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日本を変えたザックの言葉、長谷部「監督が熱く語ってくれた」

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[6.19 コンフェデレーションズ杯A組 日本3-4イタリア レシフェ]

 明らかな変化があった。消極的なプレーに終始し、日本らしさを発揮することなく90分間を終えた15日のブラジル戦(0-3)から中3日。結果こそ3-4の惜敗でグループリーグ敗退も決まったが、試合内容ではイタリアを上回り、あと一歩のところまで追い詰める日本代表の姿があった。

 高い位置からの積極果敢なプレッシャー、鮮やかなボール回し、リスクを冒してゴールに迫る勇気。日本のサッカーが観る者を魅了し、観衆の心をつかんだ。試合後、スタジアムから起こったのは敗者を称える「日本コール」。マン・オブ・ザ・マッチにもMF香川真司が選ばれた。

 チームにいったい何が起きたのか。試合後のミックスゾーンでMF長谷部誠(ボルフスブルク)が詳細に明かしてくれた。ブラジル戦から2日後の17日。「監督が話したいと言ってきた」と、アルベルト・ザッケローニ監督に呼ばれ、矢野大輔通訳をまじえて“1対1”で話をした。

「監督は、僕たちなら世界のトップ相手にもできるのに『なぜ、やらないのか』と言っていた。監督が(ブラジル戦後に)『失望した』と言っていたのは僕たちに期待しているからで、それをヒシヒシと感じた」。指揮官が伝えたのは「チームとして戦うことの大切さ」、そして「個とチームのバランス」についてだった。

「監督はブラジルのどこが弱いかを分析して、それを練習に落とし込んでいたのに、僕らはそれをピッチ上で全然表現できなかった。個人個人でプレーしていくのか、それともチームとしてやっていくのか。メッシやネイマールのように、一人で3人抜いてゴールを決める効率よりも、組織として連動して崩すことによって世界で勝っていくという監督の確固たる信念があった」

 ザッケローニ監督が例に挙げたのが、2010年の南アフリカW杯で日本が見せたサッカーだった。MF阿部勇樹をアンカーに置いて中盤の守備を固め、1トップにはMF本田圭佑を据えた。自国開催以外で初のベスト16という快挙を成し遂げた一方、守備重視のサッカーは決勝トーナメント1回戦でパラグアイに0-0からのPK戦で敗れた時点で、一つの限界にも達した。

 世界で勝つために、当時のチームでは、あのサッカーが“正解”だった。しかし、日本が目指すべき道ではなかったのも確か。4年後のブラジルW杯では、日本らしいサッカーで、同じような、さらにはそれ以上の結果を残したい。本田はパラグアイ戦後、「内容はともかく勝ちにこだわって、そういうやり方でここまで来た。次は欲を出して、もっと攻めに行く姿勢を世界に見せる番じゃないかなと思っている」と言った。その思いは、岡田武史前監督のあとを引き継いだザッケローニ監督も同じだった。

「2010年のような戦い方をするのも一つの方法だと監督は言っていたけど、監督は『自分たちのサッカーを世界で見せたい、それで世界を驚かせたい、その中で勝ちたい』と言っていた。2010年を否定しているわけではなく、それも一つのやり方だけど、そうじゃない日本のやり方、強みがあると僕に熱く語ってくれた」

 指揮官の思いをチームメイトに伝えなければならない。長谷部はそう思い立ち、翌18日に選手を集めた。イタリア戦前日に行われた選手ミーティング。長谷部はみんなにザッケローニ監督の言葉、思いを伝え、チームの意志統一を図った。

 その結果が、この日のプレーに表れていた。「今日はチームとして連動していたし、守備の部分でも前の4人は特にがんばっていた。前田さん、(本田)圭佑がピルロを抑えようとしっかりとやっていた。そういうのがブラジル戦ではできなかった」。長谷部はそう言って力を込めた。

「監督がやろうとしているサッカーだったと思う」。イタリアと互角以上に渡り合い、あと一歩まで追い詰めた。確かに結果は出なかった。しかし、自分たちが目指すべき道を再確認できたことは、来年の本番を見据えたときに、単なる結果以上に価値のあるものだったかもしれない。「今日の試合は間違いなく日本代表のターニングポイントになると思う」。長谷部の言葉は、いつも以上に力強かった。

(取材・文 西山紘平)

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