beacon

[MOM197]阪南大DF飯尾竜太朗(4年)_強行出場の主将が攻守でチーム救う

このエントリーをはてなブックマークに追加

2012年度第36回総理大臣杯全日本大学トーナメント
[大学サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[7.14 総理大臣杯準決勝 早稲田大1-2阪南大 金鳥スタ]

 延長戦を制した喜びが充満する中、選手を集めた阪南大の須佐徹太郎監督は開口一番、「飯尾のあのクリア、最高だったな」と話しかけ、円になった選手から拍手が沸いた。総理大臣杯の準決勝、早稲田大と1-1で迎えた後半終了間際、GKが飛び出した場面でシュートを打たれたが、右DF飯尾竜太朗(4年=神戸U-18)がしっかりとゴールをカバー。「それまでのピンチで、(GK原田)直樹が良い飛び出しで止めてくれていた。あいつが出た後のカバーは、意識していた。(思い切りよく)飛び出しても(その後を)何とかしたいと思っていた」と話した飯尾がスライディングでシュートを弾き返し、チームは九死に一生を得た。取材中も須佐監督は「飯尾のストップ。本当に、本当にあれがすべてだった」と繰り返し、チームを救った主将の働きに賛辞を惜しまなかった。

 飯尾の活躍は、それだけではなかった。試合開始早々の6分、右サイドでボールを持つと、思い切りの良いアーリークロスでビッグチャンスを演出。相手の隙を見逃さない、怖さのある攻撃だった。20分には同様の形から、FWで出場した工藤光輝(3年=札幌U-18)がクロスに飛び込んで先制ゴールを挙げた。「常に狙っている形。同じサイドの可児(壮隆)が相手を引き付けてスペースを作ってくれた。サイドでフリーでボールを持つことができたので、落ち着いて狙って蹴れた。結果が出て良かった」と手ごたえのある先制アシストとなった。

 攻守両面で活躍した飯尾だが、実は腰に痛み止めの注射を打っての強行出場だった。準々決勝でボールをクリアした際、体がライン際からピッチ外へ出たが、そのときに陸上トラックのレーンを仕切る金具で腰を痛打した。打撲だったが痛みがひかず、痛み止めの注射を打ったが、今度は経験もしたことのない注射の痛みに涙が出た。「何でもないケガなんですけど、注射が効いてくるまで患部が腫れて……痛かったですね」と笑って話すのは、勝利が痛みを軽減したのかもしれない。当然、準決勝でベンチスタートになる可能性はあったが「絶対にやらせてくれと言ってきた」(須佐監督)という責任感で堂々と先発し、ピッチで躍動した。

 チームを束ねる主将としても存在感は大きい。試合は全体的に阪南大のペースで進んだが、後半に早大に主導権を奪われかけて同点弾を許したことが苦戦の要因となった。「前半は自分たちがボールを支配して崩せていたけど、後半は受ける形になってしまった。(2失点で追いつかれた2回戦の福岡大戦など)今までは失点しても巻き返せているけど、ああいう苦しいときに無失点で乗り越えて、主導権を持ち続ける戦いをしたい」と飯尾はチームの反省材料を的確に指摘した。

 16日に迎える決勝戦では、日本一のタイトルを狙う。飯尾は春先に負傷で戦線を離脱。この大会には間に合ったが、自身が不在の折に健闘したチームメートの何人かが反対の立場で、この大会では応援に回っている。「あいつら、悔しいとは言いませんけど、それは明らか。そういう奴らのためにも勝ちたい」と語気を強めた。阪南大は、準決勝で警告を受けた左DF二見宏志(3年=奈良育英高)が次戦で出場停止。飯尾を中心としたチームの結束が勝利への必須条件となることは間違いない。インカレ(全日本大学サッカー選手権)覇者の専修大とのファイナルを制すれば、そこにはカップを掲げる日本一の主将の姿があるだろう。

(取材・文 平野貴也)
▼関連リンク
【特設ページ】第36回総理大臣杯

TOP