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[MOM877]星稜DF森下洋平(3年)_勝敗決めた鋭い判断

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.3 全国高校選手権石川県予選決勝 星稜1-0金沢桜丘 金沢市民]

 真の実力者の証明だった。チームは攻撃のリズムを作れずに苦しんでいたが、後半半ばの19分に生まれた一瞬の好機を逃さなかった。前半は攻撃参加のままならなかった星稜の右DF森下洋平は、ここぞとばかりにオーバーラップ。途中出場のFW仲谷将樹がボールキープをする間にサイドを駆け上がると、右MF阿部雅志とのコンビネーションで一気にエンドライン際まで突破し、滑り込みながら狙ったスペースへセンタリングを送り込んだ。

「スローインから始まった攻撃だったと思うけど、敵陣のセンターにスペースがあるのが見えた。これならクロスを上げれば行けると思った」という森下の狙いは、ズバリと的中した。それまでは高い位置まで上がることのなかった森下が相手を振り切って送ったクロスに対し、中央にはFW森山泰希と途中出場で左MFに入った稲垣拓斗が飛び込んだ。「あの場面は絶対にクロスを上げてくると思った。クロスに2枚入るのは練習通り。泰希がうまくニアでつぶれてくれたので、押し込めた」という稲垣が値千金の先制点を挙げた。

 森下自身は「ワンチャンスを物に出来て良かったけど、全国大会に向けてはこれではダメ。あの場面以外、自分自身も何もしていない」と首を横に振ったが、厳しい展開のときこそ少ないチャンスを物にできるかどうかが勝敗を決める。サイド攻撃を封じた金沢桜丘が健闘していただけに、先制点を奪えずにスコアレスで試合が長引けば、挑戦者としての姿勢を強く打ち出す相手のペースに巻き込まれる可能性もあった。チームに安心感を与える抜群の判断がチームを救ったと言える。苦しいときに力を発揮できるのが真の実力者だ。

 もちろん、課題が残る試合になったことは否めない。森下は「アシストのような場面を一度ではなくて何度も作れるようでなければいけない。前半は相手がラインをコントロールしていて、全然高い位置まで上がれず、自分の持ち味を出させてもらえなかった」と反省点を挙げた。チームの特徴は、堅守とサイド攻撃。両面の要となるキーマンの出来は重要だ。森下自身もチームと個人の結果が同調することは意識している。全国大会に向けては「チームが勝ち上がれば、自分も評価してもらえる場面があると思う。サイド攻撃でのオーバーラップなど持ち味をできるだけ出せるようにしたい。オーバーラップのタイミングは極めたい。そこで勝負をかけたいと思っている」と抱負を語った。主将の寺村介が負傷で離脱中、副主将としてチームをけん引し、県大会ではベスト11のほかにMVPも獲得した。星稜が全国大会で再び上位へ羽ばたくためには、この右翼の活躍が欠かせない。

(取材・文 平野貴也)
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