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[MOM683]四日市中央工FW浅野拓磨(3年)_前回全国得点王が県得点王決めるV弾

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.17 全国高校選手権三重県大会決勝 四日市中央工1-0三重 鈴鹿スポーツガーデン]

 今大会11得点目。全国大会出場と自身の県大会得点王を決める一撃が後半33分に生まれた。左中間からDF間を抜けようと仕掛けたFW田村翔太(3年)の突破からこぼれたボールが、PAでフリーのFW浅野拓磨(3年)が足元へ。「田村は出す感じがなかったですけど、中で待っていないといけないので。そうしたらゴチャゴチャっとなった後にボールがこぼれてきた」。お互い意図していなかったものの、スルーパスのような形となった“ラストパス”をフリー受けた浅野は右足で決勝ゴールをねじ込んだ。

 得点数で並んでいた田村翔を1点上回り得点ランキング首位に立つ一撃。そして決勝ゴールとなる千金弾を決めたFWは、73分でようやく決めた1点にまずはピッチに大の字になってホッとした表情を見せた。そしてチームメートの下へ走りだして喜んだ浅野は「まだまだですね。決めはしましたけれど、田村が頑張ってくれたからの得点。去年の成績(全国準優勝)は自分的にはあまり考えずに、自分らの年なので自分たちなりに全国で成績を残そうと思っている。そうやって臨む中で去年の成績を越えられるように。まずはその切符を手に入れなければ話にならない。優勝してその切符を手にすることができたことは良かった」。

 この一年間は全国選手権得点王として、注目の中でプレーしてきた。今春には日本高校選抜として欧州遠征を経験し、U-18日本代表にも選出された。だが、7月初めに鎖骨骨折の重傷を負い、全国高校総体はピッチの外から仲間たちの戦う姿を見守るしかなかった。浅野不在のチームは、V候補として期待されながらも初戦敗退。屈辱を味わった。

 樋口士郎監督は「(欠場の)責任も感じていたと思います。(その中で)昨年からメンタル面で成長した」。本人も敗戦直後は下を向いていたが、「サッカーができない時はつらかったんですけど、そういう経験も大事。普段できない経験ができたと思っている。サッカーできなかった時期が長かったので、できるようになった時は喜びと楽しさでいっぱいだった。その喜びを忘れないでやっていきたいです」。8月下旬の復帰からうっ憤を晴らすようなプレー。チームはプリンスリーグ東海1部を過去最高の3位で終え、選手権県大会も苦しみながら浅野の一撃でタイトルを守った。全国大会でもサッカーができる喜びを噛み締めながら、そして総体の雪辱の思いもぶつけて戦う。

 試合後は地元の子どもたちや女子高生からのサイン攻め、そして写真撮影に列ができていた。「前回大会得点王」は全国大会でさらなる注目とプレッシャーの中でプレーすることとなる。進路として決まっているサンフレッチェ広島の足立修スカウトからは試合後に「全国大会2年連続得点王」「得点王を取って、(J1得点ランク首位の佐藤)寿人と一緒に得点王コンビでやってほしい」と期待を寄せられた。もちろんその期待に応えるつもりだが、まずは一戦必勝。「去年は自分が点取るという気持ちが強くなりすぎた。勝つということをまずは第一に考える。勝った試合が多ければ多いほど、自分も得点する回数は増えると思う。点取るということだけに執着せずにチームが勝つことを考えていきたいです。その中で最低1試合1点でやっていきたい」。2回戦から登場することが決まっている四中工が決勝まで勝ち上がれば、最低でも5得点。「県大会よりも伸び伸びできると思う」という全国大会でもチームをゴールで救い、今年こそ日本一を勝ち取る。

[写真]後半33分、四中工FW浅野が右足で決勝ゴール

(取材・文 吉田太郎)
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