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[MOM872]野洲MF村上魁(1年)_“次世代の主役候補”が見せたセンスの片りん

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[10.31 全国高校選手権滋賀予選3回戦 野洲2-1水口 ビッグレイク]

 今年の野洲の鍵となっているのが、3トップの中央に位置するFW中村真輝(3年)を生かした攻撃パターンだ。“偽CF”として、足元の技術を生かし、中盤に落ちながら、周囲を生かしつつ、自らもストライカーとして、プリンスリーグ関西1部でチームトップの10得点を挙げるなど、彼の存在は野洲が勝利を手にするための一つのセオリーとなっている。

 ただ、その存在ゆえ、「中村を起点にして、攻めるというのが一つの攻撃パターンやったけど、バレてきている」(山本佳司監督)のも事実だった。そこで、この日、新たな攻撃のバリエーションを増やすために、スタメン起用されたのが、ルーキーのMF村上魁(1年)だった。

「アイツのドリブルを受けると、相手はどうしても見てしまう」(山本監督)が評し、村上自身も「取られない自信がある」と自信を見せるボールを取られるまで絶対に離さないテクニカルかつ力強いドリブルで、中盤から前線へ何度も飛び出し、狙い通り、中村の負担が大きかった攻撃にアクセントを加え、2人目の“要注意人物”となった。
 
 試合後、本人は「スペースがあったらどんどん仕掛けて行こうと。行ければ最終、シュートまで行こうとしていたので、シュートまで行けなかったのはちょっと悔しい」と口にしつつも、「いつも通り出来たかな」と笑みな表情を浮かべたように、野洲の新たな攻撃手段としての可能性を感じさせた。

 この日は約半年ぶりの試合出場。中学時代から名門街クラブ・セゾンのエースとして知られ、この日、途中出場を果たしたMF林雄飛(1年)とともに、センスを買われて春先から出場機会を掴んでいたが、「途中から出るんが嫌やった。スタメンから外されて、ふてくされたりするのが何度かあって、モチベーションが下がってしまった」と、スタメン争いから徐々にフェードアウトしていた。

 変化が生まれたのはわずか2週間前。サッカーに真剣に打ち込む先輩たちを目にして、「3年生とは最後なんで、ちゃんとしないといけない。もう迷惑はかけられない」と気持ちを新たにした。そして、もう一つ「サッカーに対する意識が変わった。プロになりたいと強く思った。1年からしっかり試合に出て、注目をされたいと思った」という意思が芽生えたという。

 そんな思いは確実に変化を生んでおり、「まだチームとは融合してないけど、表情とか考えが前向きになってきた」と山本監督も評価する。ただ、同時に「もうちょっと早く融合させたかった。なかなか思うように行かない」(山本監督)とまだ目指す理想形とは程遠く、村上自身も「まだ気持ちだけで、行動では示せていない」とこの日のプレーを喜びつつも、現状に満足はしていない。

「全国優勝。まずは滋賀で優勝することで、注目を浴びて、スカウトとかに来て欲しい」と村上の目標は大きい。この日、踏み出した一歩目はまだまだスタートライン。眠っていた次世代の野洲を背負う主役候補は、歩みを止めるつもりはない。

(取材・文 森田将義)
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