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待望のニューヒーロー誕生、柿谷「チャンピオンは気持ちいい」

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[7.28 東アジア杯 日本2-1韓国 蚕室]

 自らの2ゴールで日本を初優勝に導いた。21日の中国戦(3-3)以来、2試合ぶりに1トップで先発したFW柿谷曜一朗(C大阪)が2得点。大会通算3ゴールとし、得点王にも選ばれたヤングジャパンのエースが、圧倒的な存在感で輝きを放った。

「優勝した気分が最高で、本当に久しぶり。アジア(06年のAFC U-16選手権)で優勝して以来で、やっぱりチャンピオンは気持ちがいいなと思った」

 前半25分、自陣からのMF青山敏弘のロングパスに反応し、最終ラインの背後を取る。「敏くん(青山)は広島でも(佐藤)寿人さんにああいうパスを出していたし、持った瞬間にそのイメージがあった」。両脇からDFに追走され、目の前にGKも飛び出してきたが、落ち着いて頭で前にトラップし、冷静に右足を振った。

「いいボール過ぎて緊張したけど、決められてよかった」。ワンチャンスを生かした先制点だったが、その後も韓国に押し込まれる展開が続いた。前半33分に失点し、試合は振り出しに戻る。後半は韓国のペースも落ちたが、柿谷自身はなかなかチャンスに絡めない。後半43分にはFW豊田陽平がピッチに入り、トップ下にポジションを下げた。それでも、「チャンスは絶対に1つ、2つあると思っていた」と、ラストチャンスを虎視眈々と待っていた。

 後半ロスタイム、左サイドを突破したFW原口元気がシュート。GKが前に弾いたボールが自分の目の前に来た。「トラップしようか迷っていて、心臓もバクバクで。GKの裏に走るか、止まって待つかの2分の1だったけど、瞬間でこっちかなと思ったらボールが来た。ホントに来てしまったという感じで、入ってくれと」。落ち着いて左足ダイレクトでゴールに流し込んだように見えたが、実際には緊張していたという。それを感じさせないのが、この男のすごいところだ。

 完全アウェーの中、韓国の観衆を2度にわたって黙らせた。韓国とは08年11月のAFC U-19選手権準々決勝で対戦し、0-3の屈辱的な大敗を喫した相手だった。7大会連続で出場していたU-20W杯への出場権を逃す苦い思い出。「昔のことは振り返らない」と話していた柿谷だが、過去の因縁を完全に断ち切る2発だった。

 それでも「あのシュート2本しか打てていないのが情けない」と、自分自身のプレーにはまったく満足していない。「決定率的にはいいかなと思うけど、裏に抜け出して、もう1点、2点取れたと思うし、落としのところのミスも多かった。Jリーグでミスをもっと減らして、また呼ばれたら成長したところを見せたい。この出来ではまだまだ」と反省の言葉が口をつく。

 アルベルト・ザッケローニ監督は「日本サッカー界にこれだけ良い選手が国内にいることを証明できた」と、若手主体の国内組で初優勝を飾ったことを手放しで称賛する。その象徴が柿谷だった。8月14日に行われるウルグアイ戦での代表入り、その後の代表定着、さらにはブラジルW杯でのメンバー入りと期待は膨らむ。しかし、本人は至って冷静だ。

「この大会はこれで終わりなので、次の代表に入ることではなくて、次の水曜日、Jリーグに向けてコンディションを整えること。それが僕が一番しなければいけないことだと思う。先を見てもよくないので、水曜日の試合のことだけを考えたい」。ザックジャパンに誕生したニューヒーローは地に足を付け、3日後に控えるJ1第18節・新潟戦だけに視線を向けた。

(取材・文 西山紘平)

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