beacon

[総体]“三浦旋風”止まらず!初出場・三浦学苑が静岡学園撃破し4強へ!!

このエントリーをはてなブックマークに追加

[8.2 全国高校総体準々決勝 三浦学苑3-1静岡学園 松本平広域多目的球技場]

 平成24年度全国高校総合体育大会「2012北信越かがやき総体」サッカー競技(長野)は2日、準々決勝を行い、初出場の三浦学苑(神奈川2)がFW高城翔伍(3年)の2得点の活躍などによって、前回大会準優勝の名門・静岡学園(静岡)に3-1で勝利。初の全国大会挑戦で大躍進を遂げている三浦学苑は3日、決勝進出を懸けた準決勝で立正大淞南(島根)と激突する。

 静岡学園を撃破した試合直後、取材陣に囲まれた三浦学苑の枝村隼人監督は「一言でいうと、『信じられない』」。C大阪MF枝村匠馬の兄でもある指揮官は、成し遂げた快挙に驚きを隠さなかった。神奈川県リーグ2部にあたるK1リーグで戦う三浦学苑に対して静岡学園は全国リーグのプレミアリーグに所属し、3回戦では岡山学芸館(岡山)に9-0で圧勝しているV候補。加えて三浦学苑は今回が同校史上初の全国大会出場だった。経験値では大きな差があったが、枝村監督は「前回の9-0の試合も(静岡学園は)運動量は少なかった。ウチは蹴るんで、ファーストのところで触れるかとセカンドでどれだけ拾えるか。守備ではボールを取りに行ったら抜かれる。数的不利になったら粘り強く守ろうと思っていた」。3回戦の静岡学園の試合を全員で現地観戦し、宿舎へ向かうバスの中でもその映像を流してイメージを植えつけた。その徹底ぶりと三浦学苑の備えている技術、運動量が大一番での勝因となった。

 試合は前半6分にいきなり動く。三浦学苑は左SB橋本直也(3年)のパスから左サイドを突いたFW戸邉凱也(3年)の折り返しを、高城が右足アウトサイドで押し込んで先制点を奪う。だが、静岡学園は直後の7分、相手のプレスの甘さを突いて持ち込んだMF長谷川拓哉(3年)のゴールによってあっさりと同点に追いついた。しかし、川口修監督が「動けなかった。全部の出足で負けていた」と振り返ったように、この日の静岡学園は完全に動きの精彩を欠いていた。三浦学苑の高城やFW野村徹(3年)のスピードを警戒しすぎたか、ディフェンス陣が引きすぎたこともあり、前線で抜群の存在感を見せていた戸邉を起点に次々とスペースを突いてくる相手に振り回されてしまった。

 三浦学苑は14分、MF栗原奨吾主将(3年)の左CKのクリアボールを拾ったMF木村哲太(3年)が、左足シュートをゴール右隅へねじ込んで勝ち越しに成功する。その後も三浦学苑はセットプレーでの守りが明らかに甘い静岡学園ゴールに次々とシュートを撃ち込んでいった。静岡学園は2点目の失点後からようやく落ち着いてボールを動かし始め、序盤に多発していたイージーミスも減少。そして今大会得点王争いを独走しているFW木部未嵐(3年)が個の高さを活かしてシュートチャンスをつくり出そうとしてくる。ただ、三浦学苑はCB宮坂瑠(3年)が「(静岡学園も)同じ年代の高校生。力の差は感じなかった。みんなでプレスを頑張っていたし、やられる気はしなかった」と話したように、積極的なプレスで相手ボールを足に当て、また宮坂とCB辺見雄飛(3年)のコンビを中心とした最終ラインが冷静に相手の攻撃を跳ね返していく。

 後半シュートの本数を増やした静岡学園だったが、先にスコアを動かしたのは再び三浦学苑だった。後半13分、野村の左クロスを胸でコントロールした高城がそのまま左足で貴重な追加点。静岡学園はゴールを奪い返すためプレッシャーを強めるが、三浦学苑は木村やMF若林大輝(3年)、栗原が絶妙なボール捌きで相手をかわし、簡単にボールを渡さない。すると、先に足が止まったのは、追い込まれている静岡学園の方だった。それでもMF渡辺隼主将やMF柴田則幸(3年)が歯を食いしばってボールを追い、25分にはMF名和太陽(3年)のスルーパスから交代出場のMF須藤駿介(2年)が右足シュート。終了間際にも交代出場のMF瀧崎貢(3年)の折り返しから名和が決定機を迎えたが、運動量が激減したチームにゴールは生まれなかった。

 神奈川県予選準決勝で前回大会日本一の桐蔭学園を3-0で下し、この日、同準優勝の静岡学園も撃破した三浦学苑イレブンは喜びを爆発。栗原主将は「あそこまでできるとは思っていなかった。でも静学よりも走れば勝利につながると思っていた。最後まで走りきることができた」と気温33度の酷暑の中、70分間走りきったチームメートたちを讃えていた。

 主力の多くは1年生時から公式戦を経験。その年の選手権予選で強豪・桐光学園と延長戦の熱戦を演じると、昨年の選手権予選は大半が2年生レギュラーという若いチームで初の決勝進出を果たした。今春にはその躍進に心動かされた新1年生約60名が大量入部。激戦区・神奈川の中で凄まじい勢いで台頭してきている。栗原主将は「昨年決勝までいった9人が変わらず出ている。(今年は)神奈川でも上位にいけるし、全国でも戦えると思っている。あの経験がチームを強くしている」。そして期待の世代によって1979年の創部からの悲願を果たした今夏、三浦学苑は全国舞台で徳島商(徳島)、一条(奈良)、前橋商(群馬)、そして静岡学園と伝統校を連破してすでに4勝を挙げた。初陣での日本一まであと2勝。宮坂は「このまま突き進みたい」。コーチングスタッフも“やんちゃ”と認めるチームだが、まとまりも大きな武器“三浦旋風”はまだまだ止まらない。

(取材・文 吉田太郎)

▼関連リンク
【特設ページ】全国高校総体2012

TOP