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[MOM703]長崎総科大附GK田中佑昌(3年)_166センチの頼れるPKストッパー

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[12.31 全国高校選手権1回戦 常葉学園橘0-0(PK4-5)長崎総科大附 フクアリ]

 極めて重要な意味を持つ場面だった。80分をスコアレスで終えて迎えたPK戦。先攻の長崎総科大附高は、2番手のDF中村友哉(3年)のシュートが左ポストを叩いていた。ここで後攻の常盤学園橘にゴールを許せば、チームメイトにかかる精神的なプレッシャーは大きくなる。ゴールを守るGK田中佑昌(3年)は、キックの前にかなりの間を取った常盤学園橘のFW島田隼希(3年)のシュートに対し右に飛び、ボールを枠外へ弾き出した。その後、両チーム4人の選手が決めて迎えた6人目。FW宗中恭平(3年)が強烈なシュートを突き刺すと、続く相手の6人目のシュートを、PK戦で初めて左に飛んだGK田中がセーブ。選手権初出場の長崎総科大府に、初勝利を呼び込んだ。

「みんなは80分間、走って頑張ってくれた。疲れていない自分が頑張りたかったし、PKを止めてやっと貢献できたかな」と、試合後に田中は笑顔を見せた。定方敏和監督も「田中さま、さまでした」と、2本のPKを止めた166センチの守護神に感謝した。

 PK戦には「自信があった」と田中は言う。島原一中時代には全国中学校サッカー大会に出場し、決勝まで勝ち進んでいた。決勝で静岡学園中に0-1で敗れたが、トーナメントの3回戦と準決勝は、PK戦の末に勝ち上がっていたからだ。「PKは心理戦。相手を見て情報を得て、駆け引きをすること」と、極意を話す。常葉学園橘の選手は、キックの前に間を取る選手が多かったが「逆に自分にとって良いと、自分では思ってやっています」と、やり難さを感じなかったと明かす。

 長崎総科大附にとって、選手権での初勝利になったが「80分間走ってくれたチームメイトのおかげ」と謙遜する。だが、80分の中でも、田中は再三の好セーブを見せていた。常葉学園橘は、セットプレーから183センチのDF石川大輔(3年)のヘッドというパターンを持っていたが、的確なポジショニングで後半9分、同38分のピンチを凌ぎ切った。

「小学校の頃は大きくて、小6のときにGKがいなかったので始めました。でも、中学になってからは身長が伸びなかった」と、苦笑する。小柄だからこそ、工夫を重ねてゴールを守ってきた。決定的なセービングを可能にしたポジショニングも、そうして身に着けたものであり、「あいつは声を出して、指示で守れる」と定方監督が評価したコーチングも、「自分が声を出すことで、守りやすくなるから」と磨いてきたものだ。

 チームにとって初の選手権だが、あくまで目標は中学時代、あと一歩届かなかった全国制覇だ。「中学、高校ではチームメイトは違いますが、今の仲間と一試合でも多くやりたい。試合をやるからには勝ちたいし、優勝したい」と、言葉に力を込めた。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 河合拓)

【特設】高校選手権2012
連載:高校マン・オブ・ザ・マッチ

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