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[MOM882]富山一MF西村拓真(2年)_「点の取れるサイドハーフ」への変ぼう

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.4 全国高校選手権富山県予選準決勝 富山一3-0水橋 高岡スポーツコア]

 富山一には、現代サッカーが求める「点の取れるMF」がいる。第92回高校サッカー選手権の富山県大会準決勝、水橋との注目カードで先制ゴールを挙げたのは、2年生MF西村拓真だった。キックオフからペースを掌握するのに15分ほどかかる中で「立ち上がりから3年生がみんな慌てていたので、自分が先制点を取って落ち着かせようと思った」という西村は、前半26分に思い切ったランニングを見せた。敵陣中央で混戦模様となった瞬間、その手前にできたスペースを見逃さなかった。右から斜め前方へ走り込むと、こぼれ球をさらってドリブルを開始。左へ流れるかと思いきや、目の前の敵を2人かわしてGKとの1対1を決めて見せた。

「左で野沢(祐弥)君が相手をひきつけてくれていて相手が(パスかドリブルか)惑わされてるなと感じたので、自分で行った」という的確な判断が、チームに勢いを与えるゴールにつながった。後半17分に交代となり「最後まで出してもらえるような運動量やパワーのある選手になりたい」と課題も口にしたが、ピッチの中で最も迫力あるプレーを見せたことに疑いの余地はなかった。

 西村は、愛知県出身。中学時代は名東クラブで技を磨いた。進路を選ぶにあたっては父方の祖母が富山市に住んでいることもあり、「グランパスではさすがに取ってもらえんと思った。同じプレミアリーグでやっているし、良い環境で練習できる。祖母の家から通えるなと思った」と自ら富山一の門をたたいた。

 中学時代はパス主体のプレーが多かったが「高校生になったら変わらなければいけない。パスにばかり逃げていてはダメ。自分で勝負ができるようにならなければいけないと思った」と入学と同時にスタイルチェンジを標ぼう。がっちりとした体格も生かし、突破を図るプレーを増やした。その成長ぶりは、主将の大塚翔(3年)も「ちょっと生意気なところもあるヤツだけど、富山県の人間じゃないのにこっちまで来ていて、やってやるぞという気持ちが感じられるので頼もしい。プレー面でも一人で打開できる力がある」と認めるほどだ。

 今季は良い転機が訪れた。高校入学後もトップ下を務めていたが、サイドハーフで出場機会をつかんでアタッキングの能力を開花。プレミアリーグWESTでは6得点を決めており、「ホームでは1-6で負けたし、気合いが入っていた」という名古屋U18との2戦目ではハットトリックを決めて得点力に自信をつけた。

「ボールを持ってからの1対1では、絶対に相手を抜いてシュートへ持っていける選手でありたい。点を取れる、チームを助けられる、勝たせられる選手になりたい。ワンチャンスでも決められるようにならないとダメだと監督に言われ、シュート練習をしっかりやっている」と話すアタッカーは、まさに成長途上だ。9日の決勝戦で富山東を下せば、全国大会の出場が決まる。「油断をしたら絶対にやられる。気持ちの強い方が勝つと思う。次の試合も自分が決めて勝ちたい」と、さらなるステージへ駆け上がる気持ちに満ち溢れている。

(取材・文 平野貴也)
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