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[MOM671]聖光学院MF後藤一真(3年)_初優勝校の“小さな巨人”

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.3 全国高校選手権福島県大会決勝 聖光学院2-0福島工 開成山陸上競技場]

 ヒーローインタビューでマイクを向けられると、嬉しさに押し潰されて声が出なかった。涙が止まらない。主将を務めるMF後藤一真(3年)は身長166センチの小さな体を震わせた。聖光学院の全国初出場に大きく貢献した。スタートポジションはトップ下だが、自由に動く。自慢の運動量で縦横無尽だ。自陣のPA横で味方GKからパスを受けたかと思えば、中盤で組み立てに参加し、最後はゴールまでラストパスを出す。後藤は自身の持ち味を「点を取ることで貢献したいという選手もいると思いますけど、僕はチームが勝つためにより確率の良い選択をしたいタイプ。体は小さいけど、運動量には自信があるし、ファーストタッチは幼い頃から気を使っているのでこだわりがある」と話した。

 決勝戦の序盤は劣勢に立たされたが、聖光学院は後藤の足下でボールを落ち着かせて少しずつリズムを作り出した。後藤は前半終了間際にゴール前へ浮き球を送ってアシスト。苦手の左足だったが、相手CBが負傷でピッチを離れている時間を逃さずに勝負をかけた好判断が光った。さらに後半の立ち上がりには「セットプレーには自信がある。どんなに試合の流れが悪くても、セットプレーで点を取れば良いと監督にも言われている」と必勝パターンにしているCKからCB野崎祥太のヘディング弾をアシストした。

 3年前、全国大会に出場経験のない聖光学院の門をたたいたのは「県大会で優勝を狙えるチームだし、山田(喜行)先生が人間力向上を目標に掲げているので、そこで成長したかった」というのが理由。いかにも真面目というタイプには見受けられないタイプだが、キャプテンマークは飾りではない。山田監督が「あいつは人間として素晴らしい」と称え、小学校からチームメートの野崎も「結構うるさくて騒ぐ奴だけど、オンとオフの切り替えがすごい。頼れるキャプテン」と評する小さな巨人は、ムードメーカーと精神的支柱の2役を担う。次は全国の夢舞台。少し恥ずかしそうな仕草をするが、話をするときには目に力がこもる。「全国に出て、自分たちの力をまず出すことが大事。一つでも多く勝ちたいです」。殊勝なコメントの裏に力強さがにじんだ。

(取材・文 平野貴也)
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