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「今が“最高の中村憲剛”」絶好調のワケを紐解く独占インタビュー

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「超」攻撃サッカーが帰ってきた。風間体制2年目を迎えた今シーズン、リーグNo.1の得点力(48得点、第24節終了時)で、ゴールを量産している川崎フロンターレ。そのカギを握っているのは「トップ下・中村憲剛」だ。トップ下で攻撃を牽引する背番号14は言う。今が「最高の中村憲剛」だと――。ゲキサカ独占インタビューで激白した。

―J1の中断が明けた7月、素晴らしい内容で鹿島と浦和に勝ったものの、その後、なかなか波に乗れていません。
「悔しいですよ。せっかくいい感じでリスタートして、その後も勝ち続ければ、力を本物にできるはずだったわけで……。相手はうちに対して割り切って守ってくることが増えてきています。でも、そんなの関係ないくらい崩せば、相手もお手上げじゃないですか。そこを目指し
ているので、悔しいです」

―チャンスは作れているから、それほど深刻に捉えないほうがいいのか、あれだけのチャンスを作っているのに負けてしまうことは深刻に捉えるべきなのか。
「失点が多いのは、深刻に捉えるべきだと思います。押し込めているから、相手もカウンターの人数がそれほど多くない。それなのに、やられている。そこはチームとして危機感を持たなければいけないと思う。カウンターをさせないという意味でも、僕ら前の選手も、簡単なミスでボールを失ってはいけない。あと、当然のことだけど、決めるときはしっかり決めないと」

―素晴らしい内容なのに勝てなかった典型的な試合が第18節の湘南戦でした。
「あの前半は、点が取れていれば狙い通りというゲーム。いくつかいい攻撃が出来ただけでいつでも取れるだろう、っていう気持ちが生まれ、足が止まってしまった。足が止まると、結局、こわい攻撃ができなくなる。出して、止まって、探して……。相手からすれば楽ですよね。負けるときって結局、自滅しているんです。それが歯がゆい」

―個人のことで言えば、中断明けからトップ下に固定され、素晴らしいパフォーマンスを披露しています。今季の序盤にトップ下で出ていたときは、ボールをなかなか貰えず苦しんでいた。それがなぜ、今は上手くいっているんでしょう?
「ダブルボランチが本当に良くなっていることが大きいです。特に(山本)真希がフィットしてきたのが大きいと思いますね。最初の頃は横パスが多かったけど、今はまず前を見るようになった。僕も『もっと早く』とか『常に前を向いてくれ、そうしないと怖くないぞ』って声を
掛けてきたけど、たぶん真希も意識してくれて、逃げずに入れられるようになった。今はチーム全体で堂々と回せるようにもなってきたし、相手にとって嫌なボール回しができるようになってきましたように感じます」

―自分のプレーについては?
「頭の中は変わってなくて、味方が生かしてくれるようになったっていう感覚のほうが大きいかな。ここ4~5年、バルサ(FCバルセロナ)を見てきてイメージが蓄積されていますからね。あと、コンフェデ杯に行っていた6月の1か月間でチームがしっかり準備できたのも良かったし、帰ってきてすぐの仙台戦で、『全然動けないな』って思いながら、いつ、どうやって動くかを意識してやってみたら、結果を出せたのも大きかった」

―パワーを溜め込んで、ここぞという場面で発揮する、「出力」というやつですね。
「そう、出力。誤解を招くといけないんですが『そんなに動かなくてもやれるじゃん』と思えた。今まで無駄に頑張りすぎていたかなって(苦笑)。最近は厳しくマークに来られても、あんまり気にしないというか、『いくらでも外せるな』っていう感覚があります」

―「出力」のコツを掴んだことでゴールも連発。二桁得点も視野に入ってきましたね。
「でも、意識し過ぎるとプレッシャーになっちゃう。ゴールゲッターなんて、自分のキャラじゃないんで(苦笑)」

―でも、06年は二桁得点をマークしています。
「あの頃はイケイケでしたからね。今は変に落ち着いてしまった。ボランチの頃にパスを出すことに楽しさを見出しすぎたのが原因かなって思います。でも、もともとトップ下の選手だったし、子どもの頃は点をたくさん取っていたわけだから、何戦何発という状況が得点感覚やゴールの喜びを取り戻すきっかけになればいいな、って思っていますけど」

―じゃあ、二桁宣言しちゃいましょうか(笑)。
「いやいやいや、それは無理(苦笑)。有言実行することで引き出されるものもあるんでしょうけど、責任から逃げているところもあって。他に取るべき人がいるでしょって思っちゃう自分がまだいる。ダメなんでしょうけどね、本当は。ボランチをやっていたせいです」

―ボランチをやっていた時期が長すぎた?
「長すぎたっていうか……。ボランチこそ天職だって思っていたから。それがまさか再びトップ下でプレーすることになり、こんなにハマるとは思わなかった。正直言って『トップ下・中村憲剛』に対して、他でもない自分自身があまり評価していなかった。J2だった1、2年目にトップ下で潰されたイメージがこびりついていて、厳しいなって」

―でも今は、トップ下のスタイルを完全に自分のモノにしたと。
「32歳になってやっと。ちょっと遅すぎるけど(苦笑)。コンフェデのときにも話しましたけど、サッカー選手として今が『最高の中村憲剛』だって感じています。すごく面白いんですよ。サッカーがさらに楽しくなってきている」

―自身のキャリアピークのときにタイトルまで掴めれば、言うことなしですね。
「間違いないです。今のJリーグはどこが優勝してもおかしくないし、僕らもどこが相手でも勝てる自信がある。ケガ人が多い今こそ、踏ん張りどころ。このさき勝ち続けていって、スタイルと結果の両方を掴む最高のシーズンにしたいと思います」

(取材・文 飯尾篤史)


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