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[MOM952]日章学園MF松田岳(3年)_決勝点を予感した2役をこなす万能戦士

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[1.2 全国高校選手権2回戦 日章学園2-1桐生一 駒場]

 一人2役をこなすユーティリーティープレイヤーが試合を決めた。試合開始からボランチでプレーしていた日章学園のMF松田岳(3年)は、残り10分を切った場面で右サイドハーフに持ち場を変える。すると後半38分、左サイドを突破したMF木橋春暁(3年)のグラウンダーのクロスを右足で流し込み、値千金の決勝点を奪った。

「今までお世話になった方、そして応援してくれる方に対し、言葉で感謝をするのではなく、プレーで、結果で示したかった。ゴールという結果で少しは恩返しできたと思います」

 この配置転換が劇的なゴールを生んだのは、この試合が初めてではない。前回大会覇者の鵬翔と対戦した県予選準決勝。1-2と1点のリードを許していた日章学園は、松田をボランチから右サイドハーフに配置した。すると後半アディショナルタイム、指揮官の信頼に応えるように松田が同点ゴールを決めた。PK戦の末に鵬翔を破り、その勢いのまま決勝でも勝利をおさめ、全国への切符を手に入れた。

 2度目の劇弾を生んだ采配の狙いについて早稲田一男監督は「走り切れるし、ドリブルでも運べるので(得点の)かすかな望みを持って」と冗談交じりに笑顔で語ると、松田本人も「監督は得点がほしいときに、自分を右サイドハーフにしているはずです(笑)。鵬翔戦でも決めていたので、自分も右にいけばゴールを奪えるような気がしました」とおどけながら答えた。

 ボランチにコンバートされたのは最上級生となった今年度からだった。1年時には右サイドハーフとして、2年時には右サイドハーフとボランチで併用されていた。2つのポジションを難なくこなせるようになったのも、3年間の積み重ねがあったからこそ。しかし、本人は「ボランチのほうがたぶん合っていると思います。ボールにかかわる回数も多いし、自分のプレーでゲームをつくれるので、やりがいを感じています。ただ、右サイドハーフの方が点が取れますけどね」と笑顔で話す。

 ボランチで起用されている際には、正確なパスでチームメイトを操り、時には自ら前線に走り込んで決定機に絡んだ。一方で守備でも体を張り、桐生一の攻撃を封じ込める。攻守に奮闘していたが、実は前半にスライディングをした際に足を負傷しており、ミックスゾーンには足を引きずりながら姿を現した。負傷しながらも、右サイドハーフに入ると、持ち前の運動量で上下動を繰り返し、最後にはゴール前に入り込んで決勝点を奪った。

 なぜ、そこまで走れたのか――。本人はこう語る。「守備陣がずっと粘ってくれていたので、自分たちに絶対にチャンスが来ると信じていた。信じていたからこそ、最後まで走ることができたんです」。

 宮崎県内のライバルであり、前回大会の覇者である鵬翔を破って全国選手権出場を決めたからこそ、自然と視線は上を向いている。「県予選では鵬翔に絶対に負けたくなかった。絶対に今年は自分たちが選手権に出たかったし、宮崎県と言えば『日章学園』というのを示したかった。鵬翔が日本一になれたので、自分たちにもチャンスはあると思います。だから、全力で最後まで戦い抜くだけです」と力強く語った。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)


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