[MOM5083]柏U-18MF上野暉晏(2年)_名前の由来になった「Yes,We Can」は魔法の言葉。4戦ぶりスタメン復帰の右SBがプレミア初ゴールでチームに勝利と笑顔をもたらす!
[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[5.5 プレミアリーグEAST第6節 柏U-18 3-2 川崎F U-18 ゼロワットパワーフィールド柏]
どんなに苦しい状況でも、どんなに厳しい環境でも、いつだって自分に言い聞かせている。「オレならできる」「オレたちならできる」。確実に纏い始めている自信が、アグレッシブなプレーを後押ししてくれる。すべてはチームの勝利のために、限界まで走り切ってやる。
「去年はプレミアの登録もされなかったので、悔しい1年だったんですけど、今年はこうやって試合に絡めていることで、去年よりは自信が付いて、堂々とプレーできるようになったかなとは思います」。
チェンジしつつあるマインドにブレイクの雰囲気も漂う、柏レイソルU-18(千葉)の意気軒昂なサイドバック。MF上野暉晏(2年=柏レイソルU-15出身)が叩き出したプレミアリーグ初ゴールが、苦しむチームの勝点3獲得へ大きく貢献したことに疑いの余地はない。
プレミアリーグEAST第6節。開幕から無敗を続ける川崎フロンターレU-18(神奈川)をホームに迎えた重要な一戦。ここまで5試合を消化して1勝と、なかなか結果が伴わない中で、チームを率いる藤田優人監督は、スタートから上野を右サイドバックとしてピッチへ送り出す。
プレミア初スタメンを飾った第2節の浦和レッズユース戦では、左サイドバックでの起用となったが、2点をリードされた後半途中で交代を命じられ、チームが負ける姿をピッチの外から眺めることに。「レッズ戦は正直あまり良いプレーとは言い難いパフォーマンスだったんですけど、右の方が自分的にはやりやすいですし、そこで自分のプレーを見せて、絶対勝とうと思っていました」。気合は十分すぎるほどに入っていた。
前半から積極的な姿勢が際立つ。右サイドハーフに入ったFW巻渕彪悟(2年)との連携も上々。「普段からオフ・ザ・ピッチのところも含めて良い関係だと思っていたので、2人で気持ち良くプレーしてもらおうという意図で組ませました」という指揮官の狙い通りに、ホームチームの右サイドは推進力を生み出していく。
本人も自身のプレーに好感触を掴んでいたようだ。「今日の方がこの間より緊張もなく、良いプレーができましたね。センターバックから受けた時に、オープンに出すふりをして、中央に付けたりすることもできたので、冷静にプレーできたと思います」。チームの中にしっかり溶け込んでいる感覚も心地良い。


1-1で折り返した後半は、18分にFW加茂結斗(2年)のゴールで柏U-18が逆転に成功。さらに相手の決定機をGKノグチピント天飛(3年)がファインセーブで凌ぎ、1点をリードしたままで突入した終盤に、そのシーンは訪れる。
32分。右サイドから加茂が蹴り込んだCKにMF廣岡瑛太(3年)が競り合うと、こぼれたボールは上野の目の前に転がってくる。「今年は左サイドバックもやっていて、結構左足の練習もたくさんしてきて自信はあったので、『打つしかない』と思いましたし、『振ったら入る!』と思って振りました」。躊躇なく左足一閃。軌道は完璧なコースをたどって、左スミのゴールネットへ一直線に突き刺さる。
「前半から暉晏は右サイドでメチャメチャやれていましたけど、まさか決めるとは思っていなかったです。あれは神コースでしたね(笑)。自分もマジで嬉しかったです」(長南開史)「普段の暉晏はああいうシュートを打たないですし、しかも利き足とは逆足だったので、凄いなと思っています。驚きましたね」(加茂)「普段からそういう感覚は持っている子なので、あまりこちらも驚きはなかったです。良いゴールでしたね」(藤田監督)
全速力でピッチサイドへと走り出した背番号28へ、次々に笑顔のチームメイトたちが駆け寄ってくる。「試合は終わっていなかったので、引き締める気持ちはありましたけど、みんなが喜んでいる姿を見て、自分も笑顔になれて、とても嬉しかったです」。記念すべきプレミア初ゴールは貴重な追加点。最終盤に川崎F U-18に1点を返されたものの、そのまま逃げ切りに成功。結果的に上野が沈めたチーム3点目は決勝点ということになる。




「最後は絶対勝ちを掴み取るために、全員でしっかり守り切ろうと思いました。勝てていなかったチームを勝たせたというのは大事なことなので、これからも続けていきたいと思います」。柏U-18は3試合ぶりの白星を挙げ、試合後にはサポーターの前で挨拶する一幕も。今季2度目のスタメンで躍動した上野にも、大きな笑顔が弾けた。
1年生だった昨シーズンは、プレミアへの選手登録を果たせず、同級生の加茂やDF吉川晴翔たちの活躍を見つめる中で、悔しい気持ちを味わったが、その一方で「まずは身体づくりの面からやっていこうかなと、地道に努力してきました。今年は身体負けもそんなにする感じはないので、去年のトレーニングが生きているところはあるのかなと思います」と話すように、自身の課題と正面から向き合ってきた効果は間違いなく実感している。
浦和ユース戦は左、この日の川崎F U-18戦は右と、両サイドバックを高次元でこなせるのも貴重な持ち味。「自分はいろいろなポジションができるのが武器で、もともとフォワードもやっていたので、得点感覚はほかのサイドバックよりはあると思います」と口にするあたりも頼もしい。
オリジナリティのある名前は『暉晏=きあん』と読むが、その由来はなかなか興味深い。「自分が生まれたのが2009年なので、(その年に就任した)オバマ大統領が言った『Yes,We Can』という言葉から、『何でもできる子になってほしい』というイメージで、『Can』から『暉晏=きあん』という名前にしたそうです。自分でも気に入っています」。
ずっと切磋琢磨してきたこの頼れる仲間とともに戦うのならば、何だってできる気がする。「Yes,We Can」は魔法の言葉。上野暉晏はチームメイトと自分を信じて、ひたすらに真摯な日常を積み重ね、シーズンの最後に笑顔で「Yes,We Did」と言い切れる未来を、みんなで手繰り寄せる。


(取材・文 土屋雅史)
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[5.5 プレミアリーグEAST第6節 柏U-18 3-2 川崎F U-18 ゼロワットパワーフィールド柏]
どんなに苦しい状況でも、どんなに厳しい環境でも、いつだって自分に言い聞かせている。「オレならできる」「オレたちならできる」。確実に纏い始めている自信が、アグレッシブなプレーを後押ししてくれる。すべてはチームの勝利のために、限界まで走り切ってやる。
「去年はプレミアの登録もされなかったので、悔しい1年だったんですけど、今年はこうやって試合に絡めていることで、去年よりは自信が付いて、堂々とプレーできるようになったかなとは思います」。
チェンジしつつあるマインドにブレイクの雰囲気も漂う、柏レイソルU-18(千葉)の意気軒昂なサイドバック。MF上野暉晏(2年=柏レイソルU-15出身)が叩き出したプレミアリーグ初ゴールが、苦しむチームの勝点3獲得へ大きく貢献したことに疑いの余地はない。
プレミアリーグEAST第6節。開幕から無敗を続ける川崎フロンターレU-18(神奈川)をホームに迎えた重要な一戦。ここまで5試合を消化して1勝と、なかなか結果が伴わない中で、チームを率いる藤田優人監督は、スタートから上野を右サイドバックとしてピッチへ送り出す。
プレミア初スタメンを飾った第2節の浦和レッズユース戦では、左サイドバックでの起用となったが、2点をリードされた後半途中で交代を命じられ、チームが負ける姿をピッチの外から眺めることに。「レッズ戦は正直あまり良いプレーとは言い難いパフォーマンスだったんですけど、右の方が自分的にはやりやすいですし、そこで自分のプレーを見せて、絶対勝とうと思っていました」。気合は十分すぎるほどに入っていた。
前半から積極的な姿勢が際立つ。右サイドハーフに入ったFW巻渕彪悟(2年)との連携も上々。「普段からオフ・ザ・ピッチのところも含めて良い関係だと思っていたので、2人で気持ち良くプレーしてもらおうという意図で組ませました」という指揮官の狙い通りに、ホームチームの右サイドは推進力を生み出していく。
本人も自身のプレーに好感触を掴んでいたようだ。「今日の方がこの間より緊張もなく、良いプレーができましたね。センターバックから受けた時に、オープンに出すふりをして、中央に付けたりすることもできたので、冷静にプレーできたと思います」。チームの中にしっかり溶け込んでいる感覚も心地良い。


1-1で折り返した後半は、18分にFW加茂結斗(2年)のゴールで柏U-18が逆転に成功。さらに相手の決定機をGKノグチピント天飛(3年)がファインセーブで凌ぎ、1点をリードしたままで突入した終盤に、そのシーンは訪れる。
32分。右サイドから加茂が蹴り込んだCKにMF廣岡瑛太(3年)が競り合うと、こぼれたボールは上野の目の前に転がってくる。「今年は左サイドバックもやっていて、結構左足の練習もたくさんしてきて自信はあったので、『打つしかない』と思いましたし、『振ったら入る!』と思って振りました」。躊躇なく左足一閃。軌道は完璧なコースをたどって、左スミのゴールネットへ一直線に突き刺さる。
「前半から暉晏は右サイドでメチャメチャやれていましたけど、まさか決めるとは思っていなかったです。あれは神コースでしたね(笑)。自分もマジで嬉しかったです」(長南開史)「普段の暉晏はああいうシュートを打たないですし、しかも利き足とは逆足だったので、凄いなと思っています。驚きましたね」(加茂)「普段からそういう感覚は持っている子なので、あまりこちらも驚きはなかったです。良いゴールでしたね」(藤田監督)
全速力でピッチサイドへと走り出した背番号28へ、次々に笑顔のチームメイトたちが駆け寄ってくる。「試合は終わっていなかったので、引き締める気持ちはありましたけど、みんなが喜んでいる姿を見て、自分も笑顔になれて、とても嬉しかったです」。記念すべきプレミア初ゴールは貴重な追加点。最終盤に川崎F U-18に1点を返されたものの、そのまま逃げ切りに成功。結果的に上野が沈めたチーム3点目は決勝点ということになる。




「最後は絶対勝ちを掴み取るために、全員でしっかり守り切ろうと思いました。勝てていなかったチームを勝たせたというのは大事なことなので、これからも続けていきたいと思います」。柏U-18は3試合ぶりの白星を挙げ、試合後にはサポーターの前で挨拶する一幕も。今季2度目のスタメンで躍動した上野にも、大きな笑顔が弾けた。
1年生だった昨シーズンは、プレミアへの選手登録を果たせず、同級生の加茂やDF吉川晴翔たちの活躍を見つめる中で、悔しい気持ちを味わったが、その一方で「まずは身体づくりの面からやっていこうかなと、地道に努力してきました。今年は身体負けもそんなにする感じはないので、去年のトレーニングが生きているところはあるのかなと思います」と話すように、自身の課題と正面から向き合ってきた効果は間違いなく実感している。
浦和ユース戦は左、この日の川崎F U-18戦は右と、両サイドバックを高次元でこなせるのも貴重な持ち味。「自分はいろいろなポジションができるのが武器で、もともとフォワードもやっていたので、得点感覚はほかのサイドバックよりはあると思います」と口にするあたりも頼もしい。
オリジナリティのある名前は『暉晏=きあん』と読むが、その由来はなかなか興味深い。「自分が生まれたのが2009年なので、(その年に就任した)オバマ大統領が言った『Yes,We Can』という言葉から、『何でもできる子になってほしい』というイメージで、『Can』から『暉晏=きあん』という名前にしたそうです。自分でも気に入っています」。
ずっと切磋琢磨してきたこの頼れる仲間とともに戦うのならば、何だってできる気がする。「Yes,We Can」は魔法の言葉。上野暉晏はチームメイトと自分を信じて、ひたすらに真摯な日常を積み重ね、シーズンの最後に笑顔で「Yes,We Did」と言い切れる未来を、みんなで手繰り寄せる。


(取材・文 土屋雅史)
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