右足腓骨骨折、嬉しさと悔しさの日本一、仲間や先輩から得た勇気、希望…静岡学園の“心臓”MF足立羽琉主将は自分らしく、冬の目標へ向かう
[8.14 ECLOGA U-18 IN 埼玉 静岡学園高 2-0 神村学園高 SFAフットボールセンター KAZOヴィレッジAピッチ]
復活までの道のりは決して簡単なものではないだろう。自身、周囲が思い描いている通りにはいかないかもしれない。責任感が強いが上に、焦る気持ちも。それでも、仲間や憧れの先輩から勇気をもらった“静学の心臓”は、確かな目標を持って、前を向いて、半歩、一歩と歩み続ける。
インターハイ優勝校の静岡学園高(静岡)は14日、神村学園高(鹿児島)との「ECLOGA U-18 IN 埼玉 2026」“優勝決定戦”を2-0で制し、優勝。表彰式には、負傷離脱中でTシャツと松葉杖姿のMF足立羽琉主将(3年=FC川崎CHAMPジュニアユース出身)も参加し、チームメイトの「羽琉!」という強いリクエストに応えてトロフィを掲げた。
インターハイで重傷を負い、7月31日に手術を受けたばかり。今回の埼玉遠征にも参加していなかったが、神奈川県川崎市の地元から「来るのは知らなかった」(川口修監督)という来場。インターハイ優勝の瞬間には立ち会えなかったものの、この日は仲間たちの「ECLOGA U-18 IN 埼玉 2026」優勝を見届け、その後に現在の心境と今後への前向きな言葉を発していた。
足立は昨年の後期から台頭し、選手権予選やプレミアリーグWESTで先発を務めたボランチだ。今年は名門校の主将としてシーズンをスタート。無敗首位のプリンスリーグ東海では前期9試合で全て先発し、うち8試合でフル出場している。インターハイ予選でも攻守の要として優勝に貢献。だが、インターハイの全国大会初戦(対大分高/7月26日)の前半に右足腓骨骨折、靭帯損傷の重傷を負ってしまう。
「自滅でした。取替式(のスパイク)を履いていて、(人工芝ならば)ズルっと滑るところが(ポイントが)芝に刺さってしまって、足に全体重が乗って脱臼して折れてしまった」。これまでは入院も、手術も、大怪我さえもしたことがなかったというが、サッカーから長く離れることになった。
川口修監督はいう。「存在はデカいどころじゃない。ウチのチームの心臓です。それがいなくなるのは痛い。誰がいなくなって、一番痛いのはやっぱり足立。コイツだけは怪我したらヤバいなと思っていたら怪我をしてしまった」。チームはプロ注目の10番MF松永悠輝(3年)、MF杉ノ原芽生(2年)という主力2名に加え、大黒柱も欠いてその後のトーナメント戦を戦うことになった。
それでも、静岡学園は大分高(大分)に8-0で快勝すると、選手権準優勝校・鹿島学園高(茨城)をPK戦の末に撃破。準々決勝では旭川実高(北海道)に2点リードを許しながら、3-2で逆転勝ちを収めた。そして、足立の手術日に行われた準決勝では、プレミアリーグ勢の大津高(熊本)に大苦戦を強いられたものの、1-0で勝利。チームは主力不在を理由にせず戦い続け、15年ぶりに決勝進出を果たした。各選手の手首に巻かれたテーピングには、足立の背番号「7」と松永の「10」の文字。足立はその仲間たちから勇気をもらっていた。
「自分の性格上、みんなに強く言ってまとめるとかできないけど、背中で見せるっていうのをやってきたと思っていたんで、それのお陰でああいうのをやってくれたのかは分からないですけど、嬉しかったです」
チームは近大附高(大阪)との決勝(8月1日)も後半35+5分の決勝点によって2-1で勝利。足立不在で静岡学園らしい攻撃的なサッカーができたとは言い難い。それでも、川口監督が「持ってないような力が出たっていうか、あの(足立の)思いを背負って戦ったっていうのがデカい」と分析したように、各選手は主将の分も勝利への執念を表現して、劇的な初優勝を果たした。
足立は優勝の喜びのあと、時間が経つにつれて悔しさも大きくなったという。だが、その悔しさは今、エネルギーに変わっている。仲間だけでなく、憧れの先輩からのエールも大きな力になった。決勝翌日、2学年上の世代の主将で現・川崎FのDF野田裕人が入院先の病院に来訪。その隣には、静岡学園出身で日本代表歴を持つ名手・MF大島僚太(川崎F)の姿があった。
「ビックリどころじゃないです。(川崎市出身の自分は)フロンターレファンで目の前で見てきて⋯⋯」。野田とはLINEでやり取りをしていたという。野田が見舞いに来てくれるだけでも凄く楽しみにしていたところ、さらに憧れのボランチである大島のサプライズ訪問。「怪我の状態とか聞かれて、とにかく優しく接してくれて、『頑張って』って言われて、マジで嬉しかったです」。度重なる怪我と戦い続けてきた先輩MF大島との貴重な出会い。足立は多くの人に支えられていることに感謝する。また、冬の選手権に間に合う可能性が出てきたことで、一時深く沈んでいた足立の気持ちはより前向きなモノになっているようだ。
当初の診断では全治6か月。だが、地元・川崎市でJリーガーの治療、手術も行っている病院で手術、診断をしてもらった結果、より早く復帰できる可能性を伝えられたという。「半年って言われた時は何も考えれなかったし、『もう、みんなとサッカーできない』っていうのが、何よりも⋯⋯。でも、4か月って言われた時に一気に切り替えれたっていうか、何か怪我のことも前向きに捉えれて、『みんなとやるために頑張ろう』っていう気持ちになれた」。全治半年であれば、チームメイトたちと再び一緒に練習することも叶わなかった。だが、全治4か月であれば、シーズン最終盤に復帰して仲間たちとトレーニングし、選手権のピッチに立つことができるかもしれない。「そこ(みんなと練習できること)がまず一番嬉しいです」と足立。そして、選手権への思いを口にした。
「キャプテンとして、今まで何かみんなにできたかって言ったら、自分は結果として残せていない。どんな状態で出れるか分からないですけど、例え出れないとしても、夏(の全国大会決勝)はベンチにすら入れなかったんで、直接関わって優勝に貢献したいって気持ちが強いです。でも、個人的に一番は悔しかったので。優勝した瞬間も嬉しい気持ちだったけど、ちょっと時間経つにつれて(貢献できなかったという)悔しい気持ちが大きくなっていきました。そこは悔しさをぶつけるいい舞台がまだ残されているので、予選は出れないんですけど、そこは味方を信じて、全国行った時に活躍して、みんなに恩返しできたらなって思っています」
もちろん、ピッチに立つためには静岡学園のトレーニングで信頼を掴み、競争を勝ち抜かなければならない。その上で川口監督は「チームにとって凄く良い効果があると思う。足立を全国に連れていく、ピッチに立たせるというみんなのモチベーションも上がると思う」と期待する。
今月末か来月初頭には松葉杖のない生活に戻れる模様。足立はプレーヤーとして努力するだけでなく、主将としても、できることをやる考えだ。「前向きにやるのがやっぱ自分のスタイルなんで、そこを見せて、今まで以上に声かけしたり、できることがあったら、率先して動いて、全部をチームに注いで、残り(の時間)はやっていきたいです」。そして、選手として抱いている具体的な目標についても明かしていた。
「どういう形で出るか分からないですけど、あまり得点とか取らないタイプだけど、せっかくなら最後、みんなの前で点っていうか、結果を残したいなっていう気持ちはあります。もちろん、チームのために戦うんですけど、その中で結果を見せたいです」。仲間や先輩から勇気、希望を得た“静学の心臓”は5か月後、国立競技場で5分、10分、もっと多くの時間プレーしてゴールを決める。そして、静岡学園のユニフォーム姿で、キャプテンマークを巻いて、選手権日本一を喜ぶ。




(取材・文 吉田太郎)
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復活までの道のりは決して簡単なものではないだろう。自身、周囲が思い描いている通りにはいかないかもしれない。責任感が強いが上に、焦る気持ちも。それでも、仲間や憧れの先輩から勇気をもらった“静学の心臓”は、確かな目標を持って、前を向いて、半歩、一歩と歩み続ける。
インターハイ優勝校の静岡学園高(静岡)は14日、神村学園高(鹿児島)との「ECLOGA U-18 IN 埼玉 2026」“優勝決定戦”を2-0で制し、優勝。表彰式には、負傷離脱中でTシャツと松葉杖姿のMF足立羽琉主将(3年=FC川崎CHAMPジュニアユース出身)も参加し、チームメイトの「羽琉!」という強いリクエストに応えてトロフィを掲げた。
インターハイで重傷を負い、7月31日に手術を受けたばかり。今回の埼玉遠征にも参加していなかったが、神奈川県川崎市の地元から「来るのは知らなかった」(川口修監督)という来場。インターハイ優勝の瞬間には立ち会えなかったものの、この日は仲間たちの「ECLOGA U-18 IN 埼玉 2026」優勝を見届け、その後に現在の心境と今後への前向きな言葉を発していた。
足立は昨年の後期から台頭し、選手権予選やプレミアリーグWESTで先発を務めたボランチだ。今年は名門校の主将としてシーズンをスタート。無敗首位のプリンスリーグ東海では前期9試合で全て先発し、うち8試合でフル出場している。インターハイ予選でも攻守の要として優勝に貢献。だが、インターハイの全国大会初戦(対大分高/7月26日)の前半に右足腓骨骨折、靭帯損傷の重傷を負ってしまう。
「自滅でした。取替式(のスパイク)を履いていて、(人工芝ならば)ズルっと滑るところが(ポイントが)芝に刺さってしまって、足に全体重が乗って脱臼して折れてしまった」。これまでは入院も、手術も、大怪我さえもしたことがなかったというが、サッカーから長く離れることになった。
川口修監督はいう。「存在はデカいどころじゃない。ウチのチームの心臓です。それがいなくなるのは痛い。誰がいなくなって、一番痛いのはやっぱり足立。コイツだけは怪我したらヤバいなと思っていたら怪我をしてしまった」。チームはプロ注目の10番MF松永悠輝(3年)、MF杉ノ原芽生(2年)という主力2名に加え、大黒柱も欠いてその後のトーナメント戦を戦うことになった。
それでも、静岡学園は大分高(大分)に8-0で快勝すると、選手権準優勝校・鹿島学園高(茨城)をPK戦の末に撃破。準々決勝では旭川実高(北海道)に2点リードを許しながら、3-2で逆転勝ちを収めた。そして、足立の手術日に行われた準決勝では、プレミアリーグ勢の大津高(熊本)に大苦戦を強いられたものの、1-0で勝利。チームは主力不在を理由にせず戦い続け、15年ぶりに決勝進出を果たした。各選手の手首に巻かれたテーピングには、足立の背番号「7」と松永の「10」の文字。足立はその仲間たちから勇気をもらっていた。
「自分の性格上、みんなに強く言ってまとめるとかできないけど、背中で見せるっていうのをやってきたと思っていたんで、それのお陰でああいうのをやってくれたのかは分からないですけど、嬉しかったです」
チームは近大附高(大阪)との決勝(8月1日)も後半35+5分の決勝点によって2-1で勝利。足立不在で静岡学園らしい攻撃的なサッカーができたとは言い難い。それでも、川口監督が「持ってないような力が出たっていうか、あの(足立の)思いを背負って戦ったっていうのがデカい」と分析したように、各選手は主将の分も勝利への執念を表現して、劇的な初優勝を果たした。
足立は優勝の喜びのあと、時間が経つにつれて悔しさも大きくなったという。だが、その悔しさは今、エネルギーに変わっている。仲間だけでなく、憧れの先輩からのエールも大きな力になった。決勝翌日、2学年上の世代の主将で現・川崎FのDF野田裕人が入院先の病院に来訪。その隣には、静岡学園出身で日本代表歴を持つ名手・MF大島僚太(川崎F)の姿があった。
「ビックリどころじゃないです。(川崎市出身の自分は)フロンターレファンで目の前で見てきて⋯⋯」。野田とはLINEでやり取りをしていたという。野田が見舞いに来てくれるだけでも凄く楽しみにしていたところ、さらに憧れのボランチである大島のサプライズ訪問。「怪我の状態とか聞かれて、とにかく優しく接してくれて、『頑張って』って言われて、マジで嬉しかったです」。度重なる怪我と戦い続けてきた先輩MF大島との貴重な出会い。足立は多くの人に支えられていることに感謝する。また、冬の選手権に間に合う可能性が出てきたことで、一時深く沈んでいた足立の気持ちはより前向きなモノになっているようだ。
当初の診断では全治6か月。だが、地元・川崎市でJリーガーの治療、手術も行っている病院で手術、診断をしてもらった結果、より早く復帰できる可能性を伝えられたという。「半年って言われた時は何も考えれなかったし、『もう、みんなとサッカーできない』っていうのが、何よりも⋯⋯。でも、4か月って言われた時に一気に切り替えれたっていうか、何か怪我のことも前向きに捉えれて、『みんなとやるために頑張ろう』っていう気持ちになれた」。全治半年であれば、チームメイトたちと再び一緒に練習することも叶わなかった。だが、全治4か月であれば、シーズン最終盤に復帰して仲間たちとトレーニングし、選手権のピッチに立つことができるかもしれない。「そこ(みんなと練習できること)がまず一番嬉しいです」と足立。そして、選手権への思いを口にした。
「キャプテンとして、今まで何かみんなにできたかって言ったら、自分は結果として残せていない。どんな状態で出れるか分からないですけど、例え出れないとしても、夏(の全国大会決勝)はベンチにすら入れなかったんで、直接関わって優勝に貢献したいって気持ちが強いです。でも、個人的に一番は悔しかったので。優勝した瞬間も嬉しい気持ちだったけど、ちょっと時間経つにつれて(貢献できなかったという)悔しい気持ちが大きくなっていきました。そこは悔しさをぶつけるいい舞台がまだ残されているので、予選は出れないんですけど、そこは味方を信じて、全国行った時に活躍して、みんなに恩返しできたらなって思っています」
もちろん、ピッチに立つためには静岡学園のトレーニングで信頼を掴み、競争を勝ち抜かなければならない。その上で川口監督は「チームにとって凄く良い効果があると思う。足立を全国に連れていく、ピッチに立たせるというみんなのモチベーションも上がると思う」と期待する。
今月末か来月初頭には松葉杖のない生活に戻れる模様。足立はプレーヤーとして努力するだけでなく、主将としても、できることをやる考えだ。「前向きにやるのがやっぱ自分のスタイルなんで、そこを見せて、今まで以上に声かけしたり、できることがあったら、率先して動いて、全部をチームに注いで、残り(の時間)はやっていきたいです」。そして、選手として抱いている具体的な目標についても明かしていた。
「どういう形で出るか分からないですけど、あまり得点とか取らないタイプだけど、せっかくなら最後、みんなの前で点っていうか、結果を残したいなっていう気持ちはあります。もちろん、チームのために戦うんですけど、その中で結果を見せたいです」。仲間や先輩から勇気、希望を得た“静学の心臓”は5か月後、国立競技場で5分、10分、もっと多くの時間プレーしてゴールを決める。そして、静岡学園のユニフォーム姿で、キャプテンマークを巻いて、選手権日本一を喜ぶ。


チャンピオンTシャツを着用し、トロフィリフト


選手権のピッチに立って優勝に貢献し、ゴールも決めることが目標だ
(取材・文 吉田太郎)
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