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[MOM900]國學院久我山FW松村遼(3年)_決勝3ゴールのエースは塾に直行

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.16 全国高校選手権東京都予選B決勝 駒澤大高 0-4 國學院久我山 味フィ西]

 その活躍を、チームを率いる李済華監督も絶賛する。

「勉強を選ぶか、サッカーを選ぶか。そんな悩みを抱える高校生にとっては見本。それは、悩むことじゃない。彼を見れば、『勉強もサッカーも両方できる』と親も言えるし、子供にとっても逃げ道がないでしょう」

 彼とは、國學院久我山のFW松村遼のことだ。國學院久我山高サッカー部の主力には、サッカー推薦で入ってきた生徒が多い。その中で、松村は中学生のときに國學院久我山に入学し、以来、学業でも優秀な成績を収め、学校の掲げる『文武両道』の精神を体現し続けている。16日に行われた選手権の東京都予選B決勝の駒澤大高戦では、ハットトリックを達成。4-0の勝利に大きく貢献し、チームを2年ぶり5度目の決勝進出に導いた。

 その得点センスは圧巻だ。前半14分に豪快な右足のミドルシュートで先制点を挙げれば、同27分には左足でゴールネットを揺らす。さらに後半25分にはCKからヘディングシュートをゴールに突き刺したのだ。左右両足、そして頭でもゴールを決めたストライカーは、ここ数か月で急激に力を付けてきたという。

 村松自身も「1点目のゴールとかは、前までの自分だったらシュートを打っていなかった。最近のシュート意識の高さが、点につながったんだと思います」と認める。その成長を促したのは、選手権という舞台のようだ。

「1年のときは大会登録の25人のメンバーに入ったのですが、一度もベンチには入れませんでした。昨年はこの西が丘で(負けて)、悔しい思いをして『今年こそは全国に出る』っていう気持ちがありました。それが前面に出たことが、結果につながったと思います」

 悔しさをバネに、松村は成長してきた。選手権出場を決めた日くらいは、喜んでいいものなのかと思われた。だが、李済華監督は試合後に選手たちを集めて「この30分くらいは喜んでいい。そこからは全国に向けて、それぞれの受験に向けて、気持ちを切り替えよう」と、声を掛けていた。

 それでも一晩くらいは、喜びを噛みしめたいのではないか。試合後の予定を尋ねると、3ゴールを挙げたヒーローは少し時間を気にしながら「今日もこれから塾があるんですよね」と答えて、報道陣を驚かせた。

 目標に邁進する松村は、1か月半後、18歳で迎えることになる選手権に向けて「とにかくつなぐサッカーをして、日本一になりたい」と語る。そして「決勝の1週間後にはセンター試験ですが、自分の中で1月までサッカーをやるということは、高校に入る時から決めていたので。大変だとは思いますが、絶望的にはなっていないですよ」と、白い歯をこぼした。

(取材・文 河合拓)
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