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[MOM740]桐光学園FW野路貴之 (3年)_ロスタイムの劇的弾で4強へ導く

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[1.5 全国高校選手権準々決勝 作陽1-2桐光学園 三ツ沢]

 誰もがPK戦突入を覚悟していた。作陽の野村雅之監督もGKを太田純貴(2年)から、186センチの長身GK末藤敬大(2年)に交代し、PK戦に備えていた。この交代直後、ヒーローとなる桐光学園FW野路貴之(3年)も、PK戦突入を覚悟していたと明かす。「もう時間もなかったので、PK戦になることは覚悟していました。でも、最後に決められて良かったです」と、笑顔を見せた。

 後半ロスタイム、スローインをDF大田隼輔(3年)がゴール前にロングスローを入れると、混戦からこぼれたボールが、目の前に来た。「ロングスローからDF陣が競ったこぼれ球を狙うというのは、自分たちの意図としてやってきました。小松(勇樹)が競ってくれたので、絶対に決めたかった。最後は無我夢中で、何も考えずに狙ったので、どこを狙うとかは考えていませんでした」。

 3回戦の佐賀商戦(3-0)では、何度も訪れた決定機を決められずに、試合前にはチームメイトから「今日は決めろよ」「決めきれよ」と、声を掛けられていたという。96年以来となる国立行きを賭けた一戦を前に「3試合連続、三ツ沢で戦うことができたので緊張することはありませんでした」と、明かすが、前半15分にMF松井修平(3年)のパスを受けてシュートに持ち込む場面など、この日もなかなかチャンスを生かせなかった。「最後の最後での落ち着きがなくなっていました。今日の前半も最後で落ち着けなかった。いつもだったらもっと落ち着いて決められるのに悔しかった」と反省する。それでも、後半ロスタイムの決定機では右足で、確実にゴールを決め、劇的な勝利を呼び込んだ。

 16大会ぶりに4強進出を決めたが、決勝ゴールを挙げた野路は「守備陣が粘ってくれたことが勝因だと思います」と語る。実際に1点をリードして迎えた後半は、作陽に押し込まれる展開となった。桐光学園の最終ラインの選手たちはPA内で体を張った守備を見せ、何度も相手のシュートをブロックした。「僕が点を取れるのも、守備陣が頑張って守ってくれたおかげですし、良いパスを出してくれるチームメイトのおかげ」と、野路はチームメイトたちに感謝する。

 そのチームメイトたちとともに、国立の舞台で戦えることを野路は喜んだ。「小さいころから選手権を見ていましたし、昨年もチーム全員で決勝を見に行って、自分もあそこでやりたいという気持ちが強かった。ベスト4に行くことができて、国立でやれることが嬉しいです」。

 夢の舞台で戦えることが決まった野路は『得点王』という個人タイトルへの想いも口にした。「得点王は目指したいし、自分が取ることでチームも勝てると思う」。体を張って守ってくれる守備陣がいる。それぞれにチーム内での役割がある中で、自分には得点が求められていることを強く自覚する。「桐光学園の過去最高の成績は準優勝なので、次の試合まで良い準備をして、目標の全国制覇に向けて一歩一歩、戦っていきたいと思います」。桐光学園史上2度目となる決勝、そして同校初の優勝を見据えるストライカーは、まだまだゴールに、勝利に飢えている。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)
(取材・文 河合拓)

【特設】高校選手権2012
連載:高校マン・オブ・ザ・マッチ

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