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[MOM682]東海大仰星FW日下部孝将(3年)_“浪速のスピードスター”が全国決定弾!

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.17 全国高校選手権大阪府大会決勝 東海大仰星1-0近大附 長居第2]

 雨に濡れた芝でぐいぐいと加速するパスにFW日下部孝将が快足を飛ばした。スピード溢れるレフティーは、次の瞬間に雨音を切り裂く大歓声を生んだ。

 東海大仰星は後半13分、カウンター攻撃からMF田中翔が長い距離を駆け抜けるスルーパス。狙った先の日下部に対して相手のマーカーとカバー役が反応したが、田中は「手前の相手の裏を通せば大丈夫。日下部を信じて出した」と手ごたえを得ていた。その期待に日下部が応えた。背中で進路をブロックしにかかったマーカーを脇から追い越し、カバーに来た相手をかわす。さらに前に出てきたGKの動きを見て、冷静にシュートを流し込んだ。

 この日はMF安井修平が出場停止だったため田中が左MFで起用されたが、元々は日下部と田中はツートップを組む間柄。日下部も「田中が相手を1人かわした瞬間に出してくれると思った」と振り返るように、あうんの呼吸で生まれたゴールだった。

 高速レフティーは、小学生時代は左MFが主戦場だった。中学時代にスピードを評価されてFWに転向。「まだまだ程遠いんですけど」と遠慮がちに前置きし、憧れの選手にメッシや香川真司の名を挙げた。「自分の特徴である裏に抜けるところが上手いし、足下で受けてからドリブルでも突破ができるから」と日々、彼らのプレーを意識して向上を図っている。裏に抜けるプレーの特徴はこの試合でも随所に光り、中務雅之監督も「まだヘッドダウンしちゃうことが多いんだけど、縦の速さは良い。自分の良さを意識してやってくれたと思う」と評価を与えた。

 ピッチ外では笑いを生み、ピッチ内では歓喜を生む男だ。普段は少し抜けたところもあり、チームを和ませるという。田中は「冬にドラム缶でたき火をするんですけど、誰かが『缶の中で鉄の棒と木の棒をこすり合わせて火を起こすんだぞ』と冗談で言っていたら、次の日にあいつが一人でそれを本当にやっていて、みんなで笑いました。すごく賑やかってわけじゃないけど、ちょっとみんなと違う感覚を持っていて面白い奴です」とその素顔を明かした。日下部自身はFWとして今大会でわずか2得点という結果に不満を示したが、田中は「あいつは本当に大事な場面で点を取ってくれる」とあらためて絶大な信頼を寄せた。

「どんな試合でも点が取れるFWになりたい。仰星に入学してから、以前に仰星が全国大会に出たときの試合をビデオで見た。そのときに、あの舞台でやりたいと思った。選手権の全国大会は1番の憧れの場所。まず1勝して、そこから勢いに乗っていきたい」――“浪速のスピードスター”は、次なる獲物に目を向けた。全国の舞台でも歓喜を起こすか注目だ。

(取材・文 平野貴也)
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