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土壇場にこの日最高の仕掛け。決勝点をお膳立てした原口

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[7.28 東アジア杯 日本2-1韓国 蚕室]

 アディショナルタイム5分のボードが出た直後だった。スコアは1-1。第1試合の結果からそのままでも優勝の可能性は高かったが、ピッチの選手たちは最後まで、勝って優勝することしか考えていなかった。

 カウンターのチャンスでDF駒野友一(磐田)からパスを受け、試合終了間際とは思えない馬力を見せたのはFW原口元気(浦和)だ。怒濤のドリブルで韓国DFをかわし、シュート。GKが弾いたところにFW柿谷曜一朗が詰め、決勝ゴールが生まれた。

「センタリングか迷ったんですけど、打つことによって何かが起きるかと思ったので。そのまま入っちゃえば良かったんですが、カキくん(柿谷)がうまく詰めてくれたので良かったです」

 試合終盤の“大仕事”は所属の浦和でも今季何度も見せてきたプレー。アタッカーとしての強烈なメンタリティー、そして、土壇場でのスタミナを国際舞台でも示し、「89分間、守備をしていましたけど、最後、ああいう形で一つ仕事ができたのは、苦しい戦いの中で一つの成長の証かなと思います」と胸を張った。

 中国戦、オーストラリア戦と2試合を終えた時点で、FW登録選手7人中、柿谷、工藤壮人(柏)、齋藤学(横浜FM)、大迫勇也(鹿島)の4人がゴールを決めており、ゴールのない原口としては置いて行かれたという気持ちも少なからずあったはずだ。

 けれども、組織的なザッケローニ戦術の中で個のアピールだけにこだわることは決して評価を高めることにつながらない。「もっとやりたい、もっと自分のプレーを出したいという気持ちもあった」と言うが、まずはチームプレーに徹した。

 その理由の一つは、今大会が明確な答えのない、難しい戦いであったこと。指揮官が欧州組を中心とするコンフェデレーションズ杯組に絶大なる信頼を置いているのは周知のことで、大会前の時点では空いている椅子があるのかどうかすら怪しかったのだ。

 だからこそ、チームとしてまとまり、優勝することにこだわった。

「優勝に関しては誇りに思っていいと思う。優勝できなかったら、やっぱり海外組がいないと何もできないと思われるし、それがイヤだった。そこに関しては意地みたいなものがあった。チーム内でもそういう話をしていたから、ここで結果を残したのは非常にポジティブなこと。もっとJリーグに注目して欲しいし、これでJリーグが少しでも盛り上がっていけばいい」

 8月14日に行われるウルグアイとの親善試合に何人の選手が呼ばれるか。「優勝したことは、少しは食い込んでいける要素にはなったんじゃないかと思う」。今できることをやり通したプロ選手としてのプライドをのぞかせた。

(取材・文 矢内由美子)

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