beacon

[MOM953]市立浦和FW鍛冶光一(3年)_全国仕様に進化したドリブラー

このエントリーをはてなブックマークに追加

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[1.2 全国高校選手権2回戦 初芝橋本2-3市立浦和 埼玉ス]

 十分に対策はしていたはずだった。初芝橋本の阪中義博監督は、市立浦和の右サイドを警戒していたことを明かした。

「キープ力があることは分かっていたのですが、正直、彼が前にあれだけドリブルができて、勝負を仕掛けられるとは思っていませんでしたね。スカウティングで、決勝、準決勝、準々決勝の映像を見たのですが、あの子は確かに前に強く、ボールが収まる印象はありました。とりあえず彼にやらせないために、DF西岡伸(2年)っていうCB、彼はハードマーカーだったので起用したのですが…。それ以上に上回られてしまったなという印象ですね」

 敵将が絶賛したのは、市立浦和の右ウイングを務めるFW鍛冶光一(3年)だ。序盤からFW水上凌(3年)、FW峰田正輝(3年)らと流動的に前線を動き回り、ボールを持てば鋭いドリブルで突破し、チャンスをつくり出した。前半14分にはMF戸嶋祥郎(3年)からのパスを受けると、本職の右サイドでマークを振り切り、ゴール前に速いボールを折り返す。これが相手DFに当たってオウンゴールを誘発した。

「自分の突破からのクロスが、ああいう良い形になってよかったです」。そう顔をほころぼせる鍛冶は、「サイドから仕掛けられることが自分のストロングポイントなので、どんどん仕掛けようと思っていました。自分のスピード、ドリブルを活かそうと思っていました」と、全国の舞台を心待ちにしていた。

 2年時からレギュラーを務めるが、埼玉県予選の前には負傷していた時期もあったという。それでも、県予選の最中に復帰すると、チームを持ち前の突破力で牽引。池田一義監督も、「(県予選)決勝からの彼は、やる気に満ちている。おそらく、目立ちたいんじゃないですかね(笑)。普段は寡黙な男なんですけど、プレーで引っ張ってくれていますね」と、目を細める。

 敵将も予想しなかった推進力を生んだのは、ケガから復帰しただけではない。県予選決勝から本大会まで、彼は自身の武器を磨き上げてきた。

「県の決勝が終わってからは、ファーストタッチでボールを動かすことを意識していました。そうすれば、自分のスピードをもっと生かせるし、もっと簡単に相手をかわせると思ったので。自分の武器を活かすようにして、プレーはすごく変わってきました」

 選手権に向けて、プレーに改良を加えたアタッカーは、「自分の能力が通用する部分が、かなりわかった」と手ごたえを口にし、「初戦を乗り越えたことで、もっともっと伸びのびとプレーできると思う」と、続けた。そして、「明日の3回戦の会場である駒場スタジアムは、自分たちの学校のすぐそば。応援の期待に応えられるように、自分らしさをどんどん出して勝ちたいです」と、3回戦の富山一戦に闘志を燃やした。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 河合拓)
▼関連リンク
【特設】高校選手権2013

TOP