トップチームのキャンプ“落選”は這い上がるための格好のエネルギー。FC東京U-18MF田中希和は「逆転昇格」を目指してとにかくゴールを奪い続ける
[2.2 東京都CY U-17選手権決勝L FC東京U-18 3-0 FCトリプレッタユース 東京ガス武蔵野苑多目的G]
とにかく誰にも負けたくないし、負けるつもりもない。自信はある。でも、それを結果に繋げない限りは評価を得られないことも、十分過ぎるほどにわかっている。だから、こだわる。自分のゴールにも、チームの勝利にも。その上で、圧倒的な力を示し続けてやる。
「今年は去年よりも責任感は強く持っていますし、自分がチームで一番点を獲らないといけないなと思っています」。
圧倒的なアグレッシブさを全身から放っている、2025年のFC東京U-18のエース候補。MF田中希和(2年=FC東京U-15むさし出身)は新年早々に突き付けられた悔しさを糧に、ここから這い上がっていく覚悟をはっきりと定めている。
「正直メッチャ悔し過ぎて、気持ちが落ち込んだところはありました」。
今シーズンのチームにとって、初の公式戦となった東京都クラブユースサッカーU-17選手権決勝リーグのFCトリプレッタユース戦。前日までトップチームの沖縄キャンプに参加していた選手たちが欠場する一戦のピッチに、田中はスタメンの1人として立っていた。
2年生だった昨シーズンは飛躍の1年だった。5月に入ってリーグ戦でも先発で出場する機会が増えていくと、「プレミアでも出場する時間を多く与えてもらったので、2年生だったんですけど、『自分中心でやってやる』という気持ちを強く持っていました」と振り返るように、積極的なプレー選択で攻撃に確かな彩りを加えていく。
その活躍は代表スタッフの目にも留まり、9月には『国際ユースサッカーin新潟』に臨むU-17日本代表に選出されると、大会では3試合すべてでゴールを記録し、しっかりアピールに成功。11月のクロアチア遠征にも続けて招集され、同年代のトップレベルの選手たちから小さくない刺激を受けてきた。
「世代別代表にも入れて、試合にも出たことで、『全然代表でもやっていけるな』と感じましたし、自信を掴むことができました。ただ、そこで勘違いせず、プレミアでも結果を出したかったんですけど、その自信をなかなか反映できなかったです」。プレミアリーグ後半戦はゴールにこそ恵まれなかったものの、1年間を通じて着実に成長した手応えは、間違いなく掴んでいた。
だからこそ、ショックは大きかった。1月に行われたFC東京のトップチームの沖縄キャンプ。U-18からも複数人の選手が参加のタイミングを分散しながら招集されたにも関わらず、田中には最後まで声が掛からなかった。
「『呼ばれるかな』とは思っていましたね……」。現在地を突き付けられる格好になったが、悔しさを味わうだけで終わるようなメンタリティは持ち合わせていない。根っからの負けず嫌いに、燃え盛るような火が点いてしまう。
「もう落ち込んでいる暇なんてないので、本当にプレーで、プレミアリーグの結果で見返したいですね。もうすぐ進路は決まりますし、自分はトップチームに上がることしか考えていないので、もっとやっていかないといけないなと思います」。


いわばこの日の試合は“リスタート”の90分間。前線に入ったFW江口海渡(2年)の少し下、1.5列目に近いポジションを取りながら、ピッチを幅広く動き回り、攻撃のポイントを作るべく奔走する。
輝きを放ったのは1点をリードしていた後半25分。右サイドバックのDF藤森登也(2年)がドリブルで縦へ運ぶと、一瞬で潜るべきスペースを見極めて、スルーパスを引き出してみせる。
「あそこは今日もずっと狙っていましたし、マイナスが空いていて、江口が声を出してくれたので、アシストできて良かったなという感じです。いつでもゴールの近くに行きたいので、そういうところは意識しています」。
いわゆる“ポケット”を攻略。右サイドから田中がマイナスに折り返したボールを、江口は確実にゴールネットへ流し込み、自身2点目となる得点をゲット。一仕事を果たした38番にも笑顔が灯る。
ただ、それだけで満足するわけにはいかない。チームは3-0と初陣を白星で飾ったものの、田中自身に得点はなし。「今日は自分がチームをまとめていかないといけない中で、結果というところは意識していたんですけど、ゴールを決められなかったので、最後の質も含めて結果にもっとこだわって、そこでチームを引っ張っていかないといけないと思います」。とにかく結果を出し続けるために、ひたすら日常を積み上げていく。
チームを率いる佐藤由紀彦監督も、田中の現状については期待を込めて、こう評している。「彼は非常に強気なメンタリティが魅力なので、それをより伸ばすというか、(キャンプに呼ばれなかった)悔しさをプレーに反映させるところは、我々の役目になるのかなという気がします。もっと賢く相手が怖いポジションに入っていくとか、相手が嫌がることをできるようになればとは思いますけど、彼も腑に落ちなければ動きにくいと思いますし、我々が押し付けてもダメですし、そこで双方の理解が合致した時には、彼の本領が発揮されると信じています」。
極めて強気な性格は風貌にも滲み出ている。あるスタッフによれば「アイツには“昭和の男”感がありますね(笑)」とのこと。ただ、そのスタッフが続けた言葉が興味深い。「意外とみんなが気付いていないような荷物を、サラッと1人で持っていってくれるようなところもあるんですよ」。
確かにこの日の試合後の田中も、最後に残ったテントを数人で倉庫へと運び、ダッシュでチームメイトが待つ“集合”へと戻ってきていた。そのことについて本人に水を向けると、「そういうこともプレーに繋がるとはずっと思っているので、自分のサッカー面が良くなるためにも、そういう日ごろからの積み重ねは昔から大事にしています」と照れ笑い。つまりは、そういう男なのだ。
2025年はアカデミーの集大成となる1年間。トップチームへの“逆転昇格”を勝ち獲るためにも、意識するのは結果一択。それがチームの勝利にも繋がると信じて、とにかくゴールを目指し続ける。
「自分はパスもシュートもドリブルも得意なんですけど、去年もチームで一番点を獲れたわけではなかったですし、もう1つ飛び抜けた武器を持たないと、トップには上がれないと思います」。
「今年の目標としては佐藤龍之介選手(FC東京から岡山へ期限付き移籍中)のように、攻撃も守備もどっちもアグレッシブに行ける選手になりたいなと思っています。チームで出したい結果はもちろんプレミア優勝とクラブユースの優勝で、その中で自分はリーグで一番点を獲りたいと思っています。15点以上は獲りたいですね」。
過去のことを振り返っても仕方ない。プレースタイル同様に、視線を向ける先は、いつだって前へ、前へ。漢気あふれるFC東京U-18のギラギラ系アタッカー。田中希和は出し続ける明確な結果で、自らの望んだ未来へと続いているはずの扉を、力強くこじ開けていく。


(取材・文 土屋雅史)
とにかく誰にも負けたくないし、負けるつもりもない。自信はある。でも、それを結果に繋げない限りは評価を得られないことも、十分過ぎるほどにわかっている。だから、こだわる。自分のゴールにも、チームの勝利にも。その上で、圧倒的な力を示し続けてやる。
「今年は去年よりも責任感は強く持っていますし、自分がチームで一番点を獲らないといけないなと思っています」。
圧倒的なアグレッシブさを全身から放っている、2025年のFC東京U-18のエース候補。MF田中希和(2年=FC東京U-15むさし出身)は新年早々に突き付けられた悔しさを糧に、ここから這い上がっていく覚悟をはっきりと定めている。
「正直メッチャ悔し過ぎて、気持ちが落ち込んだところはありました」。
今シーズンのチームにとって、初の公式戦となった東京都クラブユースサッカーU-17選手権決勝リーグのFCトリプレッタユース戦。前日までトップチームの沖縄キャンプに参加していた選手たちが欠場する一戦のピッチに、田中はスタメンの1人として立っていた。
2年生だった昨シーズンは飛躍の1年だった。5月に入ってリーグ戦でも先発で出場する機会が増えていくと、「プレミアでも出場する時間を多く与えてもらったので、2年生だったんですけど、『自分中心でやってやる』という気持ちを強く持っていました」と振り返るように、積極的なプレー選択で攻撃に確かな彩りを加えていく。
その活躍は代表スタッフの目にも留まり、9月には『国際ユースサッカーin新潟』に臨むU-17日本代表に選出されると、大会では3試合すべてでゴールを記録し、しっかりアピールに成功。11月のクロアチア遠征にも続けて招集され、同年代のトップレベルの選手たちから小さくない刺激を受けてきた。
「世代別代表にも入れて、試合にも出たことで、『全然代表でもやっていけるな』と感じましたし、自信を掴むことができました。ただ、そこで勘違いせず、プレミアでも結果を出したかったんですけど、その自信をなかなか反映できなかったです」。プレミアリーグ後半戦はゴールにこそ恵まれなかったものの、1年間を通じて着実に成長した手応えは、間違いなく掴んでいた。
だからこそ、ショックは大きかった。1月に行われたFC東京のトップチームの沖縄キャンプ。U-18からも複数人の選手が参加のタイミングを分散しながら招集されたにも関わらず、田中には最後まで声が掛からなかった。
「『呼ばれるかな』とは思っていましたね……」。現在地を突き付けられる格好になったが、悔しさを味わうだけで終わるようなメンタリティは持ち合わせていない。根っからの負けず嫌いに、燃え盛るような火が点いてしまう。
「もう落ち込んでいる暇なんてないので、本当にプレーで、プレミアリーグの結果で見返したいですね。もうすぐ進路は決まりますし、自分はトップチームに上がることしか考えていないので、もっとやっていかないといけないなと思います」。


いわばこの日の試合は“リスタート”の90分間。前線に入ったFW江口海渡(2年)の少し下、1.5列目に近いポジションを取りながら、ピッチを幅広く動き回り、攻撃のポイントを作るべく奔走する。
輝きを放ったのは1点をリードしていた後半25分。右サイドバックのDF藤森登也(2年)がドリブルで縦へ運ぶと、一瞬で潜るべきスペースを見極めて、スルーパスを引き出してみせる。
「あそこは今日もずっと狙っていましたし、マイナスが空いていて、江口が声を出してくれたので、アシストできて良かったなという感じです。いつでもゴールの近くに行きたいので、そういうところは意識しています」。
いわゆる“ポケット”を攻略。右サイドから田中がマイナスに折り返したボールを、江口は確実にゴールネットへ流し込み、自身2点目となる得点をゲット。一仕事を果たした38番にも笑顔が灯る。
ただ、それだけで満足するわけにはいかない。チームは3-0と初陣を白星で飾ったものの、田中自身に得点はなし。「今日は自分がチームをまとめていかないといけない中で、結果というところは意識していたんですけど、ゴールを決められなかったので、最後の質も含めて結果にもっとこだわって、そこでチームを引っ張っていかないといけないと思います」。とにかく結果を出し続けるために、ひたすら日常を積み上げていく。
チームを率いる佐藤由紀彦監督も、田中の現状については期待を込めて、こう評している。「彼は非常に強気なメンタリティが魅力なので、それをより伸ばすというか、(キャンプに呼ばれなかった)悔しさをプレーに反映させるところは、我々の役目になるのかなという気がします。もっと賢く相手が怖いポジションに入っていくとか、相手が嫌がることをできるようになればとは思いますけど、彼も腑に落ちなければ動きにくいと思いますし、我々が押し付けてもダメですし、そこで双方の理解が合致した時には、彼の本領が発揮されると信じています」。
極めて強気な性格は風貌にも滲み出ている。あるスタッフによれば「アイツには“昭和の男”感がありますね(笑)」とのこと。ただ、そのスタッフが続けた言葉が興味深い。「意外とみんなが気付いていないような荷物を、サラッと1人で持っていってくれるようなところもあるんですよ」。
確かにこの日の試合後の田中も、最後に残ったテントを数人で倉庫へと運び、ダッシュでチームメイトが待つ“集合”へと戻ってきていた。そのことについて本人に水を向けると、「そういうこともプレーに繋がるとはずっと思っているので、自分のサッカー面が良くなるためにも、そういう日ごろからの積み重ねは昔から大事にしています」と照れ笑い。つまりは、そういう男なのだ。
2025年はアカデミーの集大成となる1年間。トップチームへの“逆転昇格”を勝ち獲るためにも、意識するのは結果一択。それがチームの勝利にも繋がると信じて、とにかくゴールを目指し続ける。
「自分はパスもシュートもドリブルも得意なんですけど、去年もチームで一番点を獲れたわけではなかったですし、もう1つ飛び抜けた武器を持たないと、トップには上がれないと思います」。
「今年の目標としては佐藤龍之介選手(FC東京から岡山へ期限付き移籍中)のように、攻撃も守備もどっちもアグレッシブに行ける選手になりたいなと思っています。チームで出したい結果はもちろんプレミア優勝とクラブユースの優勝で、その中で自分はリーグで一番点を獲りたいと思っています。15点以上は獲りたいですね」。
過去のことを振り返っても仕方ない。プレースタイル同様に、視線を向ける先は、いつだって前へ、前へ。漢気あふれるFC東京U-18のギラギラ系アタッカー。田中希和は出し続ける明確な結果で、自らの望んだ未来へと続いているはずの扉を、力強くこじ開けていく。


(取材・文 土屋雅史)