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[MOM956]富山一MF大塚翔(3年)_サッカー部復権を目指す大黒柱

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[1.2 全国高校選手権2回戦 富山一1-0熊本国府 埼玉ス]

 絶対に点を取る。その強い気迫は、両チームを合わせて80分間で最多となる4本のシュートを放ったことにも表れている。2回戦の熊本国府(熊本)戦、前半19分に自身が決めたゴールが決勝点となったMF大塚翔(3年)は「いろんな気持ちで入ったゴールだったと思います。1回戦のときに自分が決められなくて、いろんな人に『翔のゴールが見たい』と言われていたんで、どうしても決めたいという気持ちが、ああいう形のゴールに繋がって良かったです」と、今大会初ゴールに安堵の表情を見せた。

 非常に難しいゴールだった。右サイドでFKを得ると、DF竹澤昴樹(3年)がゴール前にクロスを入れる。これを熊本国府DFがヘッドでクリアー。ゴール前から流れてきたボールを、ほとんど角度のない位置から、ゴールに背を向けた状態でオーバーヘッド気味に決めた。「折り返しではなく、狙っていたつもりです」というシュートは、GKの脇の下を抜けてゴールに決まった。

 得点直後、喜びよりも警戒心が強かったという。「昨年の1回戦で、作陽学園にアディショナルタイムのゴールで追いつかれて、PK戦で敗れていたので。それを常にみんなで意識していたし、点を決めた後にどうするか。もう一度自分たちでゲームをつくっていくことを意識していました」と、昨年の悔しさが生きた1-0の勝利だったと明かした。

 自身の得点で、熊本の高校に勝てたことには、特別な意味があると大塚は言う。富山一の指揮を執っている大塚一朗監督が、実父であることは広く知られているが、富山一に入学する最大のきっかけになったのは、現在慶応大でプレーする兄・俊氏の存在だったという。

「兄が富山第一高校のOBで、選手権でプレーしている姿を見て、僕もやりたいと強く思ったんです。兄の代(4大会前)は2回戦で熊本のルーテル学院に0-2で負けていたので、同じような状況だなと思っていました。今日の試合も見に来てくれて『絶対に勝てよ』と言われていましたし、本当にいろんな気持ちがあのゴールを後押ししてくれたと思います」

 キャプテンとして臨んでいる最後の選手権で、目指すは国立、そして日本一だ。これまで富山一と言えば『サッカー』の印象が地元でも強かったが、今年夏の甲子園で野球部が8強に進出してからは、状況が一変したという。

「県内で『富山第一高の生徒です』と言うと、『野球部すごかったね』と言われるんです。本当に嬉しいことなのですが…。今までサッカー部には積み上げてきた歴史がありますからね。それを一気に野球が上回った気がして、どこかに悔しさはあります。野球部以上の結果を出さないといけない、日本一になりたいっていう気持ちは強くなりました。良い刺激になっています」

 13年ぶりの3回戦進出も、まだまだ通過点。「日ごろからイメージをしていると、現実になると何かで聞いたので。監督を胴上げする姿は、イメージしています」。誰かのために戦う人間は、強い。そのことを証明していく。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)
(取材・文 河合拓)

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