リーグ4連敗中の苦境に指揮官が「目を見て決めた」スタメンが覚悟の躍動!柏U-18は好調の浦和ユース相手にアウェイで4発快勝!
[9.13 プレミアリーグEAST第13節 浦和ユース 0-4 柏U-18 埼玉スタジアム2002 第4グラウンド]
リーグ戦では4連敗中。なかなか浮上のきっかけを掴み切れない流れの中で、前節からスタメンは6人も入れ替わった。間違いなく今シーズンを左右する勝負の一戦。キックオフからピッチに立つ選手も、ベンチからスタートする選手も、グラウンドの外から応援する選手も、この90分間の重要性は誰もがはっきりと理解していた。
「いつも出ているメンバーだけじゃなくて、僕たちは柏レイソルU-18という1つのチームなので、いつも出ていない人が今回出て、それで勝てたというのはチームにとってもプラスですし、次からのプレミアでも誰が出ようと、相手がどこであろうと、良い戦いができるのかなと思います」(柏レイソルU-18・川本大善)
背水の陣で挑んだゲームに、アウェイで4発快勝!13日、高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2025 EAST第13節で、浦和レッズユース(埼玉)と柏レイソルU-18(千葉)が激突した一戦は、今季最多の4得点を叩き出した柏U-18が、リーグ戦では5試合ぶりとなる白星を手繰り寄せた。
前節は難敵の流通経済大柏高と好ゲームを繰り広げ、アウェイでドロー。リーグ戦ではここ3試合で勝点7を積み上げるなど、確実にチームの状態も上向いている浦和ユース。この日も序盤からアグレッシブに立ち上がると、4分にはMF吉田真信(2年)が倒されて獲得したFK。ゴールまで25メートル近い距離から、DF田中一信、(3年)が直接狙ったキックは左のポストを叩いたものの、いきなりあわやというシーンを創出する。


以降も「前回の流経戦も自分たちのやりたいサッカーは結構できた中で、最後に隙を見せて失点したので、今日は隙を見せないというのをテーマに挙げていました」とMF小川直澄(2年)も話した浦和ユースは、前線でFW山根且稔(3年)が基点を作りつつ、とりわけ右サイドのDF木下侑也(2年)とFW阿部湧心(3年)の推進力を生かして、先制点を虎視眈々と窺う。
一方の柏U-18はなかなか手数を出せない中で、22分にはビッグチャンス。MF沼端隼人(3年)からボールを受けたDF長南開史(1年)は、右サイドを強引に突破。MF五十嵐陵(1年)のリターンからシュートを打ち切ると、軌道は枠を越えたものの、ようやく可能性のあるアタックを繰り出してみせる。
すると、先にスコアを動かしたのは柏U-18。28分。DF丸山寿貴斗(2年)からパスを受けた長南は、ここも縦へ果敢に仕掛けて正確なクロス。「開史はあそこで絶対に縦に行ってクロスを上げるという確信があった」というMF川本大善(3年)は完璧なダイレクトボレーをゴールへ突き刺す。前節の試合はU-17日本代表のフランス遠征のために欠場。「自分がフランスに行っている時に、動画でみんなが戦っている姿を見ていて、自分も熱くなっていましたし、今日は絶対チームを勝たせようという気持ちがありました」という川本と長南の“代表コンビ”が開通し、柏U-18が1点をリードして、前半の45分間は終了した。




次の1点もアウェイチームが奪う。後半1分に五十嵐が、10分にはFW加茂結斗(2年)が際どいシュートを放つと、12分にも右サイドから長南が入れたパスに、マーカーと入れ替わったFW越川翔矢(3年)は右足のアウトサイドでフィニッシュ。ボールは鮮やかにゴールネットを揺らす。「なかなか試合に出れていないこともあったので、今までのゴールで一番嬉しかったです」。背番号9のストライカーが、今季3試合目のスタメン抜擢に応える大仕事。2-0。柏U-18が点差を広げる。


2点のビハインドを背負った浦和ユースは、「相手にボールを持たれて、自分たちが押し上げて守備ができなかったので、カウンターになった時も前に迫力を出せなかったと思います」と小川。時折、MF和田直哉(3年)やMF深田京吾(3年)が単騎で前へのパワーを打ち出すものの、そこからフィニッシュまでは繋がらず、チャンス自体を生み出せない。
終盤に眩く輝いたのは『柏の10番』。85分。MF上野暉晏(2年)が左サイドで縦に好フィードを送り、走った加茂はそのままドリブルから左足でのシュートを選択。浦和ユースのGKマルコムアレックス恵太(2年)もファインセーブで応酬したが、リバウンドがDFに当たってしまってオウンゴール。柏U-18に3点目が記録される。
さらに1分後の86分。高い位置でFW澤井烈士(3年)と相手のビルドアップにプレスを掛け、ボールを奪った加茂はドリブル開始。GKと1対1のシチュエーションを迎えると、一瞬でさまざまな思考を巡らせる。
「フリーで抜け出した時に、隣に烈士くんが走り込んでいたので、『パスを出したらほぼ100パーセント得点かな』と思いながらも、さすがにオウンゴールで終われないなって。たぶん3点目が自分のゴールだったらパスを出していましたけど、あれは自分で行かないといけないというか、勝負の世界はその1点が自分になるか、違う選手になるかで評価も変わってくると思うので、あそこはちょっと自分を出して、自分で決めに行きました」。
冷静にゴールネットを揺らし、太陽のエンブレムにキスをする姿はまさに千両役者のそれ。「ここプレミア4連敗という中でも、誰も下を向くことなく、ポジティブにモチベーション高くやれていましたし、試合前から良い試合ができるし、絶対勝てるとはみんなで共通認識を持てていたので、良い試合ができたなと思います」(加茂)。ファイナルスコアは4-0。ようやく攻撃力を存分に解き放った柏U-18が、リーグ戦の連敗を4でストップ。大きな勝点3を敵地でもぎ取る結果となった。




「こうなるんですね。サッカーって面白いですね。戦術とかいろいろありますけど、覚悟を持ったヤツに託して正解だったなという感じです」。試合後に勝利の感想を問われた柏U-18の藤田優人監督は、そう言葉を紡いだ。リーグ戦4連敗中というシビアな状況で迎えた一戦。指揮官はこの日のスタメンを『目を見て決めた』という。
「コーチ陣にも相談して、『今週1週間、自分はトレーニングを何もしない。選手の目しか見ない』と言ったら、『どういうことですか?』と言われましたけど(笑)、こういうことだよと説明して、理解してもらって、今週はずっと選手の目を見ていました」。
「4連敗していて、何かチームを大きく変えないといけない中で、何を基準に変えようかなと。そこで自分が一番大事にしているものを考えて、覚悟を持った選手を使いたいなと。ある大企業の創設者の方が『人の生きざまは目に現れる』という話をしているのを本で読んだので、そういうところを大切にしてみようかなと思ったんです」。
『選手の目』という選考基準は、ある意味では客観的で、ある意味では主観的だ。だが、この指揮官が普段から見せる一貫した行動や言動を見ていれば、選手たちもそこには納得せざるを得ない。
結果は4-0の完勝。「これでリーグ戦のスタメンは3試合目なんですけど、結構自分の中でも思うところがあった中でのスタメンだったので、絶対にやってやろうという気持ちを持って試合に入れました」と口にした越川は、高いモチベーションをゴールという結果にきっちり結び付け、丸山や上野、五十嵐といった1,2年生も躍動。代表から帰ってきた川本と長南は、そのクオリティをきっちりと見せ付けた。
「改めて選んだメンバーは正解だったと思います。しっかり競争を勝ち抜いたメンバーなので、ピッチに立つ選手というのは、上手い選手ではなくて、覚悟を持った選手なんだなと。今日の試合だけ見れば手応えはあったなと思います」と話した藤田監督は、続けて「6人入れ替えたことによって、悔しい想いをしている選手もいますからね」とも。もちろんスタメンを外された選手に、思うところがないはずがない。今度は彼らがリバウンドメンタリティを発揮し、グループの競争力をより煽っていくことで、チームの輪は確実に大きくなっていく。
川本がまっすぐな視線で言い切った言葉が印象深い。「前期はああいう結果になってしまって、クラブユースも負けてしまって、そこからちょっと落ちた時期もあったんですけど、それでも自分たちはどの順位にいても、誰から笑われようと、日本一を狙おうと決めたので、そこに向かって僕たちは1回も下を見ていないですし、上だけを見て、みんなで一緒に頑張っていくだけです」。
苦しむチームを救ったのは、指揮官が『目を見て決めた』選手たちの覚悟と意地。もちろん次の試合は絶対にスタメンを勝ち獲ってやろうと、この日のベンチメンバーも、ベンチ外のメンバーも、目の色を変えてトレーニングに挑んでいく。間違いなく激化する競争のサイクル。柏U-18にとって、これはただの1勝ではない。


(取材・文 土屋雅史)
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リーグ戦では4連敗中。なかなか浮上のきっかけを掴み切れない流れの中で、前節からスタメンは6人も入れ替わった。間違いなく今シーズンを左右する勝負の一戦。キックオフからピッチに立つ選手も、ベンチからスタートする選手も、グラウンドの外から応援する選手も、この90分間の重要性は誰もがはっきりと理解していた。
「いつも出ているメンバーだけじゃなくて、僕たちは柏レイソルU-18という1つのチームなので、いつも出ていない人が今回出て、それで勝てたというのはチームにとってもプラスですし、次からのプレミアでも誰が出ようと、相手がどこであろうと、良い戦いができるのかなと思います」(柏レイソルU-18・川本大善)
背水の陣で挑んだゲームに、アウェイで4発快勝!13日、高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2025 EAST第13節で、浦和レッズユース(埼玉)と柏レイソルU-18(千葉)が激突した一戦は、今季最多の4得点を叩き出した柏U-18が、リーグ戦では5試合ぶりとなる白星を手繰り寄せた。
前節は難敵の流通経済大柏高と好ゲームを繰り広げ、アウェイでドロー。リーグ戦ではここ3試合で勝点7を積み上げるなど、確実にチームの状態も上向いている浦和ユース。この日も序盤からアグレッシブに立ち上がると、4分にはMF吉田真信(2年)が倒されて獲得したFK。ゴールまで25メートル近い距離から、DF田中一信、(3年)が直接狙ったキックは左のポストを叩いたものの、いきなりあわやというシーンを創出する。


鋭いFKを放った浦和ユースDF田中一信、
以降も「前回の流経戦も自分たちのやりたいサッカーは結構できた中で、最後に隙を見せて失点したので、今日は隙を見せないというのをテーマに挙げていました」とMF小川直澄(2年)も話した浦和ユースは、前線でFW山根且稔(3年)が基点を作りつつ、とりわけ右サイドのDF木下侑也(2年)とFW阿部湧心(3年)の推進力を生かして、先制点を虎視眈々と窺う。
一方の柏U-18はなかなか手数を出せない中で、22分にはビッグチャンス。MF沼端隼人(3年)からボールを受けたDF長南開史(1年)は、右サイドを強引に突破。MF五十嵐陵(1年)のリターンからシュートを打ち切ると、軌道は枠を越えたものの、ようやく可能性のあるアタックを繰り出してみせる。
すると、先にスコアを動かしたのは柏U-18。28分。DF丸山寿貴斗(2年)からパスを受けた長南は、ここも縦へ果敢に仕掛けて正確なクロス。「開史はあそこで絶対に縦に行ってクロスを上げるという確信があった」というMF川本大善(3年)は完璧なダイレクトボレーをゴールへ突き刺す。前節の試合はU-17日本代表のフランス遠征のために欠場。「自分がフランスに行っている時に、動画でみんなが戦っている姿を見ていて、自分も熱くなっていましたし、今日は絶対チームを勝たせようという気持ちがありました」という川本と長南の“代表コンビ”が開通し、柏U-18が1点をリードして、前半の45分間は終了した。




次の1点もアウェイチームが奪う。後半1分に五十嵐が、10分にはFW加茂結斗(2年)が際どいシュートを放つと、12分にも右サイドから長南が入れたパスに、マーカーと入れ替わったFW越川翔矢(3年)は右足のアウトサイドでフィニッシュ。ボールは鮮やかにゴールネットを揺らす。「なかなか試合に出れていないこともあったので、今までのゴールで一番嬉しかったです」。背番号9のストライカーが、今季3試合目のスタメン抜擢に応える大仕事。2-0。柏U-18が点差を広げる。


2点のビハインドを背負った浦和ユースは、「相手にボールを持たれて、自分たちが押し上げて守備ができなかったので、カウンターになった時も前に迫力を出せなかったと思います」と小川。時折、MF和田直哉(3年)やMF深田京吾(3年)が単騎で前へのパワーを打ち出すものの、そこからフィニッシュまでは繋がらず、チャンス自体を生み出せない。
終盤に眩く輝いたのは『柏の10番』。85分。MF上野暉晏(2年)が左サイドで縦に好フィードを送り、走った加茂はそのままドリブルから左足でのシュートを選択。浦和ユースのGKマルコムアレックス恵太(2年)もファインセーブで応酬したが、リバウンドがDFに当たってしまってオウンゴール。柏U-18に3点目が記録される。
さらに1分後の86分。高い位置でFW澤井烈士(3年)と相手のビルドアップにプレスを掛け、ボールを奪った加茂はドリブル開始。GKと1対1のシチュエーションを迎えると、一瞬でさまざまな思考を巡らせる。
「フリーで抜け出した時に、隣に烈士くんが走り込んでいたので、『パスを出したらほぼ100パーセント得点かな』と思いながらも、さすがにオウンゴールで終われないなって。たぶん3点目が自分のゴールだったらパスを出していましたけど、あれは自分で行かないといけないというか、勝負の世界はその1点が自分になるか、違う選手になるかで評価も変わってくると思うので、あそこはちょっと自分を出して、自分で決めに行きました」。
冷静にゴールネットを揺らし、太陽のエンブレムにキスをする姿はまさに千両役者のそれ。「ここプレミア4連敗という中でも、誰も下を向くことなく、ポジティブにモチベーション高くやれていましたし、試合前から良い試合ができるし、絶対勝てるとはみんなで共通認識を持てていたので、良い試合ができたなと思います」(加茂)。ファイナルスコアは4-0。ようやく攻撃力を存分に解き放った柏U-18が、リーグ戦の連敗を4でストップ。大きな勝点3を敵地でもぎ取る結果となった。




「こうなるんですね。サッカーって面白いですね。戦術とかいろいろありますけど、覚悟を持ったヤツに託して正解だったなという感じです」。試合後に勝利の感想を問われた柏U-18の藤田優人監督は、そう言葉を紡いだ。リーグ戦4連敗中というシビアな状況で迎えた一戦。指揮官はこの日のスタメンを『目を見て決めた』という。
「コーチ陣にも相談して、『今週1週間、自分はトレーニングを何もしない。選手の目しか見ない』と言ったら、『どういうことですか?』と言われましたけど(笑)、こういうことだよと説明して、理解してもらって、今週はずっと選手の目を見ていました」。
「4連敗していて、何かチームを大きく変えないといけない中で、何を基準に変えようかなと。そこで自分が一番大事にしているものを考えて、覚悟を持った選手を使いたいなと。ある大企業の創設者の方が『人の生きざまは目に現れる』という話をしているのを本で読んだので、そういうところを大切にしてみようかなと思ったんです」。
『選手の目』という選考基準は、ある意味では客観的で、ある意味では主観的だ。だが、この指揮官が普段から見せる一貫した行動や言動を見ていれば、選手たちもそこには納得せざるを得ない。
結果は4-0の完勝。「これでリーグ戦のスタメンは3試合目なんですけど、結構自分の中でも思うところがあった中でのスタメンだったので、絶対にやってやろうという気持ちを持って試合に入れました」と口にした越川は、高いモチベーションをゴールという結果にきっちり結び付け、丸山や上野、五十嵐といった1,2年生も躍動。代表から帰ってきた川本と長南は、そのクオリティをきっちりと見せ付けた。
「改めて選んだメンバーは正解だったと思います。しっかり競争を勝ち抜いたメンバーなので、ピッチに立つ選手というのは、上手い選手ではなくて、覚悟を持った選手なんだなと。今日の試合だけ見れば手応えはあったなと思います」と話した藤田監督は、続けて「6人入れ替えたことによって、悔しい想いをしている選手もいますからね」とも。もちろんスタメンを外された選手に、思うところがないはずがない。今度は彼らがリバウンドメンタリティを発揮し、グループの競争力をより煽っていくことで、チームの輪は確実に大きくなっていく。
川本がまっすぐな視線で言い切った言葉が印象深い。「前期はああいう結果になってしまって、クラブユースも負けてしまって、そこからちょっと落ちた時期もあったんですけど、それでも自分たちはどの順位にいても、誰から笑われようと、日本一を狙おうと決めたので、そこに向かって僕たちは1回も下を見ていないですし、上だけを見て、みんなで一緒に頑張っていくだけです」。
苦しむチームを救ったのは、指揮官が『目を見て決めた』選手たちの覚悟と意地。もちろん次の試合は絶対にスタメンを勝ち獲ってやろうと、この日のベンチメンバーも、ベンチ外のメンバーも、目の色を変えてトレーニングに挑んでいく。間違いなく激化する競争のサイクル。柏U-18にとって、これはただの1勝ではない。


(取材・文 土屋雅史)
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