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[MOM289]国士舘大DF石川喬穂(4年)_誰よりも走る「国士の魂」

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[大学サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[12.22 大学選手権準決勝 国士舘大2-0鹿屋体育大 味フィ西]

 国士サッカーを162cm、60kgの身体全体で体現しているのが、右SB石川喬穂主将(4年=広島皆実高)だ。1対1で抜群の強さを見せ、90分間誰よりも走り、勝利への思いを全面に出して戦う。この日も切り替え速く右サイドをアップダウン。攻撃でクロスを上げたかと思えば、あっという間にディフェンスラインまで戻って相手の好機を潰す。そして味方がボールを奪えば、相手選手を置き去りにしてまた右サイドを駆け上がる。90分間の熱闘のあとも「(走っていて)途中から自分の中で気持よくなってしまった。足とかも全然攣る気配がなかった。(前方の)サイドハーフ疲れていたんで、全然追い越して行けると思っていた」と余裕の表情。スタンドの観衆も日本代表DF長友佑都のようにピッチを走り回る小さなSBに熱い視線を注いでいた。

「上手い選手ではないと自分では思っている。ピッチに立って、選手に常に声をかけて、90分通して戦える姿勢を見せて、チームメートにも伝染していけばいいというのが目標」と石川。だからこそ、走って、泥臭く身体を張り、勝利への思いをチームメートに伝え続けた。この日「あそこまで支配されてというのは予想していなかった」(石川)というほど鹿屋体育大にボールを支配されながらも耐えて無失点で終えたのは、チームの先頭に立って走り回った石川をはじめとした守備陣の奮闘があったからだ。

 細田三二監督が「身体は小さいですけれども、凄い統率力で引っ張っていく。自分でも絶対に手抜きをしないプレーヤー」と評する「国士の魂」石川。今シーズン序盤は怪我もあって先発を掴むことができていなかった。それでも「小目標は不動の右サイドバックを取る。中目標は大学でタイトルを取る。そして大目標が夢であるプロになる」と諦めずに、人一倍トレーニングを行ってきた。かつて先輩から「オマエ、プロは無理だ」と言われたこともあったというが、決意は変わらず。自身を追い込み続けてきたことが今につながっている。

 彼の先発定着とほぼ同じくして快進撃がスタートした。小目標を達成して、中目標の日本一まであと1勝。大学選手権を制し、プロ入りの夢ももちろん掴むつもりだ。「練習は人一倍やってきたと言える自信があって、90分走りきれるというのは、自分が今までやってきたことが自信となり、動けていることにつながっている」と胸を張る。

 12月25日の決勝終了後に国立競技場で優勝カップを掲げるイメージはできあがっている。広島の名門・広島皆実高2年時に国立で高校選手権優勝を経験。当時は登録メンバーにこそ入っていたが、試合で活躍することはできなかった。決勝もベンチ外。だからこそ25日の決勝に懸ける意気込みは特別だ。「優勝したときは嬉しかったんですけど、自分の中で『いつかここに戻ってプレーして優勝したいな』と。凄く国立のピッチに立ちたいという思いがあった。国立のピッチに立ってカップを掲げるというイメージは(広島皆実に時に)見ているんで、自分の中でインカレが始まった時にあそこで掲げるイメージができている」。そのイメージ通りに国立で優勝カップを掲げることができるか。私生活、プレー面でもチームの模範になってきた主将が最後の1試合、体力が尽きるまでチームのために走りぬく。

(取材・文 吉田太郎)
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