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ビルドアップとゲームメイクに特徴を持つ異才系サイドバック。横浜FCユースDF佃颯太が明確にイメージする自身の未来予想図

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横浜FCユース不動の左サイドバック、DF佃颯太(2年=横浜FCジュニアユース出身)

[2.16 神奈川県CYリーグカップ準決勝 湘南U-18 4-3 横浜FCユース 横浜FC・LEOCトレーニングセンター]

 本気でできると信じているから、はっきりと口に出す。根拠のない自信ではない。何となくのイメージで語る手応えではない。高いレベルを突き付けられ、それでも自分ならより高みを目指せると実感しているから、大きな目標を掲げていく。それが輝く未来へ繋がると願って。

「個人の数字としてはプレミアで10ゴール、二桁得点を目標にしています。簡単な目標ではないですし、チームもディフェンディングチャンピオンということもあって、警戒される立場ではあると思うんですけど、それに打ち勝ってこそ本当のチャンピオンなので、全員で頑張っていきたいです」。

 プレミアリーグEAST連覇を狙う横浜FCユース(神奈川)が誇る不動の左サイドバック。DF佃颯太(2年=横浜FCジュニアユース出身)は自身に小さくないプレッシャーを掛けた上で、それを乗り越えるための戦いへ、楽しみながら飛び込んでいく。


「始まって最初の15分で3失点というのが響いたなと。追い付くことはできましたけど、無失点に抑えていれば3-0で勝っていた試合なので、最初の15分で決まったかなという印象です」。

 佃は終わったばかりの試合を厳しい口調で振り返る。神奈川県クラブユースサッカーリーグカップ準決勝。湘南ベルマーレU-18と対峙した一戦は、いきなり15分までに3失点を献上。横浜FCユースも前半のうちに同点までは持っていったものの、後半にオウンゴールで決勝点を与え、3-4で敗戦。ややイージーミスの目立つ悔しい80分間を強いられた。

 個人としてはチームの1点目を得意のオーバーラップから演出する。時間を作ったMF岩崎亮佑(2年)の外側を回り、左から中央へ正確に折り返して、MF秋元颯太(2年)のゴールをアシスト。「中の状況を確認したらマイナスのところが空いていて、秋元と目が合ったので、冷静に流し込む感じでした」という一連に実力の一端を覗かせる。

 ただ、この時期とはいっても4失点を喫しての黒星は間違いなく反省材料。「去年は自分たちの学年の選手が多く出ていましたけど、そんなことは本当に関係なく、またイチからチームを作っていかないと絶対に厳しい戦いになると思うので、この負けを良い成長に繋げられるように、プレミアに向けて良い準備をしたいと思います」。そう話しながら、気を引き締め直すような佃の表情も印象的だった。



 この冬にはさらなる成長を求められるような、貴重な経験を積む機会が相次いだ。まずはトップチームの宮崎キャンプに1週間帯同。「強度の部分だったり、質、スピードと1個1個のレベルの高さを感じたんですけど、自分の特徴のビルドアップとゲームメイクのところは、力を存分に発揮できたのかなと思います」と一定の手応えを掴むことに成功した。

 間近でプロの凄味を感じたのは、スペシャルなドリブラーだったという。「新井瑞希くんはドリブルの鋭さも決定力も練習ではずば抜けていて、『何でこの人がスタメンじゃないんだろう?』と思うぐらい凄かったです。優しい人だったので、ユースの選手にも声を掛けてくれましたし、吸収できる部分が多かったですね」。

 間違いなく視座は上がった。届きたい場所ではなく、届かなくてはいけない場所へ。「いち早くトップのピッチに立ってプレーしたいという意欲はさらに出ました。でも、まだまだ足りない部分が多いので、1日1日を無駄にせず、努力していけば自ずとそういった結果も出てくるのかなと思います」。体感した基準を身体に刻み、日常のトレーニングからたゆまぬ努力を続けていく。

 その後に参加したのは、世界切符を懸けた『AFC U20アジアカップ』を控えるU-20日本代表の国内事前キャンプ。佃はトレーニングパートナーに指名され、少し上の年代の選手たちと同じピッチでトレーニングする機会を得た。

「最初はレベルが高くて『怖いな……』と思っていたんですけど、良いパスが来るので自分もやりやすくて、力を発揮しやすかった印象です。みんな動き出しの質も、パスもシュートも質が高い中で、自分もそのレベルに付いていけていた気はするので、ああいったメンバーと常に競争し合っていきたいなと思いました」。

 自分の力が引き上げられる感覚を掴んだ一方で、同い年のGK荒木琉偉(G大阪ユース/2年)やニック・シュミット(ザンクトパウリU-19)は既に正規メンバーとして、この世代の代表入りを果たしている。

「そこはもう『悔しい』の一言ですね。自分が入っていかないといけない年代だと思うので、今は彼らが選ばれていますけど、アジアカップは優勝してもらって、ワールドカップのメンバーには自分が入っていけるように努力していきたいと思います。やっぱりシュートとクロスの精度が大きな差だと思ったので、結果が求められる世界だからこそ、そこにこだわっていきたいと思います」。

 トップチームとU-20日本代表という、2つの強烈なグループで今の自分の立ち位置をしっかりと見つめ直したからこそ、成長するためのポイントは明確過ぎるほど明確になった。求めるのは結果。わかりやすい数字に今季はよりこだわっていく。


 もともと強気な性格は、ピッチ上のプレーからも滲み出ている。改めてサッカー選手としての目標を尋ねると、力強い言葉が即答で返ってきた。

「バロンドールですね。チームの結果としてはチャンピオンズリーグで優勝したいので、そこで優勝できるようなチームに入って、コンスタントにスタメンで試合に出て、チャンピオンズリーグを獲るのが自分の一番の目標です」。

 本気でできると信じているから、はっきりと口に出す。根拠のない自信ではない。何となくのイメージで語る手応えではない。掲げる目標は誰のためでもなく、サッカー選手として自分が進んでいく道を、明るく照らしていく希望の光。横浜FCが育んできた異才。2025年の佃颯太からも、目が離せない。



(取材・文 土屋雅史)
土屋雅史
Text by 土屋雅史

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