端とのパス交換からクロスを上げ、こぼれ球を西川が狙う。16分にも右サイドからパスを正確に繋ぎ、山本の右足シュートがゴールを襲った。
鹿島学園はFW山本葵らが押し返した
鹿島学園のMF西川大翔がセカンドボールを回収する
対する桐生一は8分、長短のパスを繰り出す原田のロングフィードから、DFと入れ替わった吉田が左足シュート。14分にはカウンターから原島がドリブルでシュートにまで持ち込む。1年生FW高がトップ下の位置でボールを引き出し、小林の展開などを交えてサイド攻撃。そして、エースMF山田が縦突破からのクロスやシュートへ持ち込んだ。
桐生一MF小林昂立は展開力を発揮
鹿島学園のダイナミックな攻守に押し込まれ、普段通りにボールを繋げなかったことは確か。それでも、原田、三好が相手の攻撃を跳ね返し、谷口が奪い返しで健闘するなど0-0で試合を進める。すると38分、桐生一は相手ビルドアップのミスを誘い、左CKを獲得。これを長尾が右足で入れ、ニアの山田が頭で合わせる。鹿島学園GK佐藤やDF陣がゴールライン際で死守するも、こぼれ球を高が頭で先制ゴールを決めた。
前半38分、桐生一の1年生FW高裕徳が先制ゴール
FW高裕徳(15番)がスタンドの祝福に応える
中村裕幸監督が「(先発起用の理由は)点数取らなきゃ勝てない。1番点数取るには、その力がアイツにあるんで。やっぱ持ってんなと思いました」と初先発させた1年生FW高が期待に応えて桐生一がリード。鹿島学園は山本のヘッドなどで反撃するが、桐生一はゴール前に入ってきた相手にしつこくプレッシャーを掛けるなど自由を与えず、1-0で前半を折り返した。
後半、桐生一はMF篠宮宇加(3年)をボランチへ入れ、谷口をCBへ。7分には吉田を佐藤と入れ替えた。後半開始直後、セットプレー後の混戦から鹿島学園FW渡部に決定的なシュートを打たれたほか、相手の人数を掛けたサイド攻撃を受ける展開に。だが、桐生一は谷口や攻撃的な左SB新山が集中した守りを続ける。
桐生一のMF谷口諒治はCBでも守備能力の高さを発揮
また、高がセカンドボール回収から前進したほか、全体的にボールを保持しながらDF間を取るシーンが増加。12分には原島が左サイドを破り、クロスがファーの山田へ通るシーンもあった。だが、鹿島学園は17分に渡部、伊藤を長期離脱から復帰の10番MF松本金太朗(2年)とMF中原瀬那(1年)へ入れ替えると、ファーストプレーで松本がFKを獲得する。キッカーの清水は右中間、PAギリギリの位置からのFKで右足シュートを選択。これがニアサイドを射抜き、1-1となった。
後半19分、鹿島学園左SB清水朔玖が右足FKを決めて同点
DF清水朔玖を中心に歓喜の輪が広がった
勢いづいた鹿島学園は右の大型SB文平を活用した攻撃に加え、左SB清水もゴール前に潜り込んでくるなど厚みのある攻撃。だが、桐生一はここで踏ん張り、逆に山田の仕掛けや長尾、篠宮のミドルシュートで相手ゴールを脅かす。
桐生一のエースMF山田康太は突破力を発揮
ともに190cm級の畠田、中川光の両CBや注目GK佐藤ら鹿島学園ディフェンス陣の壁は厚かったものの、桐生一は再びセットプレーでゴールをこじ開けた。33分、長尾の右CKから、ファーで相手DFとの駆け引きを制した佐藤がヘディングシュート。「ちょっと(ナイター照明の)ライトであんま見えてなかったんですけど、来てるのは分かってたんで、頭出したら当たって嬉しかったです」という背番号9の一撃がゴールを破った。
後半33分、桐生一FW佐藤能之が決勝ヘッド
交代出場のFWが今季2点目のゴール
桐生一は前期9試合でわずか3得点。それでも、「練習でもやってるんですけど、とにかくクロスにしっかり入っていく」(佐藤)というところから積み重ねてきたことが、得点数の増加にも繋がっているという。この日の後半は特長の一つである左サイドからの攻撃も少しずつ改善。追いつかれた後に再びゴールをこじ開けた。
DFリーダーの原田は、「(自分たちにも責任があるが、)守備してる自分たちからすると、『自分たちこんな身体張ってゴール守ってるのになんで決めないんだよ』っていう話もしたこともありました。キャプテン(GK上杉)とかもいい刺激をくれて。このままじゃ選手権も勝てないし、プリンス残留なんて言ってる場合じゃないなって思って話し合いをした中で、後期臨んで、栃木SC戦で4点取れたり、この試合も2-1で勝てたのは攻撃陣が成長してくれたおかげ」と感謝する。
この後、鹿島学園はMF木下永愛(2年)とFW中川輝琉(3年)、FW内海心太郎(1年)を投入。桐生一もFW田中翔太(3年)を加えると、DF岩崎零(3年)を送り出して3バックで守りを固める。鹿島学園は文平や右サイドへ移った山本がクロス。また、ロングボールを前線へ入れるが、桐生一は抜群の高さを示した186cmDF原田やGK上杉が立ちはだかる。そのまま2-1で勝利。中村監督は「選手権に向かう最後のゲームとしては最高。(前期の)2分7敗が3勝3敗ならば上出来ですよ」と微笑んでいた。
勝利の瞬間、桐生一GK上杉海晴主将が喜びを爆発させた
桐生一は2月の県新人戦決勝で宿敵・前橋育英高に2-1で勝利。だが、インターハイ予選は準々決勝で常磐高に競り負けた。シーズン前半はプリンスリーグ関東1部でも苦戦を強いられたが、得点力、粘り強い守備の成長とともに少しずつ勝ち切れるチームへ進化。残留を争う鹿島学園戦の勝利は残り3試合のリーグ戦、選手権へ向けても大きい。ただし、中村監督は「守りの時間を減らしたいチームなので」と語り、どの相手でもボールを保持する時間を長くすること、1本の決定機を決め切る力も求めていた。
目標は打倒・前橋育英、群馬制覇、そして過去最高成績の全国8強超えだ。原田は「自分たちは選手権で前橋育英に勝って、全国大会に出て、今までの桐生第一高校の歴史の中での 1番高いベスト8っていう壁を乗り越えようって思っているので、歴史を塗り替えれたらいいなって思っています」と語り、佐藤は「全国でベスト8を超えるっていう目標でやっている。(個人としては)ゴールを取るっていうのももちろんなんですけど、チームを勢いづけられるようなプレーやコーチングを見せていけたらいいと思っています」。この日、スタンドのチームメートの後押しを受けて勝利。全員で白星を喜んだ桐生一が、次は選手権予選で2013年度以来となる全国切符獲得に挑む。
(取材・文 吉田太郎)
●高円宮杯プリンスリーグ2024特集