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[MOM960]市立船橋FW石田雅俊(3年)_“未完の大器”が1G2A含む4発演出

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[1.3 全国高校選手権3回戦 市立船橋4-1水戸啓明 フクアリ]

 気持ちがボールに乗り移った。市立船橋(千葉)のFW石田雅俊(3年、京都サンガF.C.内定)は前半14分、左CKからDF柴戸海(3年)の先制点をアシストすると、同35分にはDF山之内裕太(3年)の左クロスに飛び込み、DFと競り合いながらヘディングでゴールネットを揺らした。

 朝岡隆蔵監督が「(石田が)飛び込んで頭で決めるというのは記憶にない」と思わず苦笑いした石田の今大会初ゴール。石田自身、「ああいう貪欲さを求めていた。それが選手権で出てよかった」と胸を張る。「気持ちで決めました。点が欲しかったし、点を取ればノッていく。まず1点が欲しいと思っていた」。得点後は両拳を握りしめ、ド派手なガッツポーズ。テンションは最高潮だった。

 山之内の直接FKによる1点のみで辛勝した前日2日の2回戦・中津東戦(1-0)は、石田にとってもまったく納得のいかない試合だった。「相当反省して、1日中考えていた」。修正したのは試合の入りの部分。「昨日の試合はアップであまり上げてなくて、前半で疲れた。今日はアップで相当追い込んだし、気持ちの面でも自分が声を出してチームを盛り上げようと思った」。そんな石田の変貌ぶりは、宿舎で同部屋の山之内がだれよりも身近で感じ取っていた。

「マサ(石田)は昨日からずっと部屋で『決めたい、決めたい』と言っていた。ずっとイメージトレーニングをしていて、夜もすぐに寝ていた」。宿舎での様子を明かした山之内だが、石田からは「ボールを持ったら中に走っていくから俺を見てくれ」と言われていたのだという。この日の2点目はまさに打ち合わせどおりの形。これには山之内も「部屋がいつも一緒で、コミュニケーションを取ることも多いので、それが得点につながったことはよかった」と会心の表情だった。

 後半7分には石田のシュートからこぼれ球を最後はMF成田悠冴(3年)が蹴り込み、3-0。同14分にも石田のヒールパスからMF室伏航(3年)がダメ押しの4点目を奪った。1ゴール2アシストを含む全4得点に絡み、「100点ではないけど、(初戦から)向上はあったかなと思う」と笑みをこぼした石田。そんなエースのパーソナリティーについて朝岡監督は「感性としか言いようがない」と言う。

 後半28分にPA内へ抜け出した場面で石田は相手GKと交錯し、転倒。シミュレーションで警告を受けた。「タッチがデカくなって、打っても入らないと思った。引っかかってPKしかないと。ただ、GKが我慢していて、飛び込んでこなかった。このまま倒れたらダメだと思ったけど、バランスが崩れていたので」。わざと倒れたわけではないことを強調した石田だが、朝岡監督は「感情のコントロールができない。初戦よりテンションが良くて、やってくれるなという雰囲気を漂わせていたけど、あそこでバランスを取れないのは課題」と苦言も呈す。

「小学生がそのまま高校生になったような選手」と指揮官が評する背番号10は、チームがオフの日にも近所の公園で一人、ボールを蹴っている。「3年間、ほとんど毎日サッカーをしていた。幼稚園のころにサッカーをしていた公園で、昔を思い出しながらやっていた」。一人で練習するのが好きだといい、「一人だけ成長している感じがある。みんなが休んでいるときに『俺だけうまくなってるぞ』みたいな」と子供のように笑った。

 良くも悪くも本能のままにプレーする石田。波があることは本人も自覚しているが、ハマったときの爆発力はだれもが認めるところだ。無限の潜在能力を秘めた“未完の大器”が覚醒したとき、市立船橋の2大会ぶり6度目の日本一も見えてくる。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 西山紘平)

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