抜群の運動量と高精度の左足を兼ね備えた皐月の青空に映える1年生サイドバック。鹿島ユースMF岩土そらはさらなる成長の先で「日本や世界に自分の存在を広めていきたい」

[5.6 プレミアリーグEAST第6節 市立船橋高 0-1 鹿島ユース 船橋市法典公園(グラスポ) 球技場]
いてほしい時に、いてほしい場所にいる。的確に試合の流れを読む力は、数日前に16歳になったばかりとは思えない。そのうえ、90分間走り切れる運動量と、セットプレーを任される高精度のキックを備えているのだから、実に末恐ろしい。
「自分の武器はアグレッシブに行くことと、左足のキック精度だと思うので、どんどん攻撃参加して、左足のクロスだったりで得点に絡めたらいいなと思っていますし、自分の中ではチームでコツコツやってきたことで、今はプレミアに出られていると感じているので、ここからもコツコツやっていきたいと思います」。
年代別代表にも選出されている、鹿島アントラーズユース(茨城)の左サイドに現れた才気あふれるニューカマー。MF岩土そら(1年=鹿島アントラーズジュニアユース出身)はプレミアリーグでの試合経験を積み重ねることで、成長の階段を着実に、一歩ずつ、駆け上がっている。
「前半は相手のコートでずっとサッカーできていましたし、相手も5バックだったので、押し込めて点も獲れたのは良かったと思います」。最初の45分間の印象を問われた岩土は、冷静な口調でそう振り返る。市立船橋高(千葉)と対峙したアウェイゲーム。鹿島ユースは立ち上がりから相手を押し込み、21分にはFW吉田湊海(2年)のゴールで先制点を奪う。
リードする展開の中で、1年生の左サイドバックは自分の出来に納得がいっていなかった。「どちらかというと右サイドの方の攻撃が多かったので、自分としてはもうちょっと攻撃に参加して、自分の得意なクロスだったり、キックの精度を出していきたかったです」。改めて攻撃への意欲を携え直して、後半のピッチへと走り出す。
だが、相手が勢いを持って入ってきた流れを察知すると、すぐさま守備対応に注力。「後半は押し込まれる展開もあるだろうなというのはチームで共有していたので、あまり慌てることなく落ち着いてやれました」。自分の役割を整理して、戦況を見定めていく。
その危機回避能力が発揮されたのは、終盤の後半34分だ。右サイドから上げられたクロスにGKが飛び出すと、すぐさま向かったのはゴールカバー。リバウンドを市立船橋が拾い、あとは押し込むだけというこぼれ球にフォワードが突っ込んだものの、果敢に競り合った岩土は間一髪のタイミングで、ボールをラインの外へ弾き出す。
まだユースに昇格したばかりであり、プレミア出場もこれで4試合目だが、前述のシーンも含めた集中力の持続と、落ちない運動量は驚異的。「だいぶ慣れてきましたね。もともとボランチで運動量が求められるポジションではありましたし、開幕戦は結構プレースピードに慣れなかったですけど、トータルで4試合経験させてもらって、だいぶ90分戦うところに慣れてきました」。最後はウノゼロで勝ち切ったチームの中で、26番を背負った1年生サイドバックのハイパフォーマンスが、勝利の一翼を担ったことに疑いの余地はない。


ジュニアユース在籍時からU-15日本代表候補に選出されるなど、その実力は高く評価されていた中で、本人も「ユースの練習にもちょくちょく参加させてもらっていたので、『プレミアに出てやる』という目標はありました」と言い切るように、プレミア出場への意欲を滾らせていたが、FW高木瑛人(1年)やMF小笠原央(1年)がデビューした一方で、岩土には最後までその機会が訪れなかった。
「自分も県リーグの試合には出ていましたけど、瑛人とか央はプレミアに出ていましたし、特に央は同じポジションだったので、やっぱり『自分も出たかったな』という気持ちが強くありました」。
そんな同級生の活躍を横目に、コツコツと練習を積み重ねると、今季は本職のボランチではなく、左サイドバックで新境地を開拓。「シャルケの時の内田篤人選手の動画をよく見ていて、攻撃参加だったり、クロスの質を勉強させてもらっています」とクラブのレジェンドも参考に、ゲームメイクやビルドアップにも積極的に関わり、今やレギュラーの地位を掴みつつある。
4月にはU-16日本代表に招集され、フランスで行われた『モンデギュー国際大会』に参加。サイズの大きな海外の選手を相手に、自分の中で気付いた課題を見つめつつ、周囲からのアドバイスも糧に、大会期間中に自身のプレーのマイナーチェンジを図ったという。
「初戦はイングランド戦で、相手が大きくて、背負われた時に高い重心で取りに行って、ボールを取れなかったんですけど、信義さんとかいろいろなスタッフに『下からボールをつついていけ』と言われたので、メキシコ戦ではそれを意識したら、結構ボールも奪えて、得点も決められたので、モンテギューでは自分の中でも凄く良い経験ができたと思っています」。
今回の代表活動中は主に中盤アンカーを任された中で、チームを率いる小野信義監督も称賛するようなパフォーマンスを披露し、好アピールに成功。小さくない自信をフランスの地から持ち帰ってきたようだ。
穏やかな口調の中には、意志の強さも滲む。今季の抱負を訪ねると、頼もしい答えが返ってきた。「来年はアジアカップもあるので、そこのメンバーに選ばれるためにも、代表には継続して選ばれていきたいなと。ただ、選ばれるためには自チームでずっとやり続ける必要があると思うので、自分の良さでもある献身的に、チームのために戦えるところをもっとアピールしたいですし、自分はまだあまり知られていないと思うので、日本や世界に自分の存在を広めていきたいと思っています」。
皐月の青空に、その雄姿は良く映える。鹿島ユースにとって、欠かせない存在になりつつある新・左サイドバック。岩土そらは印象的な名前をもっと多くの人に知らしめるため、頭と身体をフル回転させて、より高いステージで戦う権利を堂々と手繰り寄せる。


(取材・文 土屋雅史)
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いてほしい時に、いてほしい場所にいる。的確に試合の流れを読む力は、数日前に16歳になったばかりとは思えない。そのうえ、90分間走り切れる運動量と、セットプレーを任される高精度のキックを備えているのだから、実に末恐ろしい。
「自分の武器はアグレッシブに行くことと、左足のキック精度だと思うので、どんどん攻撃参加して、左足のクロスだったりで得点に絡めたらいいなと思っていますし、自分の中ではチームでコツコツやってきたことで、今はプレミアに出られていると感じているので、ここからもコツコツやっていきたいと思います」。
年代別代表にも選出されている、鹿島アントラーズユース(茨城)の左サイドに現れた才気あふれるニューカマー。MF岩土そら(1年=鹿島アントラーズジュニアユース出身)はプレミアリーグでの試合経験を積み重ねることで、成長の階段を着実に、一歩ずつ、駆け上がっている。
「前半は相手のコートでずっとサッカーできていましたし、相手も5バックだったので、押し込めて点も獲れたのは良かったと思います」。最初の45分間の印象を問われた岩土は、冷静な口調でそう振り返る。市立船橋高(千葉)と対峙したアウェイゲーム。鹿島ユースは立ち上がりから相手を押し込み、21分にはFW吉田湊海(2年)のゴールで先制点を奪う。
リードする展開の中で、1年生の左サイドバックは自分の出来に納得がいっていなかった。「どちらかというと右サイドの方の攻撃が多かったので、自分としてはもうちょっと攻撃に参加して、自分の得意なクロスだったり、キックの精度を出していきたかったです」。改めて攻撃への意欲を携え直して、後半のピッチへと走り出す。
だが、相手が勢いを持って入ってきた流れを察知すると、すぐさま守備対応に注力。「後半は押し込まれる展開もあるだろうなというのはチームで共有していたので、あまり慌てることなく落ち着いてやれました」。自分の役割を整理して、戦況を見定めていく。
その危機回避能力が発揮されたのは、終盤の後半34分だ。右サイドから上げられたクロスにGKが飛び出すと、すぐさま向かったのはゴールカバー。リバウンドを市立船橋が拾い、あとは押し込むだけというこぼれ球にフォワードが突っ込んだものの、果敢に競り合った岩土は間一髪のタイミングで、ボールをラインの外へ弾き出す。
まだユースに昇格したばかりであり、プレミア出場もこれで4試合目だが、前述のシーンも含めた集中力の持続と、落ちない運動量は驚異的。「だいぶ慣れてきましたね。もともとボランチで運動量が求められるポジションではありましたし、開幕戦は結構プレースピードに慣れなかったですけど、トータルで4試合経験させてもらって、だいぶ90分戦うところに慣れてきました」。最後はウノゼロで勝ち切ったチームの中で、26番を背負った1年生サイドバックのハイパフォーマンスが、勝利の一翼を担ったことに疑いの余地はない。


ジュニアユース在籍時からU-15日本代表候補に選出されるなど、その実力は高く評価されていた中で、本人も「ユースの練習にもちょくちょく参加させてもらっていたので、『プレミアに出てやる』という目標はありました」と言い切るように、プレミア出場への意欲を滾らせていたが、FW高木瑛人(1年)やMF小笠原央(1年)がデビューした一方で、岩土には最後までその機会が訪れなかった。
「自分も県リーグの試合には出ていましたけど、瑛人とか央はプレミアに出ていましたし、特に央は同じポジションだったので、やっぱり『自分も出たかったな』という気持ちが強くありました」。
そんな同級生の活躍を横目に、コツコツと練習を積み重ねると、今季は本職のボランチではなく、左サイドバックで新境地を開拓。「シャルケの時の内田篤人選手の動画をよく見ていて、攻撃参加だったり、クロスの質を勉強させてもらっています」とクラブのレジェンドも参考に、ゲームメイクやビルドアップにも積極的に関わり、今やレギュラーの地位を掴みつつある。
4月にはU-16日本代表に招集され、フランスで行われた『モンデギュー国際大会』に参加。サイズの大きな海外の選手を相手に、自分の中で気付いた課題を見つめつつ、周囲からのアドバイスも糧に、大会期間中に自身のプレーのマイナーチェンジを図ったという。
「初戦はイングランド戦で、相手が大きくて、背負われた時に高い重心で取りに行って、ボールを取れなかったんですけど、信義さんとかいろいろなスタッフに『下からボールをつついていけ』と言われたので、メキシコ戦ではそれを意識したら、結構ボールも奪えて、得点も決められたので、モンテギューでは自分の中でも凄く良い経験ができたと思っています」。
今回の代表活動中は主に中盤アンカーを任された中で、チームを率いる小野信義監督も称賛するようなパフォーマンスを披露し、好アピールに成功。小さくない自信をフランスの地から持ち帰ってきたようだ。
穏やかな口調の中には、意志の強さも滲む。今季の抱負を訪ねると、頼もしい答えが返ってきた。「来年はアジアカップもあるので、そこのメンバーに選ばれるためにも、代表には継続して選ばれていきたいなと。ただ、選ばれるためには自チームでずっとやり続ける必要があると思うので、自分の良さでもある献身的に、チームのために戦えるところをもっとアピールしたいですし、自分はまだあまり知られていないと思うので、日本や世界に自分の存在を広めていきたいと思っています」。
皐月の青空に、その雄姿は良く映える。鹿島ユースにとって、欠かせない存在になりつつある新・左サイドバック。岩土そらは印象的な名前をもっと多くの人に知らしめるため、頭と身体をフル回転させて、より高いステージで戦う権利を堂々と手繰り寄せる。


(取材・文 土屋雅史)
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