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[選手権]V候補同士の壮絶攻防戦!野洲の猛攻を鉄壁の守りで封じた青森山田が、PK戦制し2回戦進出!!

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[12.31 全国高校選手権1回戦 青森山田1-1(PK4-2)野洲 駒沢]

 第91回全国高校サッカー選手権は31日、1回戦を行い、駒沢陸上競技場の第2試合では青森山田(青森)と野洲(滋賀)の優勝候補同士が激突。1-1で突入したPK戦の末、青森山田が4-2で制し、修徳(東京A)と対戦する2回戦へ進出した。

「相手よりも絶対に勝ちたいんだという気持ちは自信持っていけ、と。その気持ちで負けるな、最後はそこだと。その気持ちの差で最後はPKを取ってくれたんじゃないかと思います」。青森山田の黒田剛監督は圧倒的にボールを支配されながらも勝利した大一番をそう振り返り、主将のMF椎名政志(3年)も「(上回ったのは)気持ちですかね。ゴール前で身体を張った場面もあった。ベンチ、スタンドからもみんな声を出し続けて一丸となって戦った結果だと思います」と胸を張った。

 アクシデントを乗り越えた。青森山田は前半17分にGK野坂浩亮(3年)が相手アタッカーと激しく交錯。腹部を強打し、ピッチに横たわった守護神は10分後にも再びうずくまってなかなか立ち上がることができず、前半のアディショナルタイムは異例の9分を数えた。前半は痛みに耐えながらもゴールマウスの前に立ち続けた野坂だが、プレー続行不可能と判断されてハーフタイムに交代し、すぐさま病院へ。青森山田は2年生GK田中雄大が後半40分間ゴールを守ることになった。

 守護神が負傷退場するアクシデント。また、チームは黒田監督が「(プレミアリーグで)ヴェルディ、コンサドーレ、エスパルスと強豪チームと戦いましたけれど、きょうの試合だけ見ると野洲の方がボールを動かすのは上手いと感じましたね」と絶賛し、ゲーム主将を務めた11年U-17W杯日本代表SB室屋成(3年)も「(野洲は)映像で見ていてボールを持たれることは予想していたんですけど、滋賀の決勝とか何で相手はリトリートするのかな、前から行けば絶対取れるだろうと思って実際にやってみたら全然取れなくて、ショートパスしながらも2列目からも飛び出してくるので怖くてプレッシングできなかった」と舌を巻いた野洲の個人技、パスワークに翻弄されかけていた。

 野洲は名古屋グランパス内定の11年U-17W杯日本代表MF望月嶺臣(3年)を中心にボールを動かし、次々とスルーパスをPAへ通してくる。中盤で食いついてくる相手を個人技やヒールパスで外すとその度に15,008人の観衆が沸いた。前半半ばまでは相手のミスを誘発してショートカウンターを繰り出していた青森山田が試合の主導権を握っていたが、野洲の攻撃力と切り替えの速い守備は想像以上。それでも9分が表示された前半アディショナルタイムの48分、青森山田は敵陣でのインターセプトからMF池上丈二(3年)が右足シュートを叩きこんでリードを奪う。

 前半を0-1で折り返した野洲は後半10分過ぎから右SBとして先発していた武田侑也(3年)のポジションを上げて反撃の色を強めると14分、こぼれ球を拾って右サイドをえぐった武田のラストパスを左MF大本祐槻(3年)が押し込んで同点に追いついた。青森山田は22分に左CKからCB山田将之(3年)が放った決定的なヘディングシュートが左ポストを叩くなど、勝ち越すことができなかったが、直後に野洲MF高野登志基(3年)にGK不在の無人のゴールに蹴りこまれたシュートを室屋がスーパークリア。この後もPAまでボールを運ばれる場面は何度もあったが、山田将やCB小松崎雄太(3年)が相手のラストパスを必ず足に引っ掛けてゴールを許さない。

 7割、いや8割ボールを支配していた野洲だが、攻めても、攻めても緑色の壁に跳ね返された。青森山田がゴール前で見せたボールへの執着心、集中力はさすがの一言。相手を上回る守備から攻撃の切り替えの速さや、ロングボールからなだれ込むようにゴールへ迫るなど、攻撃面での迫力も見せた青森山田だが、それ以上に室屋が「失点してもみんな落ち着いてプレーしていたので、それが最後キーポイントだったと思います。みんな集中力を切らさなかったのは良かった」と振り返る集中力と好守がチームに2回戦への切符を掴ませた。 

 1-1で突入したPK戦で青森山田は1人目・椎名の左足シュートが野洲GK尾本修二(3年)にストップされたが、相手の2人目・武田のシュートを交代出場のGK田中が左へ跳んで止め返す。3人目の高野も失敗した野洲に対し、青森山田は各選手がボールをセットしてから5秒間置いて蹴る独特のスタイルで2人目の室屋から3人連続で成功。最後はFW林雄紀(3年)が右足シュートを冷静にゴール左へ流し込んでV候補対決に決着をつけた。

「こうやって苦しい試合をしながら勝ち上がって行くほうが、今後につながる」と室屋。難関となった第一関門を苦しみながらも突破した青森山田が、悲願の初Vへ突き進む。

[写真]PK戦勝利の瞬間、青森山田イレブンが歓喜のダッシュ
(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 吉田太郎)

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