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「プロになることがゴールではない」。高校生の可能性を広げる尚志、今夏に主力3選手が欧州武者修行

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今夏、欧州武者修行をしてきた尚志高の3人衆。左からMF若林衣武希(3年=シュートJrユースFC出身)、左SB寺田悠真(3年=横浜F・マリノスジュニアユース出身)、MF星宗介(3年=矢板サッカークラブ出身)

[8.29 プリンスリーグ東北第11節 尚志高 5-0 帝京安積高 帝京安積高校サッカー場]

 プロになることがゴールではない。高卒でのプロ入りを目指す尚志高(福島)の主力選手たちが今夏、欧州の強豪クラブで武者修行。U-17日本代表MF星宗介(3年=矢板サッカークラブ出身)がシャルケ(ドイツ)とNECナイメヘン(オランダ)、左SB寺田悠真(3年=横浜F・マリノスジュニアユース出身)がバイエルンとボルシアMG(ともにドイツ)、AZ(オランダ)、そしてMF若林衣武希(3年=シュートJrユースFC出身)がサン・アンドレウ(スペイン)でそれぞれトライアウトを行った。

 星は昨年度の選手権でボール奪取力や推進力を発揮して注目度を高め、U-17日本高校選抜、U-17日本代表へとステップアップ。今年5月にはU17アジアカップ優勝にも貢献したボランチだ。寺田は今年になって台頭した左サイドバック(SB)で、技術力と推進力を兼備。一躍Jクラブも関心を寄せる存在になっている。また、10番の若林はトップ下やボランチで技術力とアイディアを駆使し、チャンスとゴールを生み出すプレーメーカーだ。

 尚志の現3年生は1年時に招待されて北アイルランド遠征を行っている。また、若林は今年3月に続く2度目のトライアウトだったが、寺田と星は初の体験。AZとバイエルンのU-23チーム、ボルシアMGのU-19チームでプレーした寺田は「最初のチームがAZで、オランダで、めっちゃデカかったのでビックリしました。バイエルンは身体があって技術もあったんで、一緒にやっていてめっちゃ楽しかったです」と振り返る。

 また、星はU-19の2チームに参加。「技術的には見劣りしないっていうのはあったんですけど、フィジカルのところで言うと、守備が自分は得意なのに、結構そこで手こずって・・・。(言葉が通じず、)指示とかもできないのは結構キツかったんですけど、やっぱり日本人だと(パスが)出るところとかが、全然海外行くと予測できなくて、間合いとかもありますし、そういうところで結構手こずったかなと思います」と明かす。

 若林は3月にスペインへ行った際は、周囲のプレーの質が高くて驚いたという。「プレーで見せないとボールがマジで来ないです。でも、逆にいいプレーをしたらすぐ打ち解けるっていう、そこは凄かったです」。スペイン志望で言葉もある程度は理解。また、英会話のできる寺田は、外国人選手たちと英語でコミュニケーションを取ることで自分の特長を出せたようだ。

 今回の欧州挑戦で自信をつけた面も。若林は「ボールの受け方は相手もデカかったので、(DFに)触られないところで受けて、触られないようにかわすとかっていうのは通用したし、ボール持った時に違い出すっていうのはあっちでできたから、感覚が掴めて、そこが一番大きいかなと思います」。他の2人が1クラブにつき1週間ずつだったのに対し、若林はサン・アンドレウに3週間滞在。練習試合では反転からのシュートを決めるなどアピールした。

 星は「攻撃のところは失わずにゲーム作るっていうところはできたんじゃないかなと思いますし、(ボールがなかなか出て来なくても)要求で相手が引きつけられたならいいかなと思っていたんで、そういうところは前向きに捉えています。シャルケはほんとにフィジカルが凄いんで、結構食いつかれるところがあったんですけど、そこで上手くかわせたりしていたんで良かったです。ナイメヘンは守備のところがオールコートマンツーマンでキツくて。でも、チームの方針に合わせていくところは課題かなと思いますし、そういうところはもっとコミュニケーションが必要なんで、もっとやらないといけないかなと思います」とできたこと、反省点について振り返る。

 また、寺田は「自分は攻撃が得意なんで、AZで攻撃はボールを失わなかったり、点に絡めたり、自分でもゴールを決めるってところがあったんで、そこはもっと自信のついたところがあります。バイエルンは日本人ぐらいみんな上手くて。けど、そのベースが日本人とは全然違いました。ちょっと上手いのは当たり前で、そこからもう1個何があるかっていうのを求められたんで、そのもう1個が日本人には足んないなっていうのは実感しました」。技術力だけでなく、身体的な強さの必要性を実感して帰国した。

 尚志は2011年度、2018年度、2025年度の選手権、また2019年と2015年のインターハイで全国3位に入っている強豪校。今年はプリンスリーグ東北で無敗首位に立っており、29日の帝京安積高(福島)戦は5-0で快勝した。寺田は怪我の影響で欠場したが、星はボランチとして先発し、奪い返しやゲームメイク。後半はU-17日本代表でのプレーも見据えて右SBとして戦った。また、若林は後半からボランチとして出場。スペースを見逃さずに動き、パスを配球するなど快勝に貢献した。

 その尚志はFW山岸祐也(現・名古屋)やFW染野唯月(現・東京V)らをプロの世界へ送り出している。仲村浩二監督は高校生の可能性を広げるためにも、成長を示しているプレーヤーの海外へのトライアウト、練習参加を積極的に後押し。2022年にはDFチェイス・アンリ(現・ザルツブルク)が高卒でシュツットガルト(ドイツ)入りを果たしているが、それ以外にも主力選手が海外でのトライアウトを経験している。

 仲村監督は「僕は、プロになることがゴールじゃないっていうことを言いたいんですよね」という。勝負はプロになってから。そこでどれだけ貪欲に自分を高められるか。「(プロは)高校のように誰も怒ってくれないし、自分がやんなきゃいけない。それを海外で見てきて欲しいし、感じて欲しい」(仲村監督)。欧州の選手たちが自分からチャンスを掴みに行くために何をしているのかを感じること、また、欧州のプレーの基準を高校生の段階で知ることを期待する。

 かつて高校サッカーのスタープレーヤーだった仲村監督は、習志野高(千葉)1年時に40日間のアルゼンチン遠征。「こいつらに勝たなきゃいけないんだな、って基準ができる。意外と自分ではできたから、(バルセロナ五輪予選などで)日本代表にその後選ばれても、『いや、アルゼンチンのやつの方が上手いでしょ』みたいな感覚はあって、全然ビビることが無かった。(代表入りできたのは)あの経験があったから」と語る。

 OBたちの活躍や繋がりは、大きい。今回、星と寺田のトライアウトは、株式会社ユニバーサルスポーツジャパンによる現地クラブとの調整によって実現。同社はアンリの欧州挑戦の際にも契約締結をサポートした経緯あり、DF伊藤洋輝(バイエルン)、MF田中聡(シャルケ)等の選手をブンデスリーガに送り出す中で築いたネットワークを元にトライアウトが実現したという。「育成にこだわりたい。将来的にいい人間に、いい大人になってもらいたい」という仲村監督は支えてくれている多くの関係者たちに感謝。そして、日常のトレーニングだけでなく、尚志にできる育成で高校生の可能性を広げた続けたいと考えている。

「プロになることがゴールではない」という思いは、欧州を経験した選手たちにも伝わっている。寺田は「来年からプロでやっていくっていうので、そこを目標にしたらやっぱり成功する人はいないんで、そこからどうしていくかって考えると、自分は全世界から注目される選手、サイドバックで注目される選手になりたい。今回行って、それはもっと現実的になったなと思っていて、上手いのは上手いけど、身体はもっと上げなくちゃいけない。あとは、やっぱり日本人は執着心が足りないなっていうのは実感して、ボールへの執着心とか、ゴールへの執着心とか、そこは身体とか能力とかそういう問題じゃなくて、外国人と日本人の違いはそういうところに結構出ているのかな、サッカーへの愛とかそういう執着心は試合でめっちゃ出るなっていうのは実感したんで、そこはもっと上げていかないとなと思います」と語った。

 また、星は以前に比べて、欧州が身近な存在になったようだ。すでに複数のJリーグクラブから誘いがあるが、欧州については不安の方が大きく、進路として考えていなかったという。だが、「人生に1度あるかないかくらいの体験だと思うんで、自分的にも行って、吸収して、チームに還元できるようにしていきたいと思って行けたんで、そこはこのタイミングで行けて良かったなと思います。あっちに行って、できたところとできないところっていうのがあったんで、やっぱり日本じゃ経験できないことが経験できて、自分の弱さとか強さっていうのも、ここじゃ分からないところが分かったりすることができた」。日本では感じることのできなかった課題と、欧州の強豪クラブでプレーすることの魅力を実感。体感したことを自分とチームの成長に繋げる考えだ。

 若林はオファーを勝ち取ることができれば、スペインでステップアップしていく意気込みだ。今回はサン・アンドレウのトップチームとU-19チームでプレー。「(サン・アンドレウは)3部なんですけど、2部に上がればだいぶレベルも上がるし、U-19の方はスペイン1部でバルサ(バルセロナ)とかとできて引っこ抜かれるっていうのは全然あるって言っていたんで、そういうところでチャンスに繋がっている。入るのが目標っていうよりは、自分はそこからステップアップして行きたいと思っているんで、U-19でももっと頑張ろうと思うし、フィジカルのところ、身体とかはもっと上げないと(トップを含めて)どっちでも通用しないところもあるから上げていきたい」。スペインのサッカーが楽しく、「早く行きたい」と願っている。

 3人は、チームが夏の鍛錬をしている時期に貴重な経験ができたことを感謝。この経験をチームのプレミアリーグ昇格や選手権日本一に結びつけなければならないと考えている。そして、プロになるだけでなく、さらに上を目指す考え。「日本でやっていくとしても、海外でも、どこのチームでも結局は自分次第だと思っている。これから色々な誘惑とかあると思うんですけど、謙虚にやっていければいいかなと思います」(星)、「どのチームに入っても成功するとかは保証されてなくて、それがプロの世界だと思っているんで、常に自分に目を向けてやっていくのと、最終的には世界中から注目されるサイドバックになりたいんで、そこの目標は変えずに、どこに行っても満足しないで、その目標のためにやっていきたいです」(寺田)、「(スペインは)U-19の方でも、トップチームでも、スカウトとか毎回めっちゃ来ているんで、やっぱラ、リーガで出たいですし、ラ・リーガ出れたらA代表とか全然あると思うし、そこのすぐ下にいるってのはチャンスだから、そこだけを見て頑張りたい。本当、上手けりゃ絶対引っこ抜かれる世界だから、絶対行けるように頑張りたいなって思います」(若林)。自分たちの活躍が後輩の可能性を広げることも理解。今回経験した高い基準を忘れず、尚志での残り数か月、次のステージでも上を目指して歩み続ける。

U-17日本代表の注目ボランチ、MF星宗介(3年=矢板サッカークラブ出身)

今年、一気に台頭してきた強力左SB寺田悠真(3年=横浜F・マリノスジュニアユース出身)

10番を背負うプレーメーカー、MF若林衣武希(3年=シュートJrユースFC出身)

(取材・文 吉田太郎)


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吉田太郎
Text by 吉田太郎

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