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「ロス五輪への推薦状」第21回:J3で3戦連続途中出場中。圧倒的な加速力を備えたMF中野遥翔(沼津U-18)は武器を磨き上げ、沼津の新星から日本の新星へ

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静岡県ユース選抜のMF中野遥翔(沼津U-18/2年)は圧倒的な加速力を披露し、チャンスを創出

 2028年ロサンゼルス五輪まであと3年。ロサンゼルス五輪男子サッカー競技への出場資格を持つ2005年生まれ以降の「ロス五輪世代」において、年代別日本代表未招集の注目選手たちをユース取材ライターの森田将義記者がピックアップ

 持ち味は50mを6秒ジャストで走る俊足で、その速さは小学生の頃に市町村対抗の駅伝大会のメンバーに選ばれるほど。高校生になってからは武器であるスピードを突き詰めるため、瞬発力を高めるトレーニングを積み重ねた結果、最高時速もプロ基準の時速35kmまで到達した。静岡県ユース選抜の一員として挑んだ静岡県ヤングサッカーフェスティバルでも、他を凌駕する速さでU-17日本高校選抜相手にインパクトを残したのが、アスルクラロ沼津U-18のMF中野遥翔(2年)だ。

 ボールを持ったら一気にマックスまで上げる加速力が目を惹くが、ただ速いだけの選手ではない。利き足は右だが、左足でも起用にボールを扱うドリブルが彼の魅力でもある。小学生の頃から右サイドでプレーしてきたが、中学2年生頃から「左足でボールが持てればプレーの幅は広がる」と思い、左足でのプレーを意識し始めたという。

 世界を見てもカットインからゴールを狙うため右サイドには左利き、左サイドには右利きと逆足のアタッカーを置くチームが主流になっている。右利きの中野が右足だけでプレーすれば縦突破しかプレーの選択肢がなくなるが、左足で相手にボールを晒しながら仕掛けることでカットインの選択肢も生まれる。相手に中を仕掛けてくると思わせることができれば精神的にも優位な状況に立ち、相手に与えるドリブルの脅威は更に増していく。

 ヤングサッカーフェスティバルでは後半からピッチに立ち、ドリブルで再三決定機を作ったが、U-17日本高校選抜の堅守を崩し切れず無得点。「最後までやり切れなかったところが一番の反省点。最後のクロスを合わせるところもそうですし、自分でも行き切れなかった。良い場面もあったのですが、ボールの質が悪かった」と反省したが、練習中だというカットインからのシュートが更に良くなれば、より相手にとって怖い選手になるだろう。

 キレ味鋭いドリブルはトップチームでも評価され、去年9月には2種登録された。今年はシーズンが始まってからずっとトップチームに帯同を続け、ガイナーレ鳥取との開幕戦では途中出場でJリーグデビューを果たした。

「3対0の試合展開で入ったので気持ち的にも焦らずリラックスして入ることができ、通用するなという印象はあったのですが、技術や体力面は足りないと感じました」。本人はそう口にするが、続く第2節の松本山雅FC戦でも試合終盤に出場。ヤングサッカーフェスティバルの前日に行なわれたアウェイの栃木シティ戦でもピッチに立つなどチームの期待値は大きい。
 
 一足早いプロでの経験は中野の刺激になっている。同じウイングにはフル代表の経験を持つFW齋藤学が在籍。「学さんからはえぐった時にどこを見るのか、どういうボールが通るのかを教えてもらっています。学さんはいろいろ経験してきている分、たくさん教えてもらっています」。6歳上で同じ右サイドでプレーするMF森夢真もお手本となる存在で、右足で上手く相手にボールを晒しながら繰り出すドリブルを参考にしているという。

 180cm近い身長もサイズが求められる現代サッカーに適している。現在は県選抜止まりだが、今のプレーを続けることができれば世代別代表やロス五輪も見えてくるだろう。中野自身も先のステージを見据えており、「海外や日本代表でプレーするのが一番の目標。そこで活躍するのが一番大切だと思うのでトップの世界でやりたい」と意欲十分。沼津の新星から日本の新星になる日にもそう遠くない。

(取材・文 森田将義)
森田将義
Text by 森田将義

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