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守備のマルチロールから右サイドのスペシャリストに。村上慶が目指す『右の司令塔』

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大津高のU-17日本高校選抜DF村上慶

 昨年、大津高(熊本1)の不動のCBであり、状況を見て左サイドバック(SB)でプレーするオプションを持っていたDF村上慶(2年)は今季、新たな居場所で活路を見出そうとしている。

「今年はCBにサイズのある松野(秀亮、185cm)と今井(獅温、187cm)がいるし、左にはスペシャリストの渡部(友翔)がいるので、SBをやるなら右だと思っていました。なので、今年はここで自分の力を磨いていきたいなと思っています」。大津は九州高校新人大会準々決勝で東福岡高(福岡1)にPK戦の末に敗れてしまったが、村上は右SBとして随所に高いパフォーマンスを見せていた。

「右はオープンでボールが持てるし、見える景色やできるプレーが広がるんです。左の時も全体を見るのですが、どちらかというと縦かカットインという選択肢になる。でも、右だと全体をよりじっくりと見ることが出来て、追い越したり、カットインしたりするだけではなく、ボランチラインに入ってゲームを組み立てやすいので、個人的にはやりやすいです」。こう口にするように、右SBは中学3年生の1年間プレーしていた場所であり、右利きの村上にとってはよりこれまで培ってきたものが発揮しやすいポジションだった。

 実際に東福岡戦はサイドでの守備の安定感に加え、クロスやクサビが入った後に中に絞ってセカンドボールを拾うと、軽やかなターンでプレスに来た相手を剥がして前を向いたり、CBからのパスを受けて持ち出してサイドチェンジや縦パスを狙ったりと、攻撃の起点となるプレーが目立った。

 182cmというサイズは、CBとしては昨年コンビを組んだ189cmDF五嶋夏生(3年/筑波大進学予定)や、同級生に比べると低く、プロの世界を見ても大型化が進んでいるポジションだ。もちろん、彼の能力ならCBとしての未来も明るいと思うが、SBの方が彼をより希少価値の高い選手へと昇華させていくのではないかと感じている。

 その理由として、彼は守備面では中にスライドをしてCBのタスクをこなすことができるし、逆サイドからのクロスに対して制空権を握ることができる。攻撃面では“偽SB”と呼ばれるようにボランチの働きをして、かつスピードもあることから、内からも外からでも湧き出してチャンスメークやフィニッシュワークまで行くことができる。それでいて両サイド共にできる。

 これだけのマルチタスクをこなせるサイズのあるSBは、高校年代ではなかなか見られない希少価値の高い存在と言えるだろう。いわば“熊本のカイル・ウォーカー”と呼ぶべきか。

 これだけのSBとしての特出した魅力があるからこそ、4バック、3バックのすべてのポジションをこなせるというユーティリティー性がより彼の価値を上げていることは間違いない。

「サイドからゲームを作れる選手になるのが今の僕の目標です。ビルドアップ、カウンターの起点、オーバーラップ、インナーラップなど、どんどん仕掛けてゲームの流れとチャンスを生み出す選手になる。そのための努力をしながら、将来は高卒プロ、大学も含めて自分に合った選択をしていきたいと思います」

 堅実な考え方を持ちながらも、その裏には激しい向上心がある。村上はこれまで培ってきた経験と大きな野望を持って、『右の攻守の司令塔』としての理想像を追い求める1年をスタートさせた。

(取材・文 安藤隆人)
安藤隆人
Text by 安藤隆人

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