90+2分、先制!90+2分、同点!90+6分、決勝点!神戸U-18がG大阪ユースとの超激闘を制して手繰り寄せた劇的勝利が持つ大きな価値

[5.17 プレミアリーグWEST第8節 神戸U-18 2-1 G大阪ユース いぶきの森球技場 Cグラウンド]
この一戦が重要な90分間になることは、試合前から十分に理解していた。追い掛けられる立場ではあるものの、追い掛ける側の心理もわかっているからこそ、ここで勝つことには大きな意味がある。泥臭くても、何度でも立ち上がる。追い込まれても、絶対に諦めない。貫いた姿勢は、最後の最後で特大の歓喜を連れてくる。
「もちろんどのゲームも大事なんですけど、今日はいろいろな意味でキーポイントになるゲームで、これが勝点1で終わるのと、勝点3で終わるのでは全然違いましたし、やっぱり勝つことが良いきっかけになって、チームがさらに良くなることを私自身も望んでいるので、そういう意味では大きな勝点3だったかなと思います」(神戸U-18・安部雄大監督)
アディショナルタイムに3点が入る、『ジェットコースターゲーム』はホームチームに軍配!17日、高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2024 WEST第8節で、首位のヴィッセル神戸U-18(兵庫)と4位のガンバ大阪ユース(大阪)が対峙した“関西ダービー”は、90+2分に両者が点を獲り合う展開の中、最後は90+6分にDF原蒼汰(3年)が決勝ゴールを沈めた神戸U-18が、執念で勝点3を手繰り寄せている。
「前半からボールを持って良い形でゴール前まで行けて、シュートも打てていましたし、良いゲームという印象でした」とFW久永虎次郎(3年)も話したように、先に好リズムを掴んだのはアウェイチーム。キャプテンのMF山本天翔(3年)を軸にしたやや可変気味のビルドアップから、久永がライン間に下りつつ、FW中積爲(3年)は裏を狙う“二段構え”で窺うチャンス。これには神戸U-18も「抜け出しを捨てるか捨てないか、下りていく選手に付いていって、もう1回ラインを上げるか、そういうところが難しかったです」とセンターバックの原も認める流れの中で、守備の時間が長くなっていく。
26分はG大阪ユース。カウンターから中央をMF藤本祥輝(1年)が持ち運び、左からMF當野泰生(3年)が枠へ収めたミドルは、神戸U-18GK胡云皓(2年)がファインセーブ。35分は神戸U-18。MF井内亮太朗(1年)を起点にDF西川亜郁(3年)のラストパスから、FW大西湊太(3年)が打ち切ったシュートはわずかにゴール左へ。
36分はG大阪ユース。MF村田康輔(2年)、中積と回ったボールを、FW武井遼太朗(3年)がニアへ打ち込むも、胡が再び好セーブ。「ガンバさんは凄く上手で、前半はずっとボールを持たれていて、みんなしんどかったと思います」と口にしたのは神戸U-18のMF里見汰福(1年)。それでもスコアは0-0のままで、最初の45分間は終了した。
後半も先に決定機を掴んだのはG大阪ユース。13分。左サイドを當野との連携で久永が抜け出し、マイナスの折り返しを當野が叩いたシュートは神戸U-18ディフェンスが身体で弾き、詰めた武井のシュートも胡が果敢にセーブ。粘り強く戦うホームチームも、原とDF寺岡佑真(3年)の両センターバックを中心に守備時の構え方が整理され、少しずつ良い形で攻撃へ移行できるシーンも増えていく。
21分は神戸U-18に絶好の先制機。西川が粘って残し、途中出場のFW森分圭吾(3年)が左へ流すと、MF瀬口大翔(3年)のシュートは右ポストにヒット。23分はG大阪ユースにビッグチャンス。山本のパスから武井が打ち切ったシュートは、こちらも右ポストに阻まれ、先制とはいかなかったものの、双方が打ち出すゴールへの強い意欲。
終盤に差し掛かっても、やり合う両雄。35分はG大阪ユース。GK荒木琉偉(3年)がボールキャッチから素早くスロー。山本の縦パスを中積が右へ展開し、受けたFW加藤倖太(3年)のシュートは右のサイドネット外側へ。36分は神戸U-18。寺岡が右へ振り分け、FW土井口立(2年)のグラウンダークロスはいったん流れたものの、瀬口の折り返しにニアで合わせた里見のヘディングはわずかに枠の左へ。まだスコアは動かない。
45+2分。とうとう均衡が破れる。胡のキックに森分が競り勝ち、MF上野颯太(2年)が右へ振り分けたボールを、土井口はここもグラウンダークロス。飛び込んだ森分のシュートがゴールネットをきっちり揺らす。「途中出場の土井口、森分がああいう形で活躍してくれたのは、チームにとっても良い刺激になると思います」(安部監督)。クリムゾンレッド、沸騰。1-0。神戸U-18が先制点を強奪する。
45+2分。アウェイチームは諦めていなかった。キックオフ直後の流れから、右サイドの村田が中央にフィードを蹴り込むと、前線に上がっていたDF横井佑弥(2年)はバイシクルでラストパス。飛び出した中積のシュートは、ゴール左スミへ転がり込む。「どうしても追い付かないといけない状況で、横井くんがうまく起点になってくれたので、ゴールを獲れたのは凄く良かったです」と話すストライカーの意地。1-1。G大阪ユースが追い付いてみせる。
45+6分。正真正銘のラストプレーは、MF片山航汰(3年)が粘って獲得した、ホームチームの右FK。“両足使い”のMF藤本陸玖(3年)が左足で流し込んだ軌道が、原の足元に入る。
「良いイメージができていた中で良いボールが来て、あとは感覚でしたね。足元に来て、トラップして、ふかすのが一番ダメなので、ゴロで打つイメージで蹴りました」。ボールがゴールネットへ収まるのを見届けると、背番号4のセンターバックは一目散にピッチサイドへと走り出す。クリムゾンレッド、絶叫。2-1。直後にタイムアップのホイッスルが吹き鳴らされる。
「天国から地獄に突き落とされて、感情が追い付かないですよね。あれで1-0で逃げ切るというケースは過去にも何度かありましたけど、追い付かれて、そこからもう一回跳ね返せたというのは素晴らしかったですし、選手たちも意地を見せられたのかなという感覚はあります」(安部監督)。入ったゴールはすべて後半アディショナルタイムという、最終盤に大きく揺れ動いた超激闘は、神戸U-18が逞しく勝ち切って、首位をキープする勝点3を積み上げる結果となった。




「1点目を獲った時にベンチもメッチャ喜んでいて、僕もメッチャ出ていったんです。でも、1分くらいで失点して、『え……、何が起こったん?』という感じやったんですけど(笑)、ラストワンプレーで原ちゃんが決めてくれて、助かりました」。里見が話してくれた言葉が、アディショナルタイムの6分間を過不足なく表現してくれる。
90+2分、先制。90+2分、同点。90+6分、決勝点。「追い付かれた時はホンマに『ヤバいな……』と。アディショナルタイムで1-1になって、『このまま終わるんじゃないか……』と思ったんですけど、フリーキックになった時には『これはワンチャンあるかな』と思っていました」と語ったのは、奇跡的なゴールを叩き出した原。最後まで諦めないメンタルと執念で呼び込んだ劇的な勝利が、2025年のターニングポイントとなる可能性は小さくないだろう。
さらに、この1勝にはさらなる価値がある。「今まで健斗がいない試合で帝長とか神村に4点獲られて負けているので、今日の試合はダービーやし、相手も上位やし、健斗もいなかったので、絶対に勝たないといけない試合でした」と里見が言及した通り、既にJ1デビューも果たしているMF濱崎健斗(3年)が出場した試合はここまで3戦全勝だったのに対し、出場のなかった帝京長岡高戦は1-4、神村学園高戦は0-4でともに大敗。今季の10番の“いる、いない”がダイレクトに勝敗へ与える影響を、選手たちは敏感に察知していたからこそ、濱崎が欠場した今節の試合の結果も、彼らにとってはとにかく重要だった。
「濱崎がボールを収めてくれたり、点を獲ってくれることが、みんなの頼りになっていることは間違いないと思います。でも、その半面で『オレも「健斗がいないとダメなのかよ」と思われるのは悔しいし、それはみんなも一緒だよな』と。『やっぱりそこはオレたちが向き合って、超えていかなきゃいけないところじゃないの?』という話をしました」という安部雄大監督の言葉を受けて、「健斗がいないと勝てないみたいな流れもチーム自体にあったので、ああやってみんなで最後に気持ちで押し込めて、みんなで勝てたのは良かったですね。その面ではチームも成長できたのかなと思います」とキャプテンの瀬口は胸を張る。
原が劇的なゴールを決めた瞬間、ピッチサイドで試合を見ていた濱崎は、飛び跳ねながらチームメイトたちが作った歓喜の輪へ向かって駆け出していった。エースの存在感の大きさはみんなが理解している。そのうえで、まさにチームの総力を結集して『健斗がいない試合』に勝ち切ったこの日のドラマチックな白星が、神戸U-18の一体感をより高めていくことも、また間違いなさそうだ。


(取材・文 土屋雅史)
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この一戦が重要な90分間になることは、試合前から十分に理解していた。追い掛けられる立場ではあるものの、追い掛ける側の心理もわかっているからこそ、ここで勝つことには大きな意味がある。泥臭くても、何度でも立ち上がる。追い込まれても、絶対に諦めない。貫いた姿勢は、最後の最後で特大の歓喜を連れてくる。
「もちろんどのゲームも大事なんですけど、今日はいろいろな意味でキーポイントになるゲームで、これが勝点1で終わるのと、勝点3で終わるのでは全然違いましたし、やっぱり勝つことが良いきっかけになって、チームがさらに良くなることを私自身も望んでいるので、そういう意味では大きな勝点3だったかなと思います」(神戸U-18・安部雄大監督)
アディショナルタイムに3点が入る、『ジェットコースターゲーム』はホームチームに軍配!17日、高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2024 WEST第8節で、首位のヴィッセル神戸U-18(兵庫)と4位のガンバ大阪ユース(大阪)が対峙した“関西ダービー”は、90+2分に両者が点を獲り合う展開の中、最後は90+6分にDF原蒼汰(3年)が決勝ゴールを沈めた神戸U-18が、執念で勝点3を手繰り寄せている。
「前半からボールを持って良い形でゴール前まで行けて、シュートも打てていましたし、良いゲームという印象でした」とFW久永虎次郎(3年)も話したように、先に好リズムを掴んだのはアウェイチーム。キャプテンのMF山本天翔(3年)を軸にしたやや可変気味のビルドアップから、久永がライン間に下りつつ、FW中積爲(3年)は裏を狙う“二段構え”で窺うチャンス。これには神戸U-18も「抜け出しを捨てるか捨てないか、下りていく選手に付いていって、もう1回ラインを上げるか、そういうところが難しかったです」とセンターバックの原も認める流れの中で、守備の時間が長くなっていく。
26分はG大阪ユース。カウンターから中央をMF藤本祥輝(1年)が持ち運び、左からMF當野泰生(3年)が枠へ収めたミドルは、神戸U-18GK胡云皓(2年)がファインセーブ。35分は神戸U-18。MF井内亮太朗(1年)を起点にDF西川亜郁(3年)のラストパスから、FW大西湊太(3年)が打ち切ったシュートはわずかにゴール左へ。
36分はG大阪ユース。MF村田康輔(2年)、中積と回ったボールを、FW武井遼太朗(3年)がニアへ打ち込むも、胡が再び好セーブ。「ガンバさんは凄く上手で、前半はずっとボールを持たれていて、みんなしんどかったと思います」と口にしたのは神戸U-18のMF里見汰福(1年)。それでもスコアは0-0のままで、最初の45分間は終了した。
後半も先に決定機を掴んだのはG大阪ユース。13分。左サイドを當野との連携で久永が抜け出し、マイナスの折り返しを當野が叩いたシュートは神戸U-18ディフェンスが身体で弾き、詰めた武井のシュートも胡が果敢にセーブ。粘り強く戦うホームチームも、原とDF寺岡佑真(3年)の両センターバックを中心に守備時の構え方が整理され、少しずつ良い形で攻撃へ移行できるシーンも増えていく。
21分は神戸U-18に絶好の先制機。西川が粘って残し、途中出場のFW森分圭吾(3年)が左へ流すと、MF瀬口大翔(3年)のシュートは右ポストにヒット。23分はG大阪ユースにビッグチャンス。山本のパスから武井が打ち切ったシュートは、こちらも右ポストに阻まれ、先制とはいかなかったものの、双方が打ち出すゴールへの強い意欲。
終盤に差し掛かっても、やり合う両雄。35分はG大阪ユース。GK荒木琉偉(3年)がボールキャッチから素早くスロー。山本の縦パスを中積が右へ展開し、受けたFW加藤倖太(3年)のシュートは右のサイドネット外側へ。36分は神戸U-18。寺岡が右へ振り分け、FW土井口立(2年)のグラウンダークロスはいったん流れたものの、瀬口の折り返しにニアで合わせた里見のヘディングはわずかに枠の左へ。まだスコアは動かない。
45+2分。とうとう均衡が破れる。胡のキックに森分が競り勝ち、MF上野颯太(2年)が右へ振り分けたボールを、土井口はここもグラウンダークロス。飛び込んだ森分のシュートがゴールネットをきっちり揺らす。「途中出場の土井口、森分がああいう形で活躍してくれたのは、チームにとっても良い刺激になると思います」(安部監督)。クリムゾンレッド、沸騰。1-0。神戸U-18が先制点を強奪する。
45+2分。アウェイチームは諦めていなかった。キックオフ直後の流れから、右サイドの村田が中央にフィードを蹴り込むと、前線に上がっていたDF横井佑弥(2年)はバイシクルでラストパス。飛び出した中積のシュートは、ゴール左スミへ転がり込む。「どうしても追い付かないといけない状況で、横井くんがうまく起点になってくれたので、ゴールを獲れたのは凄く良かったです」と話すストライカーの意地。1-1。G大阪ユースが追い付いてみせる。
45+6分。正真正銘のラストプレーは、MF片山航汰(3年)が粘って獲得した、ホームチームの右FK。“両足使い”のMF藤本陸玖(3年)が左足で流し込んだ軌道が、原の足元に入る。
「良いイメージができていた中で良いボールが来て、あとは感覚でしたね。足元に来て、トラップして、ふかすのが一番ダメなので、ゴロで打つイメージで蹴りました」。ボールがゴールネットへ収まるのを見届けると、背番号4のセンターバックは一目散にピッチサイドへと走り出す。クリムゾンレッド、絶叫。2-1。直後にタイムアップのホイッスルが吹き鳴らされる。
「天国から地獄に突き落とされて、感情が追い付かないですよね。あれで1-0で逃げ切るというケースは過去にも何度かありましたけど、追い付かれて、そこからもう一回跳ね返せたというのは素晴らしかったですし、選手たちも意地を見せられたのかなという感覚はあります」(安部監督)。入ったゴールはすべて後半アディショナルタイムという、最終盤に大きく揺れ動いた超激闘は、神戸U-18が逞しく勝ち切って、首位をキープする勝点3を積み上げる結果となった。




「1点目を獲った時にベンチもメッチャ喜んでいて、僕もメッチャ出ていったんです。でも、1分くらいで失点して、『え……、何が起こったん?』という感じやったんですけど(笑)、ラストワンプレーで原ちゃんが決めてくれて、助かりました」。里見が話してくれた言葉が、アディショナルタイムの6分間を過不足なく表現してくれる。
90+2分、先制。90+2分、同点。90+6分、決勝点。「追い付かれた時はホンマに『ヤバいな……』と。アディショナルタイムで1-1になって、『このまま終わるんじゃないか……』と思ったんですけど、フリーキックになった時には『これはワンチャンあるかな』と思っていました」と語ったのは、奇跡的なゴールを叩き出した原。最後まで諦めないメンタルと執念で呼び込んだ劇的な勝利が、2025年のターニングポイントとなる可能性は小さくないだろう。
さらに、この1勝にはさらなる価値がある。「今まで健斗がいない試合で帝長とか神村に4点獲られて負けているので、今日の試合はダービーやし、相手も上位やし、健斗もいなかったので、絶対に勝たないといけない試合でした」と里見が言及した通り、既にJ1デビューも果たしているMF濱崎健斗(3年)が出場した試合はここまで3戦全勝だったのに対し、出場のなかった帝京長岡高戦は1-4、神村学園高戦は0-4でともに大敗。今季の10番の“いる、いない”がダイレクトに勝敗へ与える影響を、選手たちは敏感に察知していたからこそ、濱崎が欠場した今節の試合の結果も、彼らにとってはとにかく重要だった。
「濱崎がボールを収めてくれたり、点を獲ってくれることが、みんなの頼りになっていることは間違いないと思います。でも、その半面で『オレも「健斗がいないとダメなのかよ」と思われるのは悔しいし、それはみんなも一緒だよな』と。『やっぱりそこはオレたちが向き合って、超えていかなきゃいけないところじゃないの?』という話をしました」という安部雄大監督の言葉を受けて、「健斗がいないと勝てないみたいな流れもチーム自体にあったので、ああやってみんなで最後に気持ちで押し込めて、みんなで勝てたのは良かったですね。その面ではチームも成長できたのかなと思います」とキャプテンの瀬口は胸を張る。
原が劇的なゴールを決めた瞬間、ピッチサイドで試合を見ていた濱崎は、飛び跳ねながらチームメイトたちが作った歓喜の輪へ向かって駆け出していった。エースの存在感の大きさはみんなが理解している。そのうえで、まさにチームの総力を結集して『健斗がいない試合』に勝ち切ったこの日のドラマチックな白星が、神戸U-18の一体感をより高めていくことも、また間違いなさそうだ。


(取材・文 土屋雅史)
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