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[MOM925]熊本国府FW大槻健太(3年)_エースが有言実行の2発

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[12.30 高校選手権1回戦 熊本国府2-1國學院久我山 国立]

 チームメイトへの“約束”を果たした。熊本国府(熊本)のFW大槻健太(3年)は前半27分に先制点を決めると、1-1で迎えた後半アディショナルタイムにも劇的な決勝点。「試合前に『1点取られても俺が2点取るから安心してくれ』と話していた。有言実行できてよかった」と白い歯をこぼした。

 立ち上がりから國學院久我山(東京)の攻勢を浴びた。それでもGK小野公治(3年)を中心に粘り強く耐えると、前半27分にワンチャンスを生かした。MF山口慶希(2年)が右サイドから左足でゴール前にクロス。逆サイドのMF川上康平(2年)が左足ダイレクトで折り返し、大槻が右足で合わせた。

「触るだけだった。練習どおりの形。簡単でした」。劣勢の中で奪った先制点。「早く点数を入れてDF陣に余裕を持たせてあげたかった」。先制後もペースは國學院久我山。それでも「ヒヤヒヤもするけど、いつもうちのチームは押されながらも失点しない。安心して見ていた」と、守備陣を信頼していた。

 それは後半30分に追いつかれても変わらなかった。「1点取られたあともDF陣があとは守ってくれると思っていた。笛が鳴るまでワンチャンスを狙っていたし、PK戦のことはまったく考えてなかった」。ゴールへの執念は後半アディショナルタイムに実る。カウンターから右サイドをDF倉原弦岐(2年)が駆け上がり、ゴール前にクロス。「何が何でも決めなきゃ1トップをやっている意味がない」。猛然と飛び込み、豪快なダイビングヘッドでゴールネットを揺らした。

 試合を決める劇的な決勝点。「あれだけ押されていても、DF陣が1点で抑えてくれていた。その前に1本外していた。止められた分は決め返したいと思っていた」。1-0の後半25分、山口の左クロスをゴール前で受け、反転しながらシュートを打ったが、相手GKのセーブに遭っていた。チームのシュート数は國學院久我山の14本に対し、わずか6本。そのうち4本を打った大槻が2得点と決定力の高さを見せつけた。

 熊本県予選から粘り強いディフェンスでリズムをつくり、少ないチャンスを生かしてきた。「FWとしてプレッシャーはあるけど、プレッシャーに負けるタイプじゃない。プレッシャーが逆に背中を押してくれるし、相手の声援も自分の背中を押してくれると思っている」。強心臓のストライカーは「自信を持っていなきゃ点は取れない。シュートに迷いがあったら確率は落ちる。シュートを打つときは入ると思って打つし、試合前も自分が決めると思って試合に入っている」と胸を張る。

 熊本出身の大槻だが、県内の名門には目もくれず、熊本国府への進学を決めた。「普通の人が成し遂げられないことをしたい。大津やルーテルのほうが前評判は高いけど、大津やルーテルを倒して全国に行きたいと思った」。その言葉どおり、県予選準決勝で大津を0-0からPK戦の末に下し、15大会ぶり2回目の全国選手権出場を決めた。

 試合後は、ピッチに崩れ落ちた國學院久我山GK仲間琳星(2年)のもとへ歩み寄り、抱え起こした。他の選手も皆、泣き崩れる相手選手に声をかけ、励ましていた。「僕らにとっては当たり前のこと。敵とかじゃない。相手がいるから試合ができるし、相手のことをリスペクトしている。それが自分たちの考えだし、県大会からそうだった」。自分たちが県予選で倒してきた相手の分まで、そして國學院久我山の分まで選手権で勝ち上がる。あらためて決意を強めた。

 この日、同点ゴールを決めた國學院久我山のエースFW富樫佑太(3年)に対し「本当にうまくて見習いところがいっぱいあった。ビックリしたし、彼の分も点を取りたい」と誓った大槻。開幕戦の勝利に浮かれることなく、「もう次の試合に切り替えてます。笛が鳴った瞬間から次の準備をしないと全国では勝っていけない」と、来年1月2日の2回戦へ視線を向けていた。

(取材・文 西山紘平)

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