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[選手権]交代後に悪夢の逆転負け…星稜MF寺村「受け入れるしかない」

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[1.13 全国高校選手権決勝 富山一3-2(延長)星稜 国立]

 一つの交代が流れを変え、明暗を分けた。終盤まで2-0とリードし、初優勝が手の届くところにあった星稜(石川)は後半41分、MF寺村介主将(3年)をベンチに下げ、MF稲垣拓斗(3年)を投入した。

 キャプテンとして、精神的支柱としてチームを引っ張ってきた寺村の交代。その直後の後半42分に1点を返されると、試合の流れは完全に富山一(富山)に移った。後半アディショナルタイムにPKで2-2の同点に追いつかれると、延長後半9分に逆転ゴールを献上。2点リードをひっくり返され、まさかの準優勝に終わった。

 河崎護監督は寺村の交代について「選手の疲労度があって、2人を代えたが、そのタイミングで流れが変わったのかなと、ちょっと反省している」と、“采配ミス”を暗に認めた。「結果的にあの交代には疑問が出るかもしれないが、疲労度を見ても、いつもの頑張りがあの時間帯はなかった。それでも結構引っ張った」。決断に至るまで悩んだ心境を語り、「彼の場合、体力がなくても、気持ちはずっとあるし、声をかけられる。ただ、交代で出る選手には、ラスト5分で試合を終わらせるプランをすべて持たせて入れた」と説明。あの時点では最善の策だったと強調した。

 サッカーに“たられば”は禁物とはいえ、もしも寺村がピッチに残っていれば、たとえ1失点してもチームメイトにゲキを飛ばし、踏みとどまれたかもしれない。河崎監督が「このチームがここまで来れたのは彼のおかげだと本当に思っている」と感謝した10番は、試合終了のホイッスルが鳴ると、ベンチ前で呆然と立ち尽くしていた。

 寺村自身は交代について「それが監督の判断だし、チームが勝てば問題なかった。『勝ってくれ』としか思わなかった。嫌な気持ちとかはなかったし、チームが勝ってほしいという気持ちだった。負けてしまったので、それは受け入れるしかない」と気丈に言った。

「悔しい結果だけど、監督は『誇りに思え』と言っていた。悔しい気持ちはあるけど、誇りを持ちたい」。星稜として、石川県勢として初の国立1勝、初の決勝進出、そして初の準優勝。「星稜に入ってからずっと日本一と言ってきた」という目標は果たせなかったが、新たな歴史をつくったことは間違いない。

「後輩には『自分たちの力で日本一を取ってくれ』と話しました」と、悲願の日本一は後輩たちに託した寺村。自分自身の今後については「引退という形だけど、ここからがもう一度スタート。もっと上のレベルに行きたいと思ったし、映像を見直して悪いところは改善して、もっと努力していきたい」と前を向く。「本田選手を超えられるような選手になりたい」。MF本田圭佑(ミラン)を擁した04年度大会のベスト4を上回る準V。チームとして“本田超え”を果たした寺村は次の大きな夢を持って前に進み続ける。

(取材・文 西山紘平)

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