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[MOM718]星稜FW采女優輝(3年)_県予選メンバー外からスタメン奪取…ストライカーの逆襲

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[1.2 全国高校選手権2回戦 星稜2-0松山工 市原]

“シンデレラボーイ”の一人舞台だった。星稜のツートップは、FW采女優輝(3年)とFW村上駿(3年)という、県大会では「Bチーム=メンバー外」だった2選手が務めた。県大会得点王のFW今井渓太(3年)をベンチに置くという、「奇策」とも捉えられかねない采配だったが、新ツートップは息の合ったコンビを見せ、釆女が見事2得点をあげてチームを勝利に導いた。

 1~2年生まではAチームに所属していた采女だが、3年生になり突然のBチーム行きを言い渡された。河崎護監督は「絶対に戻ってくる」ことを期待しての決断だった。

「県大会で外れても全国(選手権)がある。でも全国が終わったら引退しかない。インターハイで外れても、全国のメンバーにだけは入りたいと思っていました」。今大会に懸ける采女の強い気持ちが感じられた。

 転機となったのは、県大会中に行われた紅白戦。采女、村上、右サイドバックの松岡哲(3年)らBチームが、全国を目指すAチームを4-1で下した。「県大会のレギュラーは3~4人」(河崎監督)。選手権を前に、チームの底上げを計ることができた。「(紅白戦は)アピールというより、(Aチームに)勝ちたいという思いが強かった。自分のことを認めさせたかったし、自分たち(Bチーム)のことも認められたかった」と釆女は当時を振り返る。

 期待に応えてくれたニューヒーローに対して、河崎監督はあえて苦言を呈した。「お調子者なところがあって、精神面での成長を期待したこともAチームを外した理由のひとつ。今日も試合前に注意していたのに警告をもらって……」。1点目を決めた後に星稜応援団が陣取るスタンドに一直線で向かっていくまではよかったが、ユニフォームを脱いで不用意なイエローカードをもらってしまった。

「(スタンドにいるのは)Bチームで一緒にやっていた期間が長い仲間だし、僕が出れているということは、(スタンドにいる)その人たちが出れないということ。点を取った瞬間に、興奮していて(監督に)止められていたことを忘れてしまい、みんなのところへ行ってしまって……」。采女は警告のことに話が及ぶと、点を取ったことを忘れてしまったかのように反省の色を見せていた。

 続く3回戦では、優勝候補の青森山田(青森)と対戦する。日本代表MF本田圭佑(CSKAモスクワ)らが残した「4強」という成績を越えるための最大の試練だ。それでも「苦労をともにした仲間のためにーー」。高校生活最後の晴れ舞台で、星稜の新エースストライカーはがむしゃらに勝利を目指す。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 奥山典幸)

【特設】高校選手権2012
連載:高校マン・オブ・ザ・マッチ

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