[MOM5058]名古屋U-18FW大西利都_「新ポジション」「新11番」「新ヘアスタイル」。絶賛バージョンアップ中のスピードスターが決勝点でエースの仕事完遂!

11番を背負った
[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[4.13 プレミアリーグWEST第2節 福岡U-18 1-2 名古屋U-18 福岡フットボールセンター]
もう自分が勝敗の責任を担うべきエースだという自覚は、十分すぎるほどに持ち合わせている。どれだけ調子が悪くても、どれだけシュートを外しても、やめない。諦めない。次こそは決まると、自分がヒーローになると言い聞かせて、ひたすらゴールを狙い続ける。
「去年は杉浦駿吾くんもいて、自分はゴールを獲らせてもらっているような立場だったんですけど、今年はちゃんと自分の力でゴールを獲ったり、周囲に獲らせることもやらないといけないなって。よりプレッシャーも感じている中で、自分がチームを勝たせたいという想いは去年より何倍も増しています」。
開幕連勝を飾った名古屋グランパスU-18(愛知)が誇る、絶対的ストライカー。FW大西利都(3年=名古屋グランパスU-15出身)が終盤にきっちり奪い切った決勝点は、まさにエースの仕事にふさわしい完璧な仕事だったと言っていいだろう。
「去年はフォワードで点を獲るのが仕事でしたけど、今年はシャドーというポジションも含めていろいろなことに挑戦しているところです」。本人もそう話すように、今季の大西は開幕から2試合続けて1トップのFW伊藤ケン(3年)の少し後方に入り、MF小島蒼斗(2年)と並ぶ2シャドーの一角としてスタメン起用されている。
「足元の技術やポジション取りで求められることも、周囲を360度見なきゃいけないということも、今までのフォワードと大きく違う部分で、そこは監督からも要求されているので、自分も日ごろから意識してそこに取り組んでいます」。まだ慣れない部分もあるが、自身の幅もより広げるチャンス。ポジティブに新たなポジションと向き合う姿勢に、確かな向上心が滲む。
ただ、肝心のゴールが付いてこない。ガンバ大阪ユース(大阪)と対峙した開幕戦は、3本のシュートを打って無得点。この日のアビスパ福岡U-18(福岡)と激突したアウェイゲームも、伊藤の交代後は最前線に移り、後半32分、35分と続けてチャンスが巡ってきたものの、フィニッシュは枠を捉え切れず。「2,3本ぐらい決定機を外しちゃって、味方からも『オマエなら行ける』と言われていたんですけど、正直ちょっと気持ち的に落ちていたところはありましたね」。エースは追い込まれていた。
最終盤の38分。名古屋U-18のカウンターが発動。MF八色真人(3年)がドリブルで運んでいた時に、もう駆け引きは始まっていた。「真人がボールを持った時は自分に良いパスが来るのはわかっていますし、いつもの練習からイメージも共有できていて、タイミングもいつも合っているので、真人を信じて走ったら良いところに来ました」。相手の最終ラインの背後へ斜めに走り出すと、完璧なスルーパスが足元へ届く。
GKとの1対1。一瞬であらゆる可能性が頭を駆け巡る。「ニアに蹴るか、ファーに蹴るか、上か下かも迷ったんですけど、コースが空いているのが見えたので、流し込んだ感じでした」。選択したのはニア下のコースへのグラウンダーシュート。ボールは誰にも邪魔されずに、ゴールネットへゆっくりとたどり着く。
咆哮。絶叫。気付けばサポーターの元へ走り出していた。「本当に泣きそうになりました。今までなかなかゴールを決められなくて、チームに貢献できていなかったんですけど、サポーターからも味方からも信じてもらっているのは感じていたので、その信頼に応えられたのが一番嬉しかったです」。この一撃が決勝点となって、チームは2-1で逆転勝利。2連勝の主役をさらったエースにも、大きな笑顔が弾けた。
3月に開催された『第30回船橋招待U-18サッカー大会』の時から、大西のひときわ短く刈り込まれた髪型が印象的だった。昨年までとはイメージを一変させるような“坊主頭”について本人に尋ねると、こんな答えが返ってくる。
「時期的にちょっとケガもあったりして、自分的にも『気合いを入れないといけないな』と思っていて、そこで覚悟を決めて、友だちに刈ってもらいました。今までちょっとカッコつけた髪型をしていたので(笑)、ここまで短いのは初めてです」。心機一転。ヘアスタイルもポジションも新しくなり、絶賛バージョンアップ中だ。
昨シーズンはプレミアWESTで14ゴールを記録。名和田我空(神村学園→G大阪)に杉浦と並んで得点ランキング3位に入り、その活躍が認められて9月と11月にはU-17日本代表の活動にも招集されるなど、飛躍のシーズンとなった。
背番号も2年時の13番から、11番へと変わっている。「本当は9番も良かったですけど、“ジャンケン”みたいな感じで負けました。まあ、(野中祐吾に)譲ったという感じですね。でも、11番も似合っているんじゃないかなと。中3の時も11番だったので、気に入っているところもありますし、カッコいいなと思っています」。
名古屋の11番と言えば玉田圭司や佐藤寿人を筆頭に、トップチームを牽引した点取り屋が背負ってきた番号。このクラブでフォワードを務める選手にとって、重要な番号であることに変わりはない。
これからのキャリアを考える上でも、最重要と言っていいアカデミーラストイヤー。勝負の1年に向けて、高いモチベーションに満ちあふれている。「チームとしてはプレミアで優勝して、ファイナルでも優勝して、クラブユースも獲るというのがチームの目標ですけど、個人としては自分のゴールはもちろん、ディフェンスの部分でも、キャプテンシーの部分でもみんなを引っ張って、チームを勝たせられないとダメだということは3年生になって感じたので、そこは本当に頑張っていきたいと思います」。
獲れるものは、すべて獲る。目の前の1試合でゴールを獲り続け、チームで掲げたタイトルも獲り尽くす。名古屋U-18の11番を託されたスピードスター。一度走り出してしまった大西利都は、そう簡単に止められない。
(取材・文 土屋雅史)
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[4.13 プレミアリーグWEST第2節 福岡U-18 1-2 名古屋U-18 福岡フットボールセンター]
もう自分が勝敗の責任を担うべきエースだという自覚は、十分すぎるほどに持ち合わせている。どれだけ調子が悪くても、どれだけシュートを外しても、やめない。諦めない。次こそは決まると、自分がヒーローになると言い聞かせて、ひたすらゴールを狙い続ける。
「去年は杉浦駿吾くんもいて、自分はゴールを獲らせてもらっているような立場だったんですけど、今年はちゃんと自分の力でゴールを獲ったり、周囲に獲らせることもやらないといけないなって。よりプレッシャーも感じている中で、自分がチームを勝たせたいという想いは去年より何倍も増しています」。
開幕連勝を飾った名古屋グランパスU-18(愛知)が誇る、絶対的ストライカー。FW大西利都(3年=名古屋グランパスU-15出身)が終盤にきっちり奪い切った決勝点は、まさにエースの仕事にふさわしい完璧な仕事だったと言っていいだろう。
「去年はフォワードで点を獲るのが仕事でしたけど、今年はシャドーというポジションも含めていろいろなことに挑戦しているところです」。本人もそう話すように、今季の大西は開幕から2試合続けて1トップのFW伊藤ケン(3年)の少し後方に入り、MF小島蒼斗(2年)と並ぶ2シャドーの一角としてスタメン起用されている。
「足元の技術やポジション取りで求められることも、周囲を360度見なきゃいけないということも、今までのフォワードと大きく違う部分で、そこは監督からも要求されているので、自分も日ごろから意識してそこに取り組んでいます」。まだ慣れない部分もあるが、自身の幅もより広げるチャンス。ポジティブに新たなポジションと向き合う姿勢に、確かな向上心が滲む。
ただ、肝心のゴールが付いてこない。ガンバ大阪ユース(大阪)と対峙した開幕戦は、3本のシュートを打って無得点。この日のアビスパ福岡U-18(福岡)と激突したアウェイゲームも、伊藤の交代後は最前線に移り、後半32分、35分と続けてチャンスが巡ってきたものの、フィニッシュは枠を捉え切れず。「2,3本ぐらい決定機を外しちゃって、味方からも『オマエなら行ける』と言われていたんですけど、正直ちょっと気持ち的に落ちていたところはありましたね」。エースは追い込まれていた。
最終盤の38分。名古屋U-18のカウンターが発動。MF八色真人(3年)がドリブルで運んでいた時に、もう駆け引きは始まっていた。「真人がボールを持った時は自分に良いパスが来るのはわかっていますし、いつもの練習からイメージも共有できていて、タイミングもいつも合っているので、真人を信じて走ったら良いところに来ました」。相手の最終ラインの背後へ斜めに走り出すと、完璧なスルーパスが足元へ届く。
GKとの1対1。一瞬であらゆる可能性が頭を駆け巡る。「ニアに蹴るか、ファーに蹴るか、上か下かも迷ったんですけど、コースが空いているのが見えたので、流し込んだ感じでした」。選択したのはニア下のコースへのグラウンダーシュート。ボールは誰にも邪魔されずに、ゴールネットへゆっくりとたどり着く。
咆哮。絶叫。気付けばサポーターの元へ走り出していた。「本当に泣きそうになりました。今までなかなかゴールを決められなくて、チームに貢献できていなかったんですけど、サポーターからも味方からも信じてもらっているのは感じていたので、その信頼に応えられたのが一番嬉しかったです」。この一撃が決勝点となって、チームは2-1で逆転勝利。2連勝の主役をさらったエースにも、大きな笑顔が弾けた。
3月に開催された『第30回船橋招待U-18サッカー大会』の時から、大西のひときわ短く刈り込まれた髪型が印象的だった。昨年までとはイメージを一変させるような“坊主頭”について本人に尋ねると、こんな答えが返ってくる。
「時期的にちょっとケガもあったりして、自分的にも『気合いを入れないといけないな』と思っていて、そこで覚悟を決めて、友だちに刈ってもらいました。今までちょっとカッコつけた髪型をしていたので(笑)、ここまで短いのは初めてです」。心機一転。ヘアスタイルもポジションも新しくなり、絶賛バージョンアップ中だ。
昨シーズンはプレミアWESTで14ゴールを記録。名和田我空(神村学園→G大阪)に杉浦と並んで得点ランキング3位に入り、その活躍が認められて9月と11月にはU-17日本代表の活動にも招集されるなど、飛躍のシーズンとなった。
背番号も2年時の13番から、11番へと変わっている。「本当は9番も良かったですけど、“ジャンケン”みたいな感じで負けました。まあ、(野中祐吾に)譲ったという感じですね。でも、11番も似合っているんじゃないかなと。中3の時も11番だったので、気に入っているところもありますし、カッコいいなと思っています」。
名古屋の11番と言えば玉田圭司や佐藤寿人を筆頭に、トップチームを牽引した点取り屋が背負ってきた番号。このクラブでフォワードを務める選手にとって、重要な番号であることに変わりはない。
これからのキャリアを考える上でも、最重要と言っていいアカデミーラストイヤー。勝負の1年に向けて、高いモチベーションに満ちあふれている。「チームとしてはプレミアで優勝して、ファイナルでも優勝して、クラブユースも獲るというのがチームの目標ですけど、個人としては自分のゴールはもちろん、ディフェンスの部分でも、キャプテンシーの部分でもみんなを引っ張って、チームを勝たせられないとダメだということは3年生になって感じたので、そこは本当に頑張っていきたいと思います」。
獲れるものは、すべて獲る。目の前の1試合でゴールを獲り続け、チームで掲げたタイトルも獲り尽くす。名古屋U-18の11番を託されたスピードスター。一度走り出してしまった大西利都は、そう簡単に止められない。
(取材・文 土屋雅史)
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