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[MOM5057]鳥栖U-18FW山村チーディ賢斗(3年)_チームを牽引する自覚を携えた9番の覚醒!ストライカーらしいゴールと90分間走り抜く献身性で勝利を引き寄せる!

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サガン鳥栖U-18FW山村チーディ賢斗(3年=サガン鳥栖U-15出身)がチーム3点目をゲット!

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[4.12 プレミアリーグWEST第2節 鳥栖U-18 3-0 静岡学園 佐賀市健康運動センターサッカー・ラグビー場]

 この背番号を託されたからには、もう覚悟を決めるしかない。求められるものも、求めるものも、より明確になった。とにかく神経を研ぎ澄ませ、獲物を捕らえる瞬間を見極めたら、迷っている暇はない。あとはもうなりふり構わず飛び込んでいく。そこに歓喜が待っていると信じて。

「今までだったらたぶん突っ込んでいなかったですし、先週もそういう場面で突っ込めなくてゴールを決められないシーンが多かったこともあって、『今週は絶対突っ込んでやる』と思っていたので、そこで決め切れたのはだいぶ大きなことだったと思います」。

 サガン鳥栖U-18(佐賀)の9番を背負う、ダイナミックストライカー。FW山村チーディ賢斗(3年=サガン鳥栖U-15出身)がきっちり叩き出したゴールと90分間走り切った献身性が、待望のシーズン初白星を挙げたチームの中でキラリと輝いた。


 開幕戦での敗戦を受け、ホームでの勝利を誓って迎えたプレミアリーグWEST第2節。静岡学園高(静岡)との一戦は、「最初の方は結構攻めている時間帯があったんですけど、そこで1点決め切れたのが大きかったと思います」と山村も振り返ったように、鳥栖U-18が勢い良く立ち上がると、前半18分にMF加藤孝一朗(2年)がスーパーミドルをゴールネットへ突き刺し、幸先良く先制する。

 前半の山村が際立ったのは、ボールキープとポストワークだ。「クリアに対しては自分が収めて、時間も作れたので良かったかなと思います」。アバウトなボールも巧みに収めつつ、味方へと的確に繋ぐことで、攻撃の活性化に貢献。ただ、最初の45分間で自身にチャンスはなかなか巡ってこない。

 ようやく決定機を迎えたのは、2点をリードした後半20分。DF鈴木颯真(2年)の素晴らしいフィードを完璧なトラップでコントロールし、右から中に切れ込んで放ったシュートは、しかし枠を捉え切れず。9番は思わず頭を抱えてしまう。

 それでも、諦める選択肢なんて存在しない。名誉挽回のチャンスがやってきたのは、わずかに1分後。21分。DF原口幸之助(3年)のスルーパスにFW下田優太(3年)が右サイドを抜け出すと、飛び込んでいくべきスペースがはっきりと目の前に広がる。

「練習通りの形でウイングまでボールが入って、『ワンタッチで来るかな』と思っていたので、いったんファーに入ってマーカーを剥がして、ニアに入ろうかなと。“最短距離”みたいな感じをイメージしていました」。下田のグラウンダークロスに全力で突っ込み、ワンタッチで当てたボールは、鮮やかにゴールネットを揺らす。

「今までの自分のゴールは個で決めてきた感があったんですけど、今日はチームとして良い形で決められたので、そこが良かったです」。チームでデザインした形のフィニッシュを自ら仕留めたからこそ、喜びも倍増する。殊勲のストライカーに笑顔で駆け寄るチームメイト。「いやあ、あれは気持ち良かったですね」。みんなで得点の歓喜を分かち合えたことが、とにかく嬉しかった。

 さらに見逃せないのは、終盤まで怠らなかったハイプレスとスプリントだ。技術の高い相手のビルドアップにもきっちり食らい付き、味方のクリアボールも懸命に追い掛ける。

「3年生になって、チームを引っ張っていく立場になったので、走る部分でも弱さを見せないように頑張ろうと思っていました。最後は攣っちゃいましたね(笑)」。本人はそう笑ったが、スタメンのサイドハーフとフォワードの中では唯一のフル出場。3-0というスコアでタイムアップのホイッスルが鳴ると、充実した表情を浮かべていたのが印象的だった。


 昨シーズンは苦悩の1年だった。プレミアでも開幕から5試合で2ゴールをマークし、一時はスタメンを勝ち獲った時期もあったが、夏のクラブユース選手権でグロインペインを発症して長期離脱。ようやく復帰のめどが立ったタイミングで、今度はヒザを負傷してしまい、結局後半戦を丸々棒に振ってしまう。

「最初の3か月とかはまだ大丈夫だったんですけど、ヒザをもう1回やっちゃって離脱が長引いたことで、ちょっとメンタルに来ました。でも、特に同級生のみんなが頑張っている姿が刺激になりましたし、『へこんでいる暇はないな』と思って、リハビリも前向きにやりました。自分はもともとフィジカルが武器だったので、さらにそこを伸ばすために体幹のところとか、上半身の筋トレに力を入れてやっていました」。

 新シーズンのトレーニングが始まってからも、しばらくは部分合流という状況も続いたが、プレミア開幕まで2週間を切ったあたりからは、少しずつコンディションも向上し、オープニングマッチはスタメンに指名されると、90分間フル出場。この日も最後までピッチに立ち続けたように、試練の日々を経て、メンタルとフィジカルの部分も一段階引き上げられた様子が窺える。

 “同級生”の活躍も意識していないわけがない。FW新川志音(3年)は既にJ2でもジョーカー的な役割で公式戦の出場を重ね、YBCルヴァンカップの松本山雅FC戦ではDF黒木雄也(3年)がスタメンで登場し、MF東口藍太郎(3年)も延長から出場を果たしているだけに、山村も対抗心を隠さない。

「自分はまだトップで試合に出ていないので、今は悔しい気持ちが大きいですけど、結果を残し続ければトップに呼ばれるチャンスもあるはずですし、そこに呼ばれたタイミングでしっかり結果を残せるように、日ごろの練習に人一倍こだわって、ケガでできなかった時間も取り戻そうと思っています」。

 今季から任されている背番号の意味は、もちろん十分によくわかっている。「小学校の時も9番で、中3の時も最初は9番だったので、『今年も9番かな?』と思ったら予想通りでした。9番は自分に似合っているかなって(笑)」

 今年は誰よりも走って、誰よりも点を獲ってやる。鳥栖U-18を前線で牽引する背番号9のライトハウス。アカデミーラストイヤーに臨む、クラブ希望の大器。山村チーディ賢斗はゴールのにおいを嗅ぎ分けながら、勝負すべきポイントに全力で飛び込み続ける。



(取材・文 土屋雅史)

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土屋雅史
Text by 土屋雅史

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